第9話 邂逅
「緊急招集って……」
まだ日が昇り始めて間もない程度の時間。
俺たちの家の呼び鈴を鳴らす音で目を覚ました俺たちに飛び込んできたのは、国王ディバン陛下からの緊急招集だった。
「あの使いの人の慌てよう、いったいどうしたんだろうね?」
最低限の準備だけを整えて、俺たちは王城から遣わされた馬車へ乗り込んでいた。
「十中八九面倒ごとじゃの……」
「そうねぇ」
ユメさん、ミリアさん、どうして私を見るんですか?
主人公はエモニちゃんですよ。
「まあ、行けば分かるだろうけど……今って聖女が王城に滞在してなかったっけ?」
「してたはず……だね」
三人からの視線が突き刺さる。
「まあ、まだ緊急招集と聖女が関係しているとも限らないし……もしかしたらマーズのダンジョンブレイクが……ってそっちもそっちで厄介だよな」
どう考えても、面倒ごとに巻き込まれそうな雰囲気に俺は朝から肩を落とすのだった。
◇◇◇
「陛下っ! ロティス様方がご到着されたようです!」
「すぐ通せっ!」
今までにないほど慌ただしい雰囲気の王城。
そんなにも面倒なことが起きたのだろうか?
到着するなり、すぐに玉座の間に通された。
「我々一行、馳せ参じました」
陛下を前に膝をつき首を垂れる。
こういう時でも、礼儀を弁える必要があるのは王政の厄介な点だろう。
「ああ、よくぞ参った。早朝から呼び出して悪かったな」
「いえ、国民として当然のことにございます」
「陛下、今は一刻を争います」
「ああ、そうだな」
隣に控える宰相のような人物が進言する。
こうして臆さずものを言える辺り、やはりこの国王は賢王なのだろう。
こういう面を見せられると安心する反面、どれだけ面倒な問題が起こったのか不安になるな……。
「十分なもてなしもできずにすまないが、事が事でな。今、聖教国の聖女がここに滞在していることは知っているな?」
「はい、存じております」
やっぱり聖女関連か……。
本当にこのゲームは勇者を厄介ごとに巻き込んで絶望させようとして来ているらしい。
「うむ。その聖女が言うにはこの王都に魔の気配があるとのことだ」
……!
王都に魔の気配? つまり、アインの時のような魔族が潜んでいるということか?
「……その魔族を発見し、滅することが我々の任でしょうか?」
「ああ、突然のこととなってしまい本当にすまない。だが、国内それも王都内部での急な問題に騒ぎを大きくするわけにはいかず……」
「いえ、分かっております。その魔族が潜んでいる場所に検討はついているのでしょうか?」
厄介ごとが過ぎるな……いくら俺たちでも周囲に気を使いながらの戦闘は厳しいぞ。
クラス5程度の魔物なら俺の刀術で何とかなるが、それ以上になると建物まで切り裂いてしまいかねない。
エモニの魔法はどうやっても王都が燃えるし、ミリアも近い結果になるだろう。
唯一ユメはそこまでの規模の攻撃技を持っていないが、ダンジョン外でどれだけの力が出せるのかはまだ未知数だ。
「ああ、それについてなのだが――」
国王が魔族が潜伏していると思われる場所について話そうとしたところで、急に玉座の間の扉が開け放たれた。
「サンシャイン国王ディバン陛下、失礼いたします! ただいまこの部屋より圧倒的な魔の気配を感じ――貴様! その腕は邪神の刻印だな! おのれ魔族め! 白昼堂々国王の命を狙おうなどと!」
……は?
玉座の間内にいた全員が扉を振り返る。
そこに現れたのはおそらく聖女だと思わしき、小柄な少女だった。
正しくと言わんばかりの杖を持ち、どういう訳かそれを俺に向けている。
「聖女ヨハンナ!? いったい何事だ!?」
「ディバン陛下! そこに跪いている男こそ、この国に根差す巨悪に違いありません! すぐに離れてくださいっ!」
おいおいおい。
想像の斜め上に厄介な事象が起きてるぞ。
しかもこの腕やっぱり邪神系の力なのかよ……。
それに――
「ねえ、今、なんて言った???」
あーあー、まあ、そうなりますよねぇ……。
「私も聞こえなかったかな。ねえ、小さな聖女ちゃん?」
あぁ……ミリアもか。
でも、ユメは落ち着いて――
「ロティスがなんじゃって? のう、小娘?」
いませんよね。はい。
「!? 美人な女性を三人も惑わせて侍らせるなんて! なんて罪深き魔族! 大丈夫ですよ皆さん、この私聖女ヨハンナが皆さんにかけられた魔法を解いて差し上げます! 聖魔法『アパテーネス』!」
聖魔法『アパテーネス』あの口振りからおそらく洗脳や幻惑を解除するタイプの魔法だろうか?
強い光がエモニたち三人を包み込む。
「これでもうだいじょ――あれっ!?」
自信ありげに魔法を放った聖女が驚いた様子を見せる。
「こんな魔法で、何かできるとでも?」
エモニから赤々とした魔力が迸る。
ルギアとの戦いのときに見たほどではないが、その迫力はやはり物凄いものがある。
あの時は赤黒い魔力を纏っていたが、今回は黒の要素は少ないただただ赤い魔力だ。
……勇者の力ってもしかしてエモニの感情によって魔力の質を変えるのか?
絶望なら赤黒く、今回のような怒りならひたすらに赤いみたいな感じで。
……って、こんな分析をしている場合じゃない。
「みんな、ちょっと落ち着こう! きっと何か誤解があるはずだ」
聖女とエモニたちの間に立ちそう叫ぶ。
「うむ、ロティスの言う通りだ! 聖女もロティスの仲間の皆も一旦落ち着いて話をしようではないか」
陛下も俺に便乗して彼女たちを諫める。
……そう言えば陛下の御前じゃん。
聖女は言わずもがなだけど、不敬すぎる立ち振る舞いだよこれ……。
「陛下も惑わされているのですかっ!?」
「聖女ヨハンナ! いい加減にするのだ!」
「っ! ……失礼いたしました」
陛下の語気にようやく杖を下げた聖女だが、相変わらず俺のことを睨んでいる。
これはこれで面倒だな……。
……こうして、俺たちと聖女は最悪の邂逅を迎えた。
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