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しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる  作者: 長月 鳥


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学園編㉚

 魔法競技大会フォーカス・ストライク全勝の快挙に、Zクラスの教室は、これまでにないほど明るい空気に包まれていた。

 「ふっ、当然ですわ。私が出たからには勝つのは当たり前ですもの」

 紅茶を啜るエネッタの横顔はどこか得意げだ。

 「オレの火球、見てた!? ギリアンのやつ、ビビって腰引けてたよな! 俺達だってやればできるんだよ、スゲーよ」

 トレスも今までにないくらいテンションが上がっている。

 「トレス、調子に乗り過ぎないようにな、それから相手にもちゃんと敬意を払うことをわすれるな」

 こういうとこで足元をすくわれるのがテンプレってやつだ。注意はしておこう。


 「でも、本当に……勝てたんですね」

 スイランが、感慨深げに呟く。

 「ふふ……観察史上最高のパフォーマンスでした……」

 ステラはいつものメモ帳に加えて、なぜか小さなスクラップ帳まで作っていた。俺のページが増えている気がするのは気のせいだと思いたい。

 

 「よしっ、よくやったなみんな!」

 俺は手を叩いて、立ち上がった。

 「今日は俺の奢りだ。食堂でも売店でも、なんでも好きなもん頼んでパァーっと盛り上がろうぜ!」

 「マジで!? やったー!」  「電次郎さん、マジ太っ腹!」  「電次郎様、ではわたくしは最高級ミルクティーと──」

 そのとき。  制服の裾をキュッと掴むようにして、ライミが俺の袖を引いた。

 「電にゃん……今日も特訓したいにゃ」

 その声は小さく、でも真剣だった。

 そうだよな、まだ今日で終わりじゃないんだ。

 明日はライミ一人の戦い……喜びを分かち合うにはまだ早い。


 「すまねぇみんな、俺とライミは、ちょっとだけ特訓だ。男に二言はねぇから、みんなは好きなもん食ってきてくれ」

 「にゃっ!」  ぱぁっと笑顔になって、ライミはしっぽをふった。

 「僕も付き合いますよ、特訓っ」 スイランは当然のような顔でライミの肩を叩いた。

 「じゃあ俺も行く」 少し残念そうな顔をしたがトレスも賛同してくれた。

 「電次郎さまに施しを受ける身じゃありませんからね」 姫様らしい。

 「ライミの観測は有用です」 ステラはライミの特訓記録を出してくれた。

 「俺はみんなに合わせます」 ジェダくんも真剣な表情だ。


 「よし、ライミ、明日も勝つぞ。そのために特訓だ」

 ライミは俺の言葉に拳を強く握った。


 ──そして放課後、いつもの空き地。

 ライミの足に装着した加速度センサーは、GPSと内蔵のデータロガーでライミのダッシュ軌道を記録してくれている。

 「ライミ。今のターン、右足の軸が内側に入りすぎてる」

 「分かったにゃ⁉」

 俺の持っている加速度センサーの受信端末には、ライミの軌道がリアルタイムで出ている。

 「矯正角度は……1.8度内側、ってとこですね」

 ステラが受信した内容を精査し、的確に指示を出す。


 「にゃあ……にゃるほど、視線が泳いでたかも」

 「そう。次は進行方向にちゃんと目線を向けて。ターン時は外足に体重を乗せろ」

 ライミは深呼吸して、再びスタート位置へ。

 「ライミ、心拍数が赤ゾーンだ。焦るな」

 手首につけた心拍計が赤から黄色、そして深呼吸とともに緑に変わる。

 「にゃ……今ならいけるにゃっ!」

 その一声とともに、ライミは駆け出した。

 さっきまでの重さが嘘のように、滑らかで鋭い走り。

 ターンもスムーズで、ARスコープに映し出された“敵の影”に跳躍からの回避まで完璧に決めた。


 「うおぉ、完璧じゃねぇか!」

 息を切らしながらも、ライミは誇らしげに拳を握り、笑った。

 「電にゃんのおかげにゃ。……これなら勝てる気がするにゃ」

 その顔を見て、俺も自然と笑みがこぼれた。


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