学園編㊹
魔導ゴーレムの鋼の拳が地面を砕く。
ライミが跳ねてかわし、俺がスタンガンブレードで切りかかる。
手応えはある、けど……効いてる感じはねぇな……どうすりゃいいんだ。
「足止めはできてるにゃ! でも決定打が……!」
ライミの言う通り、結構な数の生徒が避難してくれた。
競技場に残ってるのは、戦う意思のある奴らだけって感じだ。
スイラン、姫様、トレス、ジェダくん、ステラも残ってくれている。
競技大会に出るための特訓が、みんなの自信に繋がっている気がするぜ。
「援護します!」
ジェダが氷の魔弾を放つ。ゴーレムの足元を凍らせ、動きを鈍らせる。
「くそっ、打っても打ってもキリがないっす」
トレスが歯を食いしばって叫ぶ。
魔法は全部吸収されているみたいだが、魔法を受けると動きが鈍る。効果はあるんだ。頑張れよトレス。
「魔法の吸収……吸収された魔力は一体どこへ? もしかしてゴーレムの体内に留まっているんじゃ……」
スイランは冷静に対処法を探している。
魔法を溜め込んでいるとなると……どうなるんだ? 俺には分からん。
「限界があるってことですわ。攻撃をし続ければ内部からの破壊が可能かもしれません」
流石、姫様だ。なるほど、じゃあこのまま攻撃してれば、いずれは……。
「って、あとどんだけ攻撃当てればいいか分からんのに、無謀過ぎないか?」
俺の突っ込みに、みんな苦虫を嚙み潰したような顔で睨んだ。
きっと、みんなもそんな不安はあったのだろう。
そんな霧を掴むような攻撃を続けていると、空から光の矢が降り注いだ。
「加勢する」
その声に振り返ると、背中に羽のような光を従えた長身の男子生徒が宙に浮いていた。そして、言葉では言い表せないくらいのめちゃくてカッコイイ弓を引き光の矢を放った。
「あの人は……《陽光のアベル》です」
ステラがメモを取り出して説明を続けた。
「SSSクラスの筆頭、この学校で上位を争う者……」
まじで、アニメの主人公そのまんまって感じの生徒だな。
金髪はさらっさらで、風にたなびくたびにキラキラ光ってる。しかも目は青くてまっすぐ。もうなんか、俺なんかとは別次元の存在みたいなイケメンだ。
白と金の上着もバッチリ決まってて、なんかこう……近づくのも申し訳ねぇくらい神々しい。
「ゴーレムなんざ、上級爆裂術で十分だろ」
そう呟いて呪文詠唱を終えたのは、同じくSSSクラスの《爆砕のミルラ》だとステラは言った。
燃えるような赤髪を高く結び上げたポニーテール、瞳は火花のように金色に煌めいている。
細身だが引き締まった体には、軽量の黒い戦闘服がぴったりと張り付き、胸元にある爆裂紋様の魔導刻印が光っていた。
魔力を込めるたび、髪の毛がバチバチと静電気のように揺れ、空気が焦げる匂いがした。
彼女が放つ魔弾は、空を割るほどの衝撃を伴い、ゴーレムの胴体を爆風で包み込む。
「根ごと封じる。蔦よ、絡まり、動きを止めよ……!」
そう小さく呟き、地面に手を触れるその姿は、精霊の巫女のようにも見えた。
SSSクラスの《緑縛のラト》、ステラはそう言った。
深い緑の長髪を背中まで垂らし、その髪に蔓のような装飾が絡んでいる。肌は透けるように白く、瞳は淡い翡翠色。
薄手のローブの裾には草花の模様が刺繍され、風に吹かれるたび、草原の香りが漂うかのようだった。
ステラの説明が終わると、地面から巨大な樹木のような蔦がゴーレムの四肢に巻き付いた。
学校で最上位クラス、SSSが三人も来たら、さすがにあのゴーレムも止まるだろう……と誰もが思った。
だが──
「……動いてる!?」
ミシ……ミシミシッ……と、
ゴーレムが蔦ごと腕を振り上げ、地面を叩き割った。
「やはり魔力が吸われる……通常の魔法攻撃じゃ意味がない……」
アベルが歯噛みする。
「もう無理よ。これは“魔導兵器”じゃない、“災厄”だわ」
SSSクラスメンバーの絶望する顔に、必死に踏ん張っていた他のクラスの面々も後退りし始めた。




