理不尽
(エラー。ポイントの使用は明後日以降からとなります)
と出た。
どういうことだ。
と俺は言う。
すると説明書がでてきた。
ポイントの使用に関しては、ポイントを得られた状況に応じて最大1週間のタイムラグがあります。
と書かれてあった。
どうしよう。
ポイントはある。
しかしポイントの使用は明後日以降からだ。
でも、残りの寿命は本日未明。
間に合わない。
「神さま。間に合いません。どうすればいいですか?せっかくここまで来たのに……」
と俺は言った。
「そうか。それは残念。運命だと思って諦めるんだな」
と神は言った。
「神さま。俺がここで諦めたら面白いですか?」
と俺は言った。
神はにやっと笑った。
「そうだね。諦めないほうが面白いね」
と神は言った。
「俺は諦めない。そしてそれは神々にとって面白い。なにか回避策をください」
と俺は言った。
「そうだね。じゃあ。君には神々の前で、なにか芸をやってもらおう。そうだね。なにかについて論理展開してもらおうか」
と神は言った。
「わかりました。お願いします」
と俺は言った。
ふたたび闘技場に俺は移動していた。
ふと見上げると、スクリーンに、お題と書かれた文字が出ていた。
「君は付き合ってもない、ほとんど話したこともない女の弟の為に、なぜそこまでする。
それはどういう感情なんだ。
ここでは思考がモニタリングされ、スクリーンに表示されるから、ただひたすら考えろ。
途中で必要なら神々から質問がされる。
それについても考えよ。
神々が満足したならば、弟の命を救ってやろう」
とそう書かれたあった。
俺は考えはじめた。
その思考に沿って、言葉がスクリーンに映しだされる。
これはマズい事を考えれないな。
と思うと、
これはマズい事を考えれないな。(ら抜き表現です)
と表示され、神々の失笑を買う。
俺はふたたび考えはじめた。
たしかに付き合ってもいない。ほとんど話したこともない女の弟の為に、なぜここまでしているのだろうか?
これが友人の弟ならしただろうか?
いや多分していない。
たしか1ポイント1万円という額だったと思う。
1000万円か。
(スクリーンに病室の映像と悲し気な音楽が流れる)
うわ。なんて悪趣味な。こんな演出もはさむなんて。
と俺は思った。
その言葉さえも、スクリーンに映し出される。
神々は失笑している。
1000万……
救わないほうがいい?
この弟知らないしな。
でも、彼女の悲しそうな顔を見ると、助けてあげたい。
しかし本当に彼女は悲しいのかな。
人はいつか死ぬもの。
もうすでに覚悟しているのでは。
もし、俺が戻れたら、弟救ったし、評価は高いだろう。
でも、俺が救ったって、どう証明する?
証明のしようもないし、ただの奇跡で終わるのでは。
じゃあ。救っても救わなくって同じなのかもしれない。
それなら。お金の援助だけする?
それも違う気がする。
結局彼女が苦労しているのは、弟が病気のせいだもんな。
ここで弟がなくなったほうが、彼女は楽なのでは。
救うのも、ここで亡くなるのも同じなのでは。
あれ。俺何考えているんだろ。
そんなの彼女が悲しむに決まっているじゃないか。
決まっている?
なぜわかる。
優しそうな子だから。
バイト3つ掛け持ちしているから。
えっそれだって。
弟のためなのか?
正直、いま彼女の弟を救っても、なんのメリットもない。
もしかしたら、ポイントを貯めておいたら、ここで良い生活できるかもしれない。
エンタメは豊富だし、食べたいものは食べられるし、見たいものは全て見れる。
欲しいものは全て手に入る。
天国じゃないか。
ここから俺は出たいのか?
あのクソみたいだと思っていた世界に帰りたいのか?
なぜ。
彼女が好きだからか。
そんなに魅力的な子か?
美人なんていくらでもいるぞ。
可愛い子なんていくらでもいるぞ。
ただ少しだけ会話しただけなのに。
なぜそこまで人に惚れれる。
いいにおいがした。
そんな理由か。
なんとなく好きになった。
なんとなく好き。
そんな理由で命をかけるのか?
いやオカシイだろ。俺。
冷静になれ。
そうだ。
恋は盲目という。
それなんじゃないか。
冷静になれ、マッチングアプリとかあるじゃないか。
あれって、相手の好みのスペックとか入れるじゃない。
それで自分の理想の相手を探すじゃないか。
それでいえば、理想の相手なのか?
いや違うな。
俺も彼女もフリーターだ。
いや。
でも俺がフリーターで彼女が正社員とかって成立するのか?
しないだろうな。
でも男が正社員で、女がフリーターなら成立するだろう。
そういう打算で俺は彼女を選んだのか?いや好きになったのか?
そもそも彼女はなんだと思っていた。
学生とか。
いや。
なんにも考えていなかったな。
そうか。
彼女の事について、
かわいいな。性格良さそうだな。いいにおいするな。
くらいしか考えていなかったんだ。
ちょっと待てよ。
俺って低スぺって思ってたけど、
彼女も可愛いけど低スぺなのか。
両親とも他界、難病の弟。
そうか……
普通に考えたら、結婚相手にふさわしい人じゃないんだ。
俺はどうだ。
両親はいるけど、疎遠だし。
金持ちでもない。
彼女と同じように高卒で、フリーター。
はっ同じじゃねぇか。
なに?俺は傷の舐めあいがしたいわけ。
どうなんだろう。
あれくらいのスぺなら。
裏切られないだろうって安心なのかな。
逆に金持ちのお嬢さんとかだったらどう?
自分が恥ずかしい。
あれぐらいのスぺなら。
俺も安心できるし、自己肯定感も下がらない。
そういう感じの打算があるの?
いやちょっと待て。
喫茶店で見かけた時にそこまでわかるわけねぇ。
やっぱり好きなんじゃないか。
だって救いたいって思ってるもの。
スぺとかいま初めて考えたし、
そんなの気にしてないもん。
でも仮に1000万円が俺に入るとして、付き合ってもない女の弟に使うかと言ったらどう?
本気なの?
いや絶対おかしいでしょ。
絶対冷静じゃないって。
後悔するって。
いいじゃない。
ここで人間らしく、やっぱりやめましたっていうの。
こういうのも神さまたちにウケるかもよ。
いやウケるとか考える。
そうだな。それを考えるのはおかしいな。
しかし、恋ってやつは、合理的に考えれないものなんだな。
でもな。
これだけは、はっきり言える。
彼女が悲しそうな顔をするのは、とにかく嫌だ。
もうわからない。
俺は彼女に笑顔でいて欲しい。
それだけだ。
と俺は思った。
俺は闘技場で大の字に寝転がった。
「神さま達。なんかうまい事は言えないわ。
でもな。
これだけは、はっきり言える。
彼女が悲しそうな顔をするのは、とにかく嫌だ。
もうわからない。
俺は彼女に笑顔でいて欲しい。
それだけだ。
そして、この要望が通らないなら俺は今日から回答をボイコットし続ける。
そしてカイガラムシにでもなるよ。
好きにしてくれ」
と言った。
会場は笑いに包まれる。
(ぴこんぴこんぴこん)
「賛成多数が可決されました」
とアナウンスが流れた。
モニターがスクリーンに大きく映し出される。
昏睡状態だった弟の顔に色がつく。
「姉ちゃん……」
と弟は微かな声を出す。
(ぐー)
とお腹の音がなった。
「姉ちゃん……。ブルーマウンテンと、ニンジャバーガー。そして姉ちゃんの店のまかないが食べたい」
と弟は言った。
「先生。先生」
と看護師は慌てて、主治医を呼びに行った。
彼女は泣きながら、うなづいている。
「食べようね。食べよう。お腹いっぱい食べよう」
と言葉にならない声で彼女は言った。
俺は神の方を見る。
神は暖かい笑顔で俺を見ていた。
そして、ふたたびさっきの部屋に戻った。




