去り際
「採取しただけよ!」
「俺も採取しただけだな」
「僕は気に葉っぱを投げただけです」
「わ、私は勝手に果物を食べてしまいました。 ごめんなさい!」
ん? 最後の子は気付いているみたいだな。
「他人の敷地のものを勝手に採取することが犯罪だと知らないのか?」
俺が高校生たちに言葉を叩きつけたのだが
「いいじゃない! 美味しそうなものを独り占めだなんてずるいわよ! 女の子に果物の一つもプレゼントできないだなんて、余程の甲斐性無しなのでしょうね! あはははは!」
笑われた・・・。
「と、まあずっとこんな感じです。 こちらとしては二種類の植物を再起不能にまで追い詰められているので、武力の行使もやむなしと考えているのですが」
当然そんなつもりはないのだが、それを聞いた高校生たちは震えあがっていた。
「二種類も・・・。 それに、あの女の子が抱えているのは確か・・・井出さんが大切にしていたダンジョン産のメロンでしたよね」
公には公開していないが、俺の家にダンジョンが出来ていることを政府は知っている。
テーマパークのダンジョンが決壊する前に、土地所有者が起こした訴えにより
土地を召し上げられたり封鎖されることが無いと分かってすぐのことだった。
何かあってからでは遅いので、ダンジョンが発生していることを交番に伝え
巡回をしてもらうことを約束してもらったのだ。
その際に手土産として持って行ったのがミュータントメロンだった。
それ以来、何度か家に状況を確認しに来たりと色々面倒をかけているの。
あおい達も可愛がってくれる本当にいい人なのだ。
「出る前に呼んでおいたので、そろそろパトカーが到着します。 現場を見れば一目瞭然ですからね」
プラムとレイズとお巡りさんが三方向を抑え、残りの場所には俺がいる。
逃げ場はなく、力でも勝てないとわかったのか
抵抗することはなかった。
「あ、お巡りさん。 そこの女の子ですが、その子はこちらに残していってもらえませんか?」
俺が掌を向けたのは、ヒラトリの実を食べて先ほど謝罪していた子だ。
お巡りさんに
「いいんですか?」
と聞かれたので
「先ほど状況を理解して謝罪を貰いましたので。 それに、その子がこちらに与えた被害はあまり大きくありませんからね」
「だ、だったら私も謝るわよ!! そうしたら許してくれるんでしょう?」
なんだこいつ、頭が沸いてるんじゃないのか?
「なぜお前を許さないといけない。 謝罪どころか悪態をつき、めちゃくちゃ暴言を放ってきたクズに許しを請われたところで怒りしか湧いてこないぞ」
まだミュータントメロンを手放していないしね。
このやり取りから間もなく、パトカーが到着し
なんやかんやと二時間ほど忙しなく動き回っていた。
去り際にありがとうございます、と伝えると
仕事ですから、と笑顔で返されてしまった。