表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

Epilogue of Prologue

この章は非常に短いです。が、ようやく役者がそろいます。

思わせぶりな展開ですが、こういうのってあんまり長く続くとだんだんイラつくタチなのでそんなに続きませんからご安心を。

††


「……ふう」


木漏れ日が落ち、光指す場所が点在する並木道。

ボクは一歩一歩を踏みしめながらも、道の途中で小さな一息をついた。



風がボクの横をすり抜けていくともう最盛期は過ぎた青葉が(しな)びた様子で揺れている。



『ボクみたいだ』、と思った。

萎びて、そして風に遊ばれてついには枯れて枝から落ちる。




随分体力は落ちていた。歩く(たび)にそれを思う。日光に対する耐性も弱りつつあった。


それが“代償”であることは分かっていたけど。

いざそうなってくると、身体的というより心情的に辛い。


“心”が折れたら終わりだ。

何もかも、ボクの手に入れていたもの、欲しいもの、大切なもの、守りたいもの、その全てが(こぼ)れてしまう。


それは嫌だ。

……だからまだ枝から落ちる訳には行かなかった。


もう一度息を吐いて歩き始める。


運命を変えるために足りない要素(ファクター)を探して。

運命を変えることを阻害する原因(ファクター)を壊しに。

そして――――








チリン!


自転車の音でハッと我に帰った。


すぐ後ろに人が近づいてくる感覚がする。ほんの少しだけ顔を上げ、車道側を見た。



その時、ボクの目に飛び込んでくる視覚情報。

スローモーションのように風景(かのじょ)は流れていく。


なびく髪。そして顔が視界に入った。


その瞬間に息が詰まる。


一瞬の逢瀬。

視線も合わない刹那。


それは“戻ってきた”ということを、より鮮烈にボクに思い出させる。



彼女は――振り返らず進んでいった。




その後ろ姿を見送って。


“カチリ”


ボクが気づかないうちに揺らいだ気持ちが一つに固まったのを感じた。



そうだ。守るんだ。

その為にボクは馬鹿高い代償(たいか)を払って戻ってきたのだから。




ニヒルに笑おう。無理にでも。


そしてこう言うんだ。


“ボクを誰だと思ってる?”





**


暗幕には限りがある。


学園全体で申請を募って、平等に分配される暗幕だけでは教室全体は到底囲えない。

そこで必要なのが段ボール。


どういう風に壁をたてて仕切るのか検討をつけて、段ボールがどれだけ必要になるか考えたのが先週。


必要だと見積もっただけの段ボールが集まったのがつい先日。


切る作業が始まったのが一昨日。


さらに、黒く塗ったり、細かい仕掛けを作る作業が残っている。


あと1ヶ月。


完成させられるかは五分五分くらいな気がする。



――それに転校生、か。

また溜め息が出そうになって堪えた。


まさかいきなり今日来るとは。

出来ることなら文化祭の後に来てくれると少しは頭が回るんだけど…。


……いや、これも私の勝手な論理か。


思い直す。


もしかしたら文化祭があったほうが皆と早く打ち解けられるかも。

その彼の性格(キャラクター)にもよるだろうけれど。


一度形成されたにコミュニティに新しい人間が入り込むということは非常に困難を伴う。

そしてそれは必ず『ストレス』というものを産み出す。


『文化祭』っていうきっかけで少しでもそれが軽くなるなら――



「吉とでるのか、凶とでるのか」


それは判らないけど。


取り敢えずその“彼”がどんな人なのか、勝手な想像を膨らませ始めた私だった。






――今の彼女はまだ知らない。

彼女の(ほころ)びと、その出逢いによって変わるミライを。


何度でも繰り返す彼の執念(おもい)と苦しみと、その愛を。


今はまだ、知らない――




Epilogue of Prologue...

ようやく次回は転校生登場です。名前は……考えてありますよ。たぶん。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ