はじまり。
夢の中、目の前であの子が僕に囁いた。
----何かを得たんじゃなくて、何かを犠牲にして人から奪うだけでしょ------
ガバッ!!!
時計は午前2時を指していた。
----まただ。またあの夢を見た-----
もう随分前に忘れたことを思い出させるように。
頭のノートから消した言葉を再び上書きされるような。
シャツは汗でびしょ濡れだった。
ここのところ毎日だ。夜中にシャワーと着替えが習慣になってきている。
着替えてるとき、スマホがピコピコ光っているのに気づいた。
講義の時に音が出ることがないように常日頃から音が出ないようにしている。
イライラして僕はスマホを無視して寝た。
つぎの日、朝飯を食べながらスマホに手を取る。
メールは叔母からだった。
「至急連絡して!」
叔母がこんなメールを寄越すのはよっぽどの時だ。前はおじさんが事故にあった時。
すぐに電話した。
「もしもし?」
意外と元気そうな声だ。
「連絡って何?誰か病気系?事故?」
「違うわよ。こうでもしないとあんた連絡しないだろうから。」
イラッ
「はぁ.....んで要件は?」
「あんた家庭教師とかやってるよね。今より時給が1.5倍くらいにはなると思うけど、仕事やってみない?」
「.............................」
「.............................」
「いや、ごめ「ダメよ」」
「え?いや最近いそが「ダメっていってるでしょ?」」
「ごめんけど、もう勝手に決めちゃった。いいじゃない。あなた最近原付やらパソコンやら買ったんでしょ?」
----このババァ無茶苦茶なことをいう-----
「拒否権は?」
そう、誰しも拒否権がある
「あると思ってる?」
はずがなかった.....
「あたしのいとこが社会福祉協議会で働いてて、その知り合いが施設を作ったみたいなのよね。んで、急募なの。教えたりする人。」
おばのいとこの知り合いってただの他人じゃないか.....
理不尽だ。こんなに傍若無人な奴が身内にいるなんて、何て恵まれてないのだ。
しかし、僕は弱い。というより、我が家系の男が女より強いなんてことがないのだ。
セミがうるさいなか、僕は電話を握りしめ、ボーゼンとしていた。
---始まりはあまりにも突然だ。