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プロローグ クラスで1番可愛いウチのパートナー


「あとは任せたぜ、お姫様」


 ゴリラ型のフィールドボスを空中へ殴り飛ばした直後。俺、ヒイロはある女の子の踏み台になった。

 肩に伝わるダン‼ という衝撃。とても仮想世界とは思えないほど、リアルな感触だ。


「だからその呼び方はやめてってば⁉」


 動揺しながらも空高く舞い上がった女の子は、鞘から刀を抜く。最近、ボスモンスターのラストアタックで得たばかりの『黒刀“夜空”』を。


「もう‼ なんでいつもヒイロくんは――」


 思うように空中で身動きが取れないモンスター。

 その一瞬を突くように、女の子は黒い刀で一刀両断する。

 相手の残りHPはまだ3割ほど残っていたはずだ。それなのにたった一撃でモンスターは完全に沈黙し、白い光のチリになって消えていく。


 “切断せつだん”。それが彼女の()()()()()()()の名。

 発動条件は簡単で、ソード系の武器で対象を斬るだけ。

 当たれば一撃で部位欠損、または倒すことができるスキルだ。


   ***


「ヒイロくんはなんで私をお姫様呼びするのさ‼」

「しょうがないだろ。お前のプレイヤーネームが『ヒメ』なんだから」


 モンスターを討伐して、リザルト画面を確認しながら街へ帰る途中。隣を歩く女の子は、戦闘終わりとは思えないぐらい元気が有り余っていた。とても深夜2時前とは思えないテンションだ。


「そっちはそろそろ落ちなくていいのか? 明日、居眠りするぞ」


 リザルト画面を閉じて、隣を歩く女の子へ視線を向ける。

 腰まである長い黒髪に、身長は平均的身長な俺の肩ぐらい。

 日常的に彼女を見ている俺から見ても、十分魅力的に映る抜群のスタイル。


 髪色以外、まさに現実世界の彼女そのものだ。

 まあ俺と同じで、自分の写真をモデルにアバターを作ったらしいから当然と言えば当然だけど。


「そういうヒイロくんも落ちなくていいの? 今日で徹夜2日目でしょ」

「問題ない。3日ぐらいなら寝なくてもなんとかなる」

「そう言ってまた学校で寝るつもりでしょ。まったく、隣で寝られる側の身にもなってよね」


 子供っぽく頬を膨らませて、そっぽを向く女の子。

 ここまでの会話でもわかる通り、俺と彼女はリアルでも知り合いだ。

 それどころか同じ高校でクラスメイト。


 一緒にこのVRMMO『ユニーク・スキル・オンライン』をプレイするようになったのは、高校へ入学して間もなくの頃。お互いにそれ以前からプレイしていたけど、それまでは交流もなく、互いにソロプレイヤーとしては有名だった。


「それで? 今日はもう落ちるか? それとも――」

「もちろん‼ ギリギリまで狩りに決まってるよ‼」


 そう言って勢いよく、次の周回ボスを目指して走り出したヒメ。

 彼女が寝落ちしたのはそれから数分後。二人で別の周回ボスに挑んでいた時だった。


   ***


恋咲こいさきのバカ‼ あんなところで寝落ちなんてあり得ないだろ‼」


 頭に被ったヘルメット状のVRMMO用ハード、『ダイブギア』を脱ぎ捨てて愚痴を零す。

 まさか相手の範囲攻撃を妨害して、スタンさせる直前で寝落ちするとか。

 おかげで火力が足りずにスタンは失敗。さらに寝落ちしてログアウトした向こうとは違い、残っていた俺はモンスターに殺されたうえ、デスペナまで受ける始末。文句の一つでも言いたいところだ。


 ……まあ言うとしても、向こう側の世界になるんだけど。

 リアルのヒメと俺では、クラスカーストで天と地ほどの差があるんだから。


「たっく。今日はこのまま、俺もふて寝してやる‼」


 一人暮らしをするマンションの一室に、俺の声が響き渡った。



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