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しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる  作者: 長月 鳥


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王国編⑨

 ──当たらない。


 スタンブレードを構えて飛び込んでも、サンダルフォンの一撃はその数倍の速度と重みで返ってくる。

 まるで、山が崩れてくるような攻撃だ。


 あのバスターソード、俺の体と同じくらいあるのに、サンダルフォンはそれを小枝みたいに振り回してやがる。


 俺が唯一勝てるのは──紙一重の回避力だけだった。

 特訓の成果で反射的に体が動く。肩すれすれ、耳の際、足元ギリギリ。

 すべて紙一重で、なんとか避けている。


 だが、避けるだけじゃ意味がない。

 このままじゃ、スタンブレードを当てる隙すら生まれない。


 「くっそ……これじゃいつか潰される……っ」


 振り抜かれるたび、剣圧で足場がえぐれ、砂煙が舞う。


 剣の刃は俺に当たっていない。殺してしまうわけにはいかない、という気遣いだろう。

 「骨の二三本で許してやる」って顔だ。

 ──ちょっとムカつく。


 だが、それこそが俺の勝機──まずは、あのバカでかい剣をなんとかする。


 ふと頭に浮かんだのは、かつて使ったことのある市販品の電動工具──ランダムサンダ。

 確か、軽くてコンパクトなのに振動が強くて、鉄板もガタつかせるほどだった。


 「……あったよな、あの時の……!」


 空中に手をかざし、いつものように電気製品を呼び出す。光の粒が弾け、小型のランダムサンダが手の中に現れた。


 「試す価値はある……!」


 俺は、奴の剣をランダムサンダで受け、そしてスイッチを入れた。


 ウィィィィン! という高音とともに、円盤が高速で回転する。


 バスターソードの刀身から、火花が散る。

 そしてその瞬間──ギィィィィインッ! と共振音が走った。


 「っ、ぐ……ぬ……!」


 サンダルフォンの表情が歪む。

 両手に伝わる痺れ、ブレる重心、剣が一時的に制御不能になる。


 「よし、効いてるっ……! もっとだ……っ」


 もう一度、円盤を押し当て、電力を思いっきり流しつける。ランダムサンダは爆音をあげ金属の摩擦熱と振動がバスターソードを通じてサンダルフォンに襲いかかる。


 「剣が……ブレる……くっ、何を仕込んだ、貴様!」


 「お前の剣、確かに重くて強い。でもな、重いってことは──揺らせるってことだろ!」


 ウィィィィィンッッッ!!  凄まじい振動と音。金属の共鳴が爆音となって響き渡る。


 サンダルフォンの腕が震え、剣が手から離れた。


 「今だっ……!」


 俺はスタンブレードを振り抜いた。

 スタンガンのスイッチを押し込むと、ブレードの先から高圧電流が流れ、サンダルフォンの胸元に炸裂した。


 青白い稲光がほとばしり、サンダルフォンの体から煙が立ち昇る。


 「……やりすぎたか!? 死んでないよな!?」


 俺は焦って構えを解いた。

 しかし、次の瞬間──


 「……なかなかやるじゃねぇか。おかげで肩の凝りがなくなったぜ」


 煙の中から、サンダルフォンがぴんぴんと立ち上がっていた。


 「えぇっ!?」


 続けざまに、もう一度スタンブレードを当ててみるが、まったく効いていない。


 「今度は──拳で語り合おうぜ」


 そう言って、サンダルフォンはスタンブレードを素手で掴み、バキンと投げ捨てた。

 そして、ファイティングポーズをとる。


 「……マジかよ……」


 それでも俺は受けて立った。


 殴り合いは、一進一退の攻防だった。

 ……いや、正確に言えば、俺の顔面だけがどんどん腫れていく。


 「なかなかの根性だよ、おっさん。だが──これでしまいだ」


 「うるへぇ……まだ、俺は倒れちゃいねぇ……っ」


 ボロボロになりながらも、最後の拳を振り上げたそのとき──


 「敵襲だーっ!!」


 誰かの叫び声が、訓練場全体を凍りつかせた。



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