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序の章 其ノ二 ある朝の風景

「起きろ!、おら~。おら~、起きんかいわ~れ~。ぼて繰り回すぞ!!」

「起きろ!、おら~。おら~、起きんかいわ~れ~。ぼて」

ガキン、思っきり声のする方を叩く。

声の主を鷲掴みにして、グッと顔に近づけ確認する。

猪をディフォルメした擬人化マフィア、ダリル・猪之吉いのきち・フレイグランド5世がそこに見える。手にウージーを構え何故かフライパンを掲げて。フライパンの中に時計がある、覗き込むと4時30分。起床だ。

俺は真神志龍、独身の35歳。冴えないサラリーマンだ。取り分けイケメンとかではない、頭も働きも人並みだし、至って普通の日本人男性だ。薄暗い部屋にしばし思考停止。寝たのが午前12時頃今4時30分、寝たりねー。全然寝たりねー。ぼやけた頭でそんな事を考えつつも、日頃の日課?習慣?の賜物か身体が勝手に起動する始末。未だ頭は覚醒していないのに。

洗面所で顔を洗い歯を磨く、その際年齢のせいか嗚咽が出る。うぼぇ。戸棚から食パンを1枚取り軽くかじり食べる。2ドア冷蔵庫から牛乳を取り出し直接喉を潤し、使い古したジャージに着替えて、軽く身支度を整える。

玄関に移動その際にリストウエイト・・・1つ5キロを2つ、アンクルウエイト・・・1つ5キロを2つ、腰にウエイト・・・1つ20キロを巻きつける。総重量40キロになる重りだ。

「うふあぁぁ、眠。むぅ重い。歳だなぁ。年々辛くなるな、これ。寝不足だし」

欠伸をしつつぼそりと独り言をつぶやく。ちらりと、目線をフライパンに向ける。時計が嵌っているシュールだ。無論、ダリル・猪之吉・フレイグランド5世が手に掲げるフライパンだ。いつも思うがなんでフライパン掲げてるかこの猪は?

気を取り直して、ランニングシューズを履き、まだ暗い市道に出る。軽くストレッチを終え、ランニングを開始。

タッタッタッタッタッ。リズム良く走り出す。

今は12月。寒い、むちゃくちゃ寒い。吐く息は白い、しかし清んだ空気は肺に心地よい。

肌を刺す冷気は次第に、火照った身体に丁度良くなる。

毎朝恒例の10キロランニング。+ウエイト付きを終え、軽くクールダウン。

時間にして20分程のランニングの後も、習慣の型稽古。一度部屋の玄関まで戻り、靴箱脇の些細なスペースから、立てかけてあった木刀を2本手に取る。何時もの手に馴染んだ重さだ。

一見木刀に見えない。例えるなら、船のオールにも見える。だが、れっきとした木刀だ。ただし、真神志龍専用のと付くが。

全長190cm、幅15cmのそれは、やっぱりオールである。鉛の鉄心入りで重量およそ、

30キロはあるそいつを、真神は

「っこらせ」と

掛け声1つで両手に一本ずつ握ると、黒い布で二刀を包みこむと、玄関をタタタッと駆けていく。ちなみにドアの鍵は毎回出かけるごとにちゃんとかけます。ガチャリ。

アパートには庭がないので、近くを流れる川辺まで移動する。

少し汗ばんだ、Tシャツが冷えてぶるっと体が震えた。

川辺は相変わらずこの時間には誰もいない。ここで、布をとり二刀を持つ、

「ふっ」

軽く息を吐き両手に先ほどの木刀を構える。目を瞑りゆっくり深呼吸を行う。

「っ」、木刀の重さを感じさせない鋭い一閃が放たれる。

木刀の重さを利用したテコの原理で剣を振る。

「っ、ふっ、はっ」連続して2本の木刀が鋭い一閃を放つ。

縦横無尽に斬線が放たれる。ヒュン、ピュン、シュッ

二刀の木剣による剣舞。だがしかし、真神の動きに変化が生じる。

二刀を振るいながら、蹴りを放ち、肘を放つ。円運動を加え、動きは更に激しさを増す。

ヒュン、ボッ、ザンッ、ボシュッ、ザッ、ピュン、・・・・

斬撃と蹴擊、肘打ちが乱舞する。壱から十ある型を終え、真神の型稽古が終了した。

軽く息を整え、持参しておいた水筒から水分を補給する。

「んぐ、んぐ、ふぅ~。お疲れさん俺。」

毎朝の日課終了である。


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