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しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる  作者: 余儀ノ理人


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魔王編④

 バンボルトが魔王城に降り立つと、重苦しい城門が開いた。

 その直後──

 「……なんだこれは」と、思わず声が漏れた。


 真紅の絨毯がまっすぐ伸びている。しかも、よく見ると金糸が織り込まれていて、模様もやたら凝ってる。その両脇にはズラッと魔族たちが並んでいて、全員が片膝をつき、頭を下げていた。


 「ようこそ、偉大なる客人よ……!」

 先頭にいた女官らしき人物が、恭しく手を差し出してくる。


 「え? 客人? 俺のこと?」

 俺はすぐさま振り返り、バンボルトの顔を見る。客人ってお前のことじゃないのか?

 だけど、バンボルトは腕を組んで、そっぽを向いた。


 俺とバンボルトの他に誰も居ないし 

 何かの間違いじゃないかと思って、後ずさろうとした瞬間――


 「行けよ。客人だろうが」

 舌打ちしたバンボルトに背中を強く押された。


 やっぱり俺が客人ってことなのかよ……一体どうなってんだ。

 冷たい視線を感じて、辺りを見回すと、インスーラの奴も居た。

 唇をわずかに噛み、眼鏡越しにじっと俺を観察していた。


 「……不本意だが、形式は守らせてもらう。だが、これがいつまでも続くと思わないことだな」

 形式? 魔王城では攫ってきた奴を、まずは歓迎する風習でもあるのか?


 古びたホルンのような楽器が鳴り響き、グイグイと背中を押されながら絨毯を歩いていくと、城の奥にある扉の間に来た。

 鬼? とも違う、なんだか邪悪な生き物が彫られたその扉が開く。


 現れたのは、一人の女性だった。


 黒い長髪に、白い肌。額からはしなやかに曲がった角が生えている。肩が大きく開いた鋲付きの上着に、黒と赤を基調としたブーツ。衣装はまさに「魔王」って感じの戦闘スタイルなのに、その顔は、驚くほど優しげだった。


 それだけじゃない。

 あの目元、口元。雰囲気まで、なぜか懐かしい感じがした。


 前の世界の、近所の花屋にいたあのお姉さんだ。季節の花に詳しくて、たまにおまけしてくれて、でもちょっと不器用なところがある人。

 そういや、お姉さんの電子レンジを修理中に感電して、ここに来たんだっけか? なんだか遠い記憶に感じる。


 そのお姉さんの面影が、なんだか今この目の前の“魔王”と重なっていた。


 「はじめまして。わたくし……いや、我が、この地の主――魔王、ルクス=ヴァル=オームです」

 たどたどしいけれど、とても澄んだ声で彼女はそう名乗った。

 

 「え、えーっと……魔王って、もっとこう……ガツンと来るタイプかと思ってました」

 何を言ってるんだ俺は……。もっと恐ろしいことが待ち受けているんじゃないかって緊張と、魔王のギャップが激しくて、自分でも訳が分からなくなっている。


 けれど、魔王はくすりと笑った。


 「よく言われます。でも、そういうのは、どうにも性に合わなくて」

 その笑顔は、どこか人間くさくて、あたたかかった。


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