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能力の否定

「そんな能力は私にはありません」

俺はそう言った。


美形の神は表情を曇らせこう言った。


「そんな能力は私にはありません。

まったく日本人というのは、どこまで傲慢なんだ。

一度褒めさせただけでは飽き足らず、

二度も三度も褒めさせようとする。

素直に“ありがとう”でいいじゃないか。


それともなんだい?

私が嘘をついていると言いたいのか?

私に人を見る目がないと言いたいのか?


じゃあ、こう言ってやろう。

“そんなことないですよ”


──あぁ、そうでしたか。

私、よく人を過大評価しすぎだと言われるんですよ。

ありがとうございます。

危うく過大評価するところでした。

あなたのような方を評価したなんて知られれば、恥をかくところでした。

──これでどうだい?」




「それは嫌です。謙遜のつもりで……」

と俺は言い訳を言った。



「わかっているよ。

しかしね──

謙遜は礼儀でもなんでもない。

ただの暴力なんだよ。


まずは私の時間を奪う。

もう一度褒めさせることで、私の精神力を奪う。

そしてなにより──

褒められなかった者たちを地獄へ突き落とす。

“私なんて全然”と君が言うたびに、

君より下だと思っている者たちは、もっと惨めになる。


だからハッキリ言おう。

美徳じゃない。

悪徳だ」

と美形の神はそう言った。


頭の中がぐちゃくちゃになって、吐き気をもよおした。


40年以上、慣れ親しんできた思考パターンが、一瞬にして一気に崩壊した。


俺は思い出した。

小学校3年生の頃、全生徒の前で褒められた生徒が、

「私なんて」

と謙遜した事があった。

その時、隣の奴が

「私なんてだって……偉そうに」

とむくれていたことを。


謙遜は美徳と教わり、そうするのが当然のように振る舞ってきた。

それが他者を傷つける悪徳だと言われる日がこようとは。



「まぁいい。まずはココから離れよう」

と美形の神は言った。

その瞬間、辺りの風景はどこかの部屋へと変化した。


俺は気が付けばソファに座っていた。


コーヒーの香りがした。

「ブルーマウンテンだよ。ニンジャバーガーもあるけど、どうする」

美形の神は、今にもふきだしそうな顔でこちらを見た。


「ブルーマウンテンも、ニンジャバーガーもあるんですね」

俺はそう言った。

神のそのふきだしそうな顔は少々むかつきもしたが、すこしの安心感もあったからだ。


「そりゃそうさ。人間界で手に入るものは、容易に手に入れられる」

と美形の神は答えた。


「あなたをどう呼べばいいですか?」

俺は質問した。


「神でいいよ」

と神は答えた。


「ここには沢山の神がいる。でも神でいいのですか?」

と俺は尋ねた。


「そうだ。基本的には、この世界線……、

つまり今君に見えている世界の神には名前がない。

なぜかというと、この世界の神は、創作の闘争の中の一部分にすぎないからだ。

わかるかい」

と神は言った。


「一部であるとなぜ名がないのですか?」

と俺は尋ねた。


「神々の世界にもヒエラルキーは存在してね。つまり上下関係だ。もし仮に、有名な神が創作バトルに参加したならば、その関係の神々はみな、その有名な神に投票する。

それは作品の評価を著しく歪めるのだよ」

と神は言った。


「つまり公平性を担保させるために、あえて名前を出さないということでしょうか」

と俺は尋ねた。


「その通り。そして君ら作家も記号で常に表示されるABCDEのようにね」

と神は言った。


「あの闘技場の白いローブをきた皆さんが神なのでしょうか?」

と俺は尋ねた。


「そうだよ。あれが神だ」

と神は言った。


「ずいぶん沢山いらっしゃるのですね」

と俺は言った。


「そうだね。これはその人それぞれがいる世界線によっても異なるが、君がアクセスしている世界線の神、つまり我々に限って言うならば、

厳密には1人とも言えるが、同時に八百万の神とも言えるのだ」

と神は言った。


「どういうことですか」

と俺は言った。


「つまり唯一神と呼ぶ場合は株式会社神のような形で、そこには無数の社員である神がいる。人が唯一神とあがめる場合は、この株式会社神をさし、八百万と表現する場合には、株式会社神の中の、ここの部署の個々の神々をさす。どちらの表現も真であるという事だよ」

と神は言った。



「そういう世界なのですね。ではあの白いローブの姿が、どなたも同じに見えたのは、同じ公平性のためですか?」

と俺は尋ねた。



「少しは理解できてきたようだね。そうだ。お互いに認識阻害をかける事により、公平性を保っている」

と神は言った。



「神々の目的はなになのでしょうか?」

と俺は尋ねた。


「神の目的は……、

そうだね。考えたこともなかったが。

一つ確実なのは、創作だね。

常に神は創作をし続けている。

そして創作をし続ける理由は……、

それが楽しいからではないだろうか」

と神は言った。


俺は神が特に目的がはっきりしないまま。

創作を続けているという事に、

少し意外な感じを受けた。

てっきり完全なる調和とか、

そういう事のために、やっているのかと。

そう思っていた。


「世界を調和させるためではないのですか?」

と俺は尋ねた。


「人間にこの概念がわかるとは思えないが、

いいだろう。答えよう。

完全なる調和というのは無でしかありえない。

ある変数を足せば、そこには一瞬の静寂が訪れるが、

逆にその変数を足したことで、揺らぎが起き、波が訪れる。

そしてその波が訪れたことで、さらなる変数を足すことになる。

つまりそういう事だから、世界を調和させることなど不可能なのだよ。

我々は常に拡大させる宇宙の中にあって、その瞬間瞬間のゆらぎを楽しむ。

不確実性を尊ぶ。そういうことなのだよ」

と神は言った。



「では創作バトルとはどんな事をするのでしょうか?」

と俺は尋ねた。


「創作バトルにも、いろんな方式があるが、今からする創作バトルに関しては、お題がでるから。そこに関して、どういう発想をぶつけるか?という戦いになる」

と神は言った。


「大喜利のような感じですか?」

と俺は尋ねた。


「そうだね。大喜利に近いかもしれないな」

と神は言った。


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