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救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して最推し勇者を救おうと思います~  作者: 嵐山田
三章

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第10話 器の大きさ

 国王が諌めてもなお、険悪な空気を隠そうとしない聖女ヨハンナとエモニたちの間に対立の要因のはずの俺が入ることで文字通り一触即発な雰囲気を物理的に抑えながら、俺たちは初めて国王に会った談話室へ移動した。


「……では、その邪神の呪いについて説明を求めます」


 全員が席に着くや否や、おそらく使命感に燃えているのであろう聖女ちゃんが前のめりに聞いてきた。


 聖女の横に座っている陛下もほとほと呆れたとでも言いたげな表情で、もう諌める元気がないようだ。

 俺は俺で、隣で怒り立ち上がりそうになったエモニを抑えるのに必死だ。


「じゃあ、改めてお話しさせていただきます」


 若い正義感丸出しな聖女ちゃんだが、これでも国賓である。救世主などと囃し立てられようと、身分の差は歴然だ。

 一瞬、クラリスのことがよぎったが……彼女は別枠だろう。


「これはつい最近攻略した銀の翼ダンジョン第四階層での出来事だったのですが……」


 俺はダンジョンで死にかけて謎の少女に謎の力で焼け落ちた腕を繋げて貰った話を出来るだけ具体的に説明した。


 「あなたが王国生粋のダンジョンである銀翼を攻略したのですか? にわかには信じがたいですね……」


「ちょっと? 国賓だか何だか知らないけど、あなたさっきからロティスに当たりが強くない?」


 え、エモニちゃん、拳を震わせないで。

 普通なら頭を下げるべき相手なんだよ。


「当たりが強いのも仕方ないでしょう? だってその腕は……」


「それについての話を今ロティスがしたと思うのだけど?」


 ミリアさん……怖いです。

 というかミリアって静かにキレるタイプだったんだ。

 一番怒らせたらせたらまずいタイプだよ聖女ちゃん。

 君は若いからまだ知らないかもしれないけどね。


「……ですが、そんな話っ!」


「信じられぬと? 国王ですら認めてロティスに叙勲の話まで出ているというのにかの?」


 ……ユメが一番安心出来る怒り方だ。

 きっといい上司になるね。


「叙勲ですかっ!?」


 ユメの話を聞いた聖女ヨハンナが目を見開いてディバン陛下へ顔を向ける。

 ディバン陛下は大仰に頷いて見せ、それを受けたヨハンナは視線を斜め下に落として黙り込んでしまった。


 そんな光景を後方腕組み平社員面をしながら見ていた俺だが、流石に聖女ちゃんがかわいそうになって来た。

 

「まあ、そういうわけでこれは邪神信仰の証とかではないとわかっていただけたでしょうか?」


 これ以上詰められないように最高のタイミングで結論を急かした。


「……っそう、ですね。国王ディバン様にまで認められているというのに私が意地を張っているのは失礼でしょう。これまでの無礼を謝罪します。申し訳ありませんでした」

 

 ……あれだけ頑なだったのに、意外とあっさり認めたな。

 これ、あれか? 一度強く出た手前引っ込みがつかなくなっていたパターンか?

 まあ、十四、十五歳くらいで他国に国賓として来てるんだもんな。

 それに玉座の間に一人で乗り込んできた辺り、身の回りの世話をするような人間もいないのだろう。そんないっぱいいっぱいだった状況で聖教国で悪とされる邪神の呪いが目に入ったら……うん、だとすれば、本当に絶好のタイミングだったな。


 一度聖女が非を認めてしまえば、聖女とてエモニたちと年の近い女の子。

 俺がヒルウァを倒した話や銀翼での話などを脚色たっぷりに語っていた。

 ……さすがの俺も恥ずかしいので、目の前では止めてもらいたい。

 ちなみに雰囲気が良くなった辺りで陛下は退席なされた。

 とても空気の読める御仁で、改めて国王の器を思い知らされた。


「そういえばロティスさんの耳飾りから聖属性の魔力を感じます。それはどちらで?」


 ちょうど銀翼での出来事を話し終わったあたりで聖女が突然、俺に話を振ってきた。

 

「ああ、これは聖属性魔法を操る魔族の魔将ヒルウァの魔核で作ったイヤリングだよ。サンシャインギルドのギルドマスターに作ってもらったんだ」


「聖属性魔法を操る魔族……先ほどのお話でもお聞きしましたが、これまたにわかには信じがたいことです。ですが、本当なのでしょう」


「そういえばロティス、そのイヤリング付けたとき腕の色が変わってたよね」


 ふと、エモニがそんなことを呟いた。


「そう言えばそうじゃったの。イヤリングをつける前はもっと禍々しく黒かったのじゃ」


「……ってことはもしかして……!」


 何かに気付いたようにミリアがヨハンナの顔を見る。


「……私の魔法なら、その呪い……解けるかもしれません」


「……!?」


 言われてみれば、なぜ気が付かなかったんだと自分を疑うほどだ。

 ヒルウァの魔核を使った魔具で効果があったのなら、聖魔法の本場聖教国で聖女とまで言われるヨハンナの魔法ならこの呪いを解けるかもしれない。


「試してみますか? おそらく結果の前に酷い苦痛が伴うと考えられますが……」


 控えめな提案。

 どうやら本当に苦しいらしいな……。

 でも、前の王城で起きた発作がエモニたちの前で起きる方が苦しい。

 そんなことになっては、どんなことが起きてしまうのか俺には想像できない。

 俺の目標は変わらない。

 エモニにハッピーエンドを迎えさせる。

 俺が原因でバッドエンドなんて目も当てられない結末だ。


「頼む……俺のこの腕の呪いを解いてくれ」


 不安と心配、そんな感情がこもった視線が向けられる。


「分かりました。……では、場所を変えましょう。さすがにそのレベルの呪いとなると何が起きるかもわかりませんので、王城で解呪はまずいでしょう。どこか、ロティスさんが一番落ち着ける場所はありますか?」


「うちでいいじゃない。誰だって自分の家が一番落ち着けるでしょう?」 

 

「王都にご自宅が? コントラクターの方々は基本的に根無し草と聞いていましたが、やはり叙勲されるほどの方になるとそうではないのですね」


 ミリアの一言でヨハンナは解呪以外にウチに興味を持ったみたいだ。

 ……そういえば、昨日は一日ミリアは自室にいたもんな。レイスたちの悲鳴を聞き逃していたとしても仕方がない。


「では、ロティスさんたちのご自宅で解呪を行うとしましょう!」


 ああ、もう完全に来る気だね聖女ちゃん。

 ごめんよテレサ、ソーカ、キミたちのことは忘れない。


 苦い表情をしたエモニとユメと顔を見合わせる。

 

「そんな急に外出できるものなの?」


「大丈夫です! 大司教からは神の導きに従うように言われていますので!」


 だいぶ素を見せてくれるようになった聖女ちゃんだが、これはまたどうにも……


「さすがはロティスじゃな」

「だね」


 諦観と共に呟かれたその言葉。

 だが確かに、これには言い訳の仕様もなかった。


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