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学園編⑨(ステラ視点)

 ふぅ、ビックリした。ノート見られてないよね? 早くご主人様……いえ、ライオネット先生のところに向かわなきゃ。


 「ライオネット先生、持ってきました」

 「上出来だステラ、あとで褒美をやろう」

 「ありがとうございます先生」

 やった。ご褒美がもらえる。


 わたしは電次郎から借りてきたスムージーミキサーと美顔スチーマーを先生の机の上に置いた。

 すると先生はわたしに分解するよう言った。

 電次郎によると、外装はプラスチックという物質らしい。薄くて軽いのになかなか割れない頑丈で不思議な素材だ。金属のネジを外すと、中には見たことのない小さな板と細かい部品、そして細い糸のような紐が何本も張り巡らされている。これに電次郎が放つ“電力”というものを流すと、強力な音と滑らかな軌道を描き先端が勢いよく回転する。こんな構造、見たことも聞いたこともない。

 「……この素材、魔鉱でもないし、魔力の流路もないな。これが何故動くんだ……」

 先生の声は、いつもより少しだけ弾んで聞こえた。  その横顔を見るだけで、わたしの胸が少し熱くなる。


 ──ライオネット先生。

 学園でもっとも美しく、もっとも知的で、そしてもっとも恐れられている存在。  けれど、今目の前にいる彼女は……まるで少女のように楽しそうだった。

 「電流と呼ばれるエネルギーが、導線という細い管を通って動くそうです」

 私は嬉しくなって、電次郎から集めた情報を提供した。

 「……導線? 魔力媒介でもないのに、力が流れるのか」

 「そうです。しかも一度流れ始めたら、魔力みたいに“集中”や“感情”に影響されないようです」

 私の説明に、先生は目を輝かせる。


 「そう……安定させて誰にでも使えるようにすれば、戦争にも使えそうね」

 その案に、私は一瞬だけ手を止めた。

 でも先生が望むなら、戦争孤児だった私だけど、全力で協力する。

 「いいわよステラ、次を見せて」

 「次は美顔スチーマーです」

 「顔を美しくする魔道具ね……」

 先生の目がより一層輝いて見えた。これ以上綺麗になってどうしようというのだろう。

 

 「分解しますか?」

 「ちょっと待って、まずは電力と雷系統の魔法の違いについて確認しましょう。ステラは雷系得意よね?」

 「はい」と、自信をもって言えるほどの魔力じゃない、初歩の魔法なら使えるくらいだ。

 「雷属性の魔法を当ててみましょう。動くかもしれない」

 「わかりました」

 私は指先に魔力を集中させ、一番弱い出力で魔法を放った。

 

 ──パチンッ。

 美顔スチーマーが一瞬光ったかと思うと、焦げ臭い匂いとともに白い煙が立ち上った。


 「……あっ」

 「…………やっちゃったわね」

 分解し、中を確認すると内部の小さな板が焦げていた。

 「ど、どうしましょう、先生!? 電次郎さんに返さなきゃいけないのに……!」

 「うーん……」

 先生は煙を仰ぎながら、さほど気にしていない様子で首を傾げた。

 「……あとは任せたわ、ステラ」

 「えっ!? 先生!?」

 「あの人、きっと許してくれるわよ? あなたが泣けば」

 「そんな……!」

 ──でも、そんな強引なところも。

 私は、嫌いじゃない。


 「やっぱりあの男じゃないと動かせないようね……」

 先生が電次郎のことを考えていると思うと、なんだか悔しくなった。

 「次は、ここにあの男を連れてきてくれる?」

 「……ここに、ですか?」

 私と先生だけの秘密の部屋なのに。

 「でも、ここが露見したら、色々とマズいのでは?」

 ここには、他の先生方に言えないような実験道具が沢山ある。

 いくら解明のためとはいえ、リスクが高すぎる気もするけど──。


 「いざとなったら、どうとでもなるわよ。今までだってそうでしょ?」

 「はい……そうですね」

 ああ、悪いご主人様……。


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