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逆転  作者: Nonameの名前
逆転
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−05

 文化祭二日目も文化祭片付け日も俺はばっくれたので、


 文化祭休みも含めて、八連休だ。


 特にやることがないからどうしようかと悩んでいたんだが、


 妹の架那が七泊八日の旅行に行きたい、と言って親に交渉した。


 交渉というよりは報告だ。


 母親も父親も、俺が一緒に行くならいいと言う。学校さぼっていいのか。緩い家庭だな。


 まぁそんなこんなで、京都に来ている。


「結鷹こっちきてー!」


 架那が俺を呼ぶ。


 今は清水寺に来ている。大通りを外れた階段を架那が進む。


 だいぶはしゃいでるご様子で。


 俺も階段をのぼった。


「見てみて!ここを目をつむってこっちからあっちまで歩いたら、恋愛成就だって!」


 太い紐の巻かれた石が二つある。大きさ的には岩といったほうがいいか。


 くだらないなぁ、と思ってしまうが男子なら大体思うだろう。


「あの人たち可愛いね!」


 豚が3匹、目をつむって前に手を伸ばしながらブーブー鳴いている。


 失敬。


「そうだな」


 出家したい、って思うひとの気持ちってこんな感じだと思う。


 それか、話を合わせなきゃいけない女子の集団の一人の気持ちだろうか。


「やってみてもいいかな?」


 石の手前にひとが並んでるみたいだ。


「いいんじゃないか?俺はゴールのほうで待ってるな」


「うんうん」


 俺は奥の岩のとこへいく。人が多くて辛いな。


 女の人とすれ違うと、必ずチラチラと見てくる。

 これがイケメンを見る目だと知ったが、やっぱりなんとも言えない気持ちだ。

 俺の中ではまだ俺はブサイクなんだ。


 架那の番みたいだ。


 ぎゃーぎゃー言いながらこっちに来る。このまま行くと、どっかに突っ込んじゃうな。


 ちょっと声かけてやるか、と思ったら、


「もうちょっと右やよ!」


 と隣の女の子が言う。


 びっくりしたんでそっちを見ると、俺の視線に気づいたのか、


「もしかして彼氏さんですか?」


 と声をかけてきた。


 目がクリッとしていておっとりとした顔の女の子だ。


 俺と同い年くらいだな。


「兄ですよ、さっきはどうも」


「そうでしたか。いえいえ、私もさっき誰かに声を掛けてもらって辿り着けたんです」


「そうなんですか。ってことは一人で来てるんですか?」


「一人で埼玉から来たんです。生まれはこっちで、久々に京都に来たんです」


「俺たちも埼玉から来たんですよ。生まれも埼玉ですけど」


「やったー!」


 架那が無事岩に着いたみたいだ。


「これで彼氏ができるな」


 こんなんで恋愛が成就するなら、


 誰もリア充を恨んで爆発しろなんて言うことないだろうね。


「よかったよー。意外と難しいんだね」


「途中危なかったからな。その時、この人が声かけてくれたんだぞ」


 俺はおっとりちゃんに礼を言うようにうながす。


「あ、あの時のですね!ありがとうございます!」


 架那は礼を言う。うんうん、いい子だ。


「いえいえ、いいんですよー」


 架那が俺をちょんちょんとつついて、耳打ちしてくる。


「タイプ?」


「な、何言ってんだ、まったく」


 三文字がグサリと突き刺さる。なんて妹なんだ。


「お姉さん、ひとりなら私たちと一緒に観光しない?」


「ちょっ」


 何言い出してるんだこいつ。


「いいじゃんいいじゃん」


「迷惑だからやめんか」


「私でよければ一緒に行きたいです。京都のことなら詳しいですよ」


 おっとりちゃんはおっとりと微笑む。柔らかい雰囲気だ。


 いいんだな。こんな騒がしい妹と俺と京都なんて、ロクなことないぞきっと。


「そうなんですか〜!よかったです、私も兄も全然詳しくなかったんですよ」


「俺もおっとりちゃんがいてくれたらありがたいな」


「おっとりちゃん?そういえば名前言ってなかったですね、私、深瀬(ふかせ)(みどり)っていいます。さっきお兄さんの方には言いましたが、埼玉に住んでるのでまたあっちで会えるかもしれないですね」


「おお!埼玉フレンドですね!私は月村架那、兄は結鷹です。今は七泊八日ののんびり京都旅行なんですー」


「七泊八日も?私は三泊四日で祖母の家にきたんですよ」


「今は三日目で、もうやることもなくなってきましたねー」


 そう、もう三日も京都を満喫したんだ。俺と架那の知識じゃやることないわ。


「それなら私が案内しますね」


「わーい!」


 俺らはおっとりちゃん改め、碧と一緒に京都観光をすることになった。

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