義務
「そうですね、サイズとしては通常の桃と同じサイズですのでそこから値段を決めさせて頂きました。 高級と言われる桃が、一玉当たりの価格は五百から五百五十円程度でしょうか。 しかし、ダンジョン産という価値があるだけで価値が跳ね上がります。 それを考慮して、一玉五千円で買い取っています」
思っていたよりも高かった。
「ありがとうございます! 一応のけじめとして損害分は支払ってもらうことにしたので助かりました」
「いえいえ、こちらこそ助かっています。 今後とも何かありましたらお気軽に相談してください」
はい、と返事をして
ウォフラ草の事を伝えてから、また近いうちに持ってきますと言い
一度家に戻った。
「さて、君たちの学校は波瀬川高校だったっけ? ちょっとまっててくれ」
パソコンを起動し、波瀬川高校を地図検索すると結構大きな学校だった。
グラウンドに障害物がないことを確認し、パソコンの電源を落とした。
「よし、いくか!」
移動先はグラウンドの中心から少し外れた所だ。
しかし、移動と同時に多くの視線を感じた。
普段なら勉学に励んでいるはずの学生たちがグラウンドに集まっていたのだ。
グラウンドの端だと、いつ障害物が建てられても不思議ではないため
それを危惧して中央付近へ移動したのだが、これはまずい
今更ダンジョンやそれに関することを秘匿するつもりはないが、それでもこの状況はまずい。
事実、座り込んでいた学生の一部が既にこちらへと駆けてきている。
三人のご両親は理事長室で待機しているので、とりあえずそこまでは逃げ切る必要がありそうだ。
とりあえず
「一年生の下駄箱はどの辺り?」
と聞くと、原田さんが指をさしたのでそこまで移動した。
「急いで靴を履き替えてくれ」
状況を理解しているので、三人の動きも早かった。
俺も靴を脱ぎポーチへと放り込んで、三人が集まるとすぐに走り出す。
「すまん、場所がわからないのだが・・・。 道案内を頼む」
理事長室は一階の真ん中付近にあると言うので、全力で走ったのだが
三人が走る速度と、レベルが上がっている俺の速度ではかなりの差がある。
といっても、距離自体はそこまで長くはないので
ノックして扉を開ける頃には随分と近付いてきていた。
「初めまして、電話させて頂いた井出です。」
俺を視認し、名乗りを聞くと
理事長室にいた八人の人が立ち上がり謝りだした。
「落ち着いてください、特に怒っている訳ではありませんから」
両手で待ったをかけたのだが、一人が理由を話し始めた。
「それでも、です。 私たちの子供が迷惑をかけたこともそうですが、無事に連れ帰ってきてくれたことにもお礼を言いたいのです」
そういうことだったのか。
「押しかけてきたのは確かに迷惑でしたが、ダンジョンの見学を誘ったのは俺ですから。 無事に送り届ける義務がありますからね」