学園編㊶
霧が晴れた。
さっきまでの幻覚のざわめきが、すっと消えていく。
それと同時にGクラスの生徒たちの姿も見えた。流石上位クラス、精神干渉なんてすぐに突破して追いついてきやがった。
俺はキックボードのハンドルを握り直して、ぐっと前に体を倒した。
残りの障害は魔法結界やら物理トラップやらだっけか? 上等だ。
「大丈夫かステラ、振り落とされんなよ!」
「……はい。今は、ちゃんと現実を見てます……」
心強い返事に、思わずにやけた。
「だったら、いっちょぶち抜くぞ!」
目の前に現れたのは炎の柱。これが結界?
俺はすぐに強力ダクトファンを取り出して、脇に抱えながら電力を強めに流し込んだ。
「ステラっ、息すんなよ」
「つ、突っ込む気ですか?」
「行くぞ」
「ちょっと、待って……」
ステラは慌てて氷魔法を唱え始めた。攻撃系の魔法は苦手だっていってたけど……なんか寒くなってきた。そうか、氷魔法で自分と俺を覆っているのか。ナイスだステラ、これで心おきなく突っ込める。
ダクトファンの強力な風で炎の流れを乱し、炎が一瞬揺らいだスキに、キックボードが滑り込むように突っ切った。
その後のトラップもステラの機転を利かせた魔法と、俺の家電でなんとか切り抜けゴール手前まで辿り着く。
すぐ後ろには必死の形相で追ってくるGクラス。
電動キックボードからは白い煙が上がっていて焦げ臭い……無理させ過ぎたか。モーターが焼き切れる寸前だ。
「くっ、このままじゃ抜かれる」
「わたしを降ろしてください。そうすれば電次郎さんだけでも先にゴールできます」
ステラのしがみつく腕に力が入ったのが分かった。
確かに、このままじゃ二人いっぺんに抜かれてしまう可能性が高い。だとすれば俺だけ先にゴールして評価点を稼ぐとこは最終的にZクラスのためになる……けど。
「誰も置いていかないさ。お前らだって姫様を探してくれただろ、みんな一緒じゃなきゃ意味がないってよ」
「……わたしも、一緒にいていいんですか?」
「あたりめぇだろ」
俺がありったけの電力をキックボードに流し込むと、猛スピードでGクラスを突き放す。
まだまだ限界じゃなかったみたいだな……けど、徐々に靴の裏がものすごく熱くなり、走行速度が急激に下がってきた。
「オーバーヒートか」
振り返ると、すぐそこにGクラスの二人……ここまでか……。
次の瞬間、キックボードの後方部分が爆発した。
その勢いで俺とステラの体が宙を舞い、そしてゴールテープを切った。
俺は空中で体をひねり、ステラを抱き抱え、背中から地面に着地した。
起き上がると、観客席がどよめいてる。
「すごい……!」「今の見た!?」「ずっと相方を背負っていたのに」
勝ったのは、どっちだ?
「勝者っZクラス!」
アナウンスの後、会場全体から歓声が上がる。
「……やったな、ステラ」
「……はい」
「なんだ? 嬉しくないのか?」
「いいえ、嬉しいです」
微妙な反応……やっぱりずっとおんぶしてたからかな。
でも、勝ちは勝ち、これで二勝二敗。
「明日の最終戦もがんばろうぜステラ」
「はい」
興奮して会場に乱入してきたZクラスのメンバーと喜びを分かち合った。
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