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「いじめの被害が奈々にいったら困るからだ」
俺は奈々とゴリ先生から聞いた事から結論を出していた。
「違うよ。結鷹は逃げたのさ」
「逃げた?」
「そう。結鷹は弱い人間だ。賢い故に逃げるという選択肢を選んでしまう」
何を言ってるんだ?
俺はずっといじめられても、奈々と付き合い続けてた。
それでこっ酷く振る理由なんて、
奈々に被害が及ぶ事になるから、
としか考えられない。
「どういう事だよ」
「結鷹は結鷹自身が思ってるほどいい人間じゃないんだよ。まずは小学校の時に転校してきた結鷹が奈々と一緒にいてあげた、って所からだね。なんで一緒にいたんだと思う?」
「いじめられてる奈々を助けたかったからだろ」
「違う。結鷹は、孤立してる奈々を道具に使ったんだ」
「道具?」
「いじめられてる子を助ける良い人間になれるし、他の人から話しかけられなくなる。この二つを得るために結鷹は奈々と一緒にいたんだ」
「嘘だ。俺が奈々を道具だなんて」
「まだあるよ。中学に入って奈々が結鷹に告白して来た時に結鷹はなんで断ったんだと思う?」
「それは……分からない」
「めんどくさかったからだよ。人から本気で想われるのが。恋人に縛り付けられるのが」
俺は何も言い返せず沈黙する。
「その後、結鷹は奈々を避け続けて中学を卒業した」
「俺はその後また仲良くなって奈々に告白したんだ」
「分からないのかな?それは高校でまた人付き合いを避ける為だよ。都合よく同じ高校に奈々が入学する事を知って、結鷹は奈々にすり寄ったんだ」
「そんな馬鹿な。でも俺はその後、いじめられていても奈々と一緒に居たんだぞ」
「そこが結鷹のミスだね。奈々は結鷹に振られたあと食欲を失って、中学では太っていたのに痩せたんだ。だから中学の時には目立たなかった奈々が、高校ではモテるようになったんだよ。それで結鷹は奈々との関係を妬む人間からいじめられるようになった。そこで結鷹はどうしたと思う?」
「奈々には秘密にしていじめに耐えたんだろ」
「それは事実だね。けど全てじゃない。いじめと恋人という束縛から解放されたかった結鷹は、そのいじめを逆手にとって、良い人間と思われるように、奈々を振ったんだよ」
「逆手にとる?」
「そうだよ。いじめは公表できるものじゃない。それを上手く使って、結鷹はいじめを受けた日から夏休み最終日までずっと演技をしてた。まずはいじめを受けていても、奈々にはバレないようにする演技。奈々といる時はつらそうにしたし、それを証明する為に保健室へ行った」
「保健の先生とも昨日話したよ」
「あの人と話したんだね。あれも逆転の結果さ。結鷹のとは別物だけどね。それで結鷹は夏休み前日、つまり終業式の日に怪我だらけで保健室へ行った。意味深な言葉を残すためにね」
「奈々をたくさん笑わせるんだ、ってやつか」
「そう。そして夏休みはそのとおり奈々とたくさん遊んだ。そして夏休み最終日に振ったんだよ」
「ああ」
「客観的に聞いて、僕ならきっとこう考える。結鷹は終業式の日に脅されて、次学校に来る時、つまり夏休み明けまでに別れないと奈々にまで被害が及ぶ事になる。だから最終日に心苦しくも振った、と」
「俺はそう考えてさっきそう言った」
「少し考えればその結論に至るだろうね。結鷹はそう思われるために行動したんだから」
「つまり、いじめを公表できない事を逆手に、さも脅されたかのように自分を傷つけて保健室に行って、さも奈々のためのようにこっ酷く奈々を振ったということか」
「分かったんだね。そうだよ、だから結鷹は弱い人間だ。賢い人間だ。それが逆転の神が逆転を使った理由だよ」
「俺は本当にそんな人間なのか……」
「結鷹の良くない感情は僕の力で封印したんだよ。僕には僕を選んだ神のする事に関する事なら、神の力を使う権限が与えられてるんだ。記憶を改変したり、人の頭を覗き込んだり、僕の分身を作ったりね」
「神は逆転してなにがしたいんだ?」
「真実は分からないけど、神はきっと結鷹に変わってほしいんだね。そのための最善の選択が、美的感覚を逆転させる事だったんだよ」
「変わる?俺はもう仁に感情を封印されて変わったじゃないか。逆転する意味はないんじゃないのか?」
「違うよ。結鷹はまだ変わってない。今僕が封印を解いたら、また結鷹は以前の結鷹に戻るだけだよ」
「そんな……じゃあどうしたらいいんだ」
「ある意味で言えばここからが本題だね」
「本題?」
「今まで話した事は結鷹の過去だからね。大事なのは今と未来だよ」
「だから俺はなにをしたらいいんだ?」
「結鷹は強くなればいい。結鷹の心がもっと強く、あたたかいものになれば逆転は解ける」
「どうしたら強くなれる?」
「結鷹は質問してばかりだね。僕の中での最善の選択で言うなら、オタク心理研究部、あそこにいる人たちと心の強さ、幸せ、を一緒に考えて心を強く、そして幸せになればいい。僕から言えるのはそれだけだよ」
「オタ研のみんなと?」
「結鷹は弱い人間だけど、賢い人間だ。だから強くなれる。僕は結鷹に期待してるよ」
「まだよくわからない。けどやるべき事はなんとなく分かった。ありがとう、仁」
「礼を言われると恥ずかしいね。それじゃあもう話は終わり。妹さんとあの子のところに案内するよ」
俺たちは部屋を出て架那と碧の元へと向かった。




