地震
「よし、今日はこんなもんでいいか。」
持っていたツルハシを肩に持ち、俺は呟いた。
農具を片付け、縁側で少しだけ広くなった畑を見つめる。
「うん、まだ石が出てくるが悪くはないな。」
麦茶の注がれた氷入りのグラスをカランと鳴らし呟いた。
そして、その夜・・・・
ゴゴゴゴゴ・・・
突き上げるような揺れの後、畳の下から大岩の動くような音が聞こえた。
恐る恐る畳を剥がし、床板を剥がす。
そこにあったのは闇へと続く階段だった・・・
「おいおいおい・・・どうなってんだ・・・」
明かりをつけ、懐中電灯で照らしても底が見えなかった。
何故こんな物が我が家の下に現れたのか。
日が昇るまで怯えながらも警戒しつつ過ごしたが、特に何も起こらなかった。
この家には俺しか住んでいない。
親族とも仲が悪く、偶然知り合ったお婆さんから遺産として引き継いだばかりの土地だけど
お婆さんの遺産相続者として、この土地を大切に思っている。
何かあったら顔向けできないじゃないか・・・
32歳で会社も辞め、農地を開拓する毎日だが、とても充実していた。
それがどうして・・・
「どうして・・・くそっ!」
大切な土地に訳の分からない大穴を空けられてしまったのだ。
俺の怒りが限界まで来ていた。
納屋からツルハシを持ち出し、釣用具品のBOXの中からヘッドライトを持ち出した。
そう、俺はこれからこの大穴を調べに行くつもりだ。
「婆さん、これで死んだらまた遊ぼうな・・・」
そう呟いて階段を一歩一歩下っていく。
当然死んでやる気なんて全くないのだ・・・
十数分歩いただろうか、ついに最後の階段が照らされた。
そして、下を向いていた顔を上げると
地面で蠢く何かが居た。
「誰だ!!俺の家の床に変な穴あけやがって!!ぶっ殺してやる!!」
犯人だと思った俺は、大声で叫んだ。
近づいてくる気配はなく、こちらから寄って行く。
そして気づく、これは人じゃない・・・・と
巨大な芋虫だった。
それを俺は近くで見上げた、見上げてしまった。
それが失敗だった
見上げた俺のヘッドライトが天井を照らしていたのだが
その明かりを襲うかのように
これまた巨大なコウモリが襲ってきたのだ。
「うわああああああ!!!!!」
情けない声をあげてしまったが、急いで逃げてきてよかった。
階段も急いで上がってきたが、恐らく半分も上っていないだろう。
「もう・・・なんなんだよ・・・」
一度家に戻り、少しの間考えた。
どうしよう、どうしよう
どこに通報するべきだ?
警察?自衛隊?消防?
番号なんだっけ!!10?ちがう!えっと!!
普段から目にしていても使わない番号はいざと言うとき出てこないもので
結局、電話を片手に30分程立ち尽くしていた。
段々と落ち着いてくると頭が冷えて考える余裕が出てきた。
そして気づく、どこにも連絡できないことに。
何故ならここは俺の土地、大事な土地。
何処かに通報しようものなら封鎖される可能性があるからだ。