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私のプロローグがこんなに○○なわけがない

 

がさ、がさ。


だっ、だっ、だっ。



――誰か、助けて――



がさ、がさ、がさ、がさ。


だっ、だっ、だっ、だっ、だっ。



――追いつかれたら、殺される――



がさ、がさ、がさ、がさ、がさ、がさ。


だっ、だっ、だっ、だっ、だっ、だっ、だっ。



――あの黒い影に!!――



がさ、がさ、がさ、がさ、がさ、がさ、がさ、がさ。


だっ、だっ、だっ、だっ、だっ、だっ、だっ、だっ、だっ…………ダダダ!!!



――そして手はついに私を捕えてっ!!――


「い、いやああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」



**


ガッターン!

ゴン!!

カーン!!!

ゴロゴロ!!!!

パリーン!!!!!




「…………………………………………うぁ?」


頭に響く鈍痛と、コントみたいな音で目が開く。



状況。

真っ逆さま。

重力を頭に感じる。

髪の毛がわさわさと床に広がって。

一体、いつの間に地球はひっくりかえったのか。

ワタシが眠る前はちゃんと上を……、上ってどっちだ?

うーーーーん……。いや、アレだ。ちゃんとしてたよね地球?


なんて。

寝ぼけ(まなこ)にアホなことを考えながら、ひっくりかえってるのはもちろん私だった。



「…………冷たい」


首から頭にかけてがひんやり冷たい。

九月とはいえ朝もまだ暑いからこれいいかも、なんて思ったけど昨日掃除した(フローリング)はすぐ私の体温でぬるまってしまった。


ベッドから重力でアタシの上に落ちてくる布団を蹴り飛ばし、芋虫のようにずるずると床にすべり降りる(というか落ちる)。


そこからすぐ起き上がろうとしたのだけれど、見慣れない位置から天井を見上げたせいか、天井のシミにビクついたりして。……本当に馬鹿馬鹿しい。



たかが、“ユメ”だ。



立ち上がってよーく見回す。

いつもと変わらない部屋。“森”とかじゃない。なにか怖いものも見当たらない。

そのことに変に安心して笑ってしまった。


起き上がって、眠い瞼をこする。

そんなときにチクリと顔面に衝撃。

あ、こんなところに吹き出物ニキビができてた。


(……はあ。不摂生がたたったのかな?)



朝・パン(ダブルソ○ト)→昼・パン(菓子)→夜・スーパーの総菜&米=無限ループな最近。

一人暮らし(も同然)の女子高生の食事としては、振り返ってみると貧相すぎて話にならない。


料理は苦手だ。いや、作れないわけじゃないだけど。

が、一人分となるとどうしても面倒で、億劫で、張り合いがなくて。

ついつい出来合いのものに手が伸びる。

そんな17歳。



鏡でも見てニキビを確認しようかと思ってのぞきこむ。


そこに写るのは、何処にでもいるヒロインにはなれない少女。

それでも白馬の王子に憧れる、自己主張の弱い少女。

ニキビを気にして、自分の不真面目さを思い返す少女。







『親に早めに先立たれたという境遇を嘆きもせず、ただ客観視するだけの少女。』







……今度は鏡に写ったカーテンのなびきにドッキリしたりして。

また阿呆らしいと思っても、嗚呼。やっぱり意識しだすとなんでも怖いものだ。


それでもカラ元気だって“元気”の部類に入るのだろうから。



(こんな程度の事で一人でいることを怖がったりしていたら、一人でなんて生きてはいけないもんね)



誰に伝えるわけでもなく、ただ何となくそんな風に思って。また笑みをこぼそう……と、した時。


パッと、

床に落ちて粉々にレンズの砕けた眼鏡(あいぼう)を見つけて。


「う、うそ……。最悪最悪最悪!!!あああ、あたし今日学校なのに!!」


華麗に辛い現実に逆戻りだった。




拝啓。

お父さん、お母さん。

試練は唐突にやって来るものなのですね。

でもこの試練はまだ序の口だなんて。

天国(かみさまのそば)にいるなら教えてくれたってよくないですか?


A.娘よ。無茶を言わないでくれ。




「ほほう。それでキミは朝っぱらから私の根城に駆け込んで来たわけか」


「いや、あの、その……。この部屋なら何でも転がってるかなー……、なんて」


油断した。朝までこの先輩がこの部室にいるとは思ってなかった。


「あーあ油断した、失敗だ。という顔をしてるな?」


う……、読まれた。


「いえいえ!めっそうもないです!そ、そんな事より眼鏡ないですか?」


どうにか誤魔化そうとものすごい脈絡で質問をかぶせる。


「古いものなら、ね。しかし何でもあると言うならば、キミの古美術店(いえ)のほうが色々あるだろう?」


対して先輩はニヤニヤした顔を崩さなかったけど、話を続けてくれた。

私はそれにひとまず安堵する。はぁ……。不機嫌にするとこの人は本当に面倒だし。



「あれはただのガラクタですよ。毎月伯父が送ってきて増えますけど……。何の値打ちもないし、売れたためしもないですし」 


「あれらはもの凄く良いモノなんだがなぁ……。一般人には価値が伝わらんか」


「だったら先輩が買って下さいよ」


「アレを土民(にんげん)の紙幣で交換などできやしないよ。ワタシには一生かかっても払い切れんからな」


「……はいはい」



この先輩。髪の毛をちゃんとそろえれて、喋らなければかなりの美人で通るこの先輩は。


“自称”、魔女だ。



「あー……そうそう、眼鏡だが。ほら」


ぽーん、と唐突に細長いケースが飛んできて。


「わっ!ちょっと、投げないでくださいよ!!私、今日家で落として割った心的外傷(トラウマ)があるんですから」


いいながら、ケースを開ける。

うーん……。思ったよりはまともだけど、ちょっと古い。

まあ、今日他界した相棒も黒縁だったからそんなに違いはないのだけど。


手に取ってかけてみる。あ、度が一緒だ。

うん、見える見える。大丈夫かも。

はぁ、ホッとした。これで授業をうけられる!



「ふむ。それはすまなかったな。ワタシのミスだ。じゃあ詫びに占いをしてやろう」


「え!?」


そのまま教室に戻ろうと立ち上がりかけた私は、不意を突いた先輩の言葉で動きを止める。

お、おおお?マジですか?



「……なんだ。やりたくないのか?」


「い、いえそういう訳ではないのですけど……あまりにも突然だったもので」



先輩の、占い。


というかココが神秘現象(オカルト)研究部で。

部長が先輩で。副部長が……不本意ながら私で。

部員は九月現在、私と先輩だけという来年には完全に廃部確定な状況で。


それでもなお部費が出る理由。


それが“占い”って言ったら、大抵の人は信じないだろうけど。


占いを受けるための先着一名の座を得るために、廊下を疾走する生徒が毎日二桁いるくらいの、それくらいの的中率。生徒(主に女子)からの圧倒的な人気。


それがあるから、厳しいと有名な学園(うち)の生徒会も手出しができない、……らしい。


当の先輩は、『理事長に許可を取っているから良いんだよ』って、不思議なことを言っていた。

うちの理事長は正体不明で、誰も姿を見たことないいってことで有名なんだけど……。



閑話休題。



そして私が、先輩が占ってくれると言って戸惑った理由は。

……一日に先輩が占うのは、さっきも言った言った通り先着一名、一人だけなのだ。


「あのー、これって“一人”にカウントされるんですか?」


「それはそうだろう。キミは土民(にんげん)じゃないのかい?」


「いや、そういう意味ではないんですけど……」


はあ。今日、一番に走って部室に来た占い希望者に恨めしい目で見られること確定だな……。



なんて。


思っても、占ってもらえること自体はすごくうれしい。


「さあて。手順は何度も見てるからわかるな?

手をこの水鏡の上に掲げて……水が落ち着くまでそのままでいなさい」


「はい」


……そういえば。

こうやって占って貰うのは入部以来だから、もう五カ月ぶりくらいになる。


その時も、先輩は唐突だった。


――ふふ。

と、思い出すと笑ってしまいそうな。



そんな入学直後(ごかげつまえ)




「ふむふむ、やっぱり変わってないな。平平凡凡(へいへいぼんぼん)、無病、無事故」


「あ、そうですか……。そ、それで恋愛運の方は……?」


「れ・ん・あ・い?キミもそんなことに興味を持つ歳になったのかい?成長したなぁ」


「私、先輩と一歳しか違わないんですけど……」


「ワタシは879歳だと言ってるだろう?何回言えばわかるんだ?」


「ああ……、はい」


このやり取りも一体何度目か。

さっさと諦めて突っかからなければ済む話なのだけれど、なんか負けた気がして言い続けているっていうのが本音で。

……そのうち“設定”にボロが出るんじゃないかなって。

微妙な期待?をしてみたり。



「恋愛か、そうだね……。出会いは有るな」


「え?有るんですか!」


「すごい食い付きだね。まあ、さっきのは冗談にしても、キミだって乙女だからなぁ。そんな眼鏡に女っ気のない普通の髪型だと忘れがちだが」


いや、あなたに言われたかないよ!


と、いう言葉は呑み込んで。


「それはいったい何時(いつ)どこで!?」


「明日」


「あ、明日!?」


と、唐突すぎだろ……と思いつつもこの先輩の占いだ。きっと何かあるんだろう。


そう思ってしまうくらいの評判を、先輩は持っていた。



「そ、その人って私が知ってる人ですか?」


気になる!凄く気になる!!



「ふむ。そうとも言えるし、そうとも言えない。意味はわかるかい?」


「え?いやさっぱりですけど……」


あれ?こんな抽象的な答えは先輩にしては珍しい。いつも具体的なことをパッと当ててしまうから凄いのに。


「じゃあ、名前は……?」


「いやいや。それは後のお楽しみでいいじゃないか。それよりもっと耳寄りな情報があるぞ?」


「え?なんですか?」


「……聞きたい?」





その声はどこか弾んでいる気がして。



「キミね」



だから最初は何を言ったのかすぐには理解できなかった。







「あと一カ月で死ぬよ」












「は?」

『HeartBreaking Romance』はいとうかなこさんというアーティストさんの曲から取りました。それは私がただ単純にこの人の歌が好きだから、という理由しかありません。意味は特にないです。

この作品は書いていて楽しいし、話は全部作ってあるのでおそらく時間はかかっても完結すると思いますので気長に応援していただけると幸いです。

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