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救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して最推し勇者を救おうと思います~  作者: 嵐山田
三章

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第4話 【Side:聖女】神託

「聖女様っ! 大神官様がお呼びです!」


「はあ、こんどはなにかしら……」


 聖女……それは、人族に与えられた大いなる力、聖魔法を自在に操ることのできる存在。

 とされているが、ここで育てられて十四年。私は気が付いていた。

 聖魔法はそれほど特別な力ではない。


 かくいう私も聖神から生まれたなどと言われているが、この立場を手に入れてからひそかに調査を続けた結果、実の両親であろう二人が私を教会に渡した褒賞で贅沢に暮らしていることを突き止めている。


 聖神信仰を謳うこの教会は利権を守るためだけに、聖魔法の素質が確認された子供の下へ向かい、それっぽい口上を並び立て引き取っているにすぎないのだ。


 聖魔法は癒しの力、その力を独占できれば……想像通り、得られる利益は計り知れないのだから。


 そして、そんな集められた子供の中で私の力は群を抜いていた。

 だからこうして、大神官に呼ばれることもままあるのだ。


「お呼びですか? 大神官様」


「おお、よくぞ、よくぞ参ったぞ聖女ヨハンナよ!」


 大仰な態度で大神官が私を迎え入れる。


「大神官様、本日は何の御用でしょうか?」


 この態度に付き合っていては日が暮れてしまうため、不敬にならない程度に微笑みながら大神官を急かす。


「うむ。なんと先ほど神託が下ったのだ!」


「!? 本当にございますか!?」


 神託、聖教国を王国と同等の国と足らしめている唯一無二の機能。

 この聖都ジュピテにある聖神教のシンボル聖神イシス像。

 神託は大神官クラスの聖魔法の使い手になると聖神像に祈っているうちに聞こえることがあるという。

 その言葉はいつも何か大事があるときに聞こえる。

 残念ながら私は聞いたことがないためこの機能の実態は定かではないが、これまでの実績的に信憑性はそこそこ高い、と思っている。


 「うむ。そなたの驚きも仕方のないことであろう。だが、今回の神託は普段のものより具体的だったのだ」


「と、おっしゃられますと?」


「なんでも、サンシャイン王国王都に聖女ヨハンナの救いを待つ者がいるそうだ!」


「……はい?」


 私は耳を疑った。

 神託で個人が指名される? そんなことが本当にあるのかしら? 少なくとも今までに聞いたことはないけれど……。

 この人、私のことを面倒ごとの処理係だと勘違いしているんじゃないでしょうね?


 ……思わず大変不敬な考えが脳裏をよぎるが、すぐに頭を振ってかき消す。


「いやはや、流石は歴代きっての才能と謳われる聖女! まさか神託にて直接神の御啓示を受けるとは!」


「いえ、私など……」


「謙遜は却って不敬であるぞ聖女ヨハンナよ。これは神の思し召しなのだ」


 ……これはもう、何を言っても無駄だ。


「それで……私は具体的に何をすればよろしいのでしょうか」


 諦めて大神官に内容を聞くことにした。

 というか私への神託ならせめて私にも直接下ろして欲しい。


「ふむ……」


「?」


 なんだか非常に嫌な予感がする。


「そういえば、そなたの名前以外の具体的な部分は聞かなかったな。だが、王都サンシャインに救いを待つ者がいるのだから直接行ってみればよいだろう」


 ………………。


「で、ですが、私の出国は教皇様の許可がないと……」


「無論、話は通してあるゆえ準備ができ次第、向かうように」


 なっ!

 肥え切った体にとても神職者とは思えない華美な装飾を身に着けて、と無能そうな見た目をしているくせに、大神官というだけはあって仕事ができる。


 まさか、私の初の出国がこんな訳の分からない理由で急に決まってしまうとは……。


「……はい。では、失礼いたします」


 ◇◇◇


 聖女ヨハンナが部屋から出ていくのを見送った後、大神官はその場に伏して祈りを捧げる。


「こ、これでよろしいのでしょうか? 我が神よ」


 すると、大神官の頭上に黒いモヤが現れ、彼の脳内に直接語り掛ける。


「ええ、素晴らしい働きでしたよ大神官」


「ああ、ああ! その言葉だけでこれまでの信仰全てが報われます!」


 こんな人間をも救わなければならないのですから、救世主という存在は難儀ですね。

 この肥え太った男は、もはや家畜にも劣る。魔族の目から見ても、救いようがない。

 大神官という立場を利用し、大したことのない聖魔法で法外な金額を請求、こうして私が神のフリをしても気が付くどころか感謝しだす始末。


「でも、あなたは人間を救わざるを得ないなんて……」


 まあ、この家畜のおかげでこうして簡単に聖女を動かせるのですから、ある意味で言えば価値のある人間なのかもしれませんが。

 

 あの聖女の聖魔法の力ははっきり言って規格外。

 今は亡き我が主ヒルウァ様は魔族の魔法によって聖魔法を無理やり強化をした結果、あの驚異的な再生能力を手にしていたわけだが……あの聖女はヒルウァ様に匹敵する力を人間の身にして宿している。それも他人を癒すことのできる本物の聖魔法だ。

 無理な強化の結果、自己再生しかできなくなったヒルウァ様とは大きな違いがある。

 これでロティスの腕の問題は何とかなるだろう。


「それに、私の甘言にも全く耳を貸しませんしね……」


 一人暗躍を続けるアイン。

 その目的は神をしても知りえない。


 ◇◇◇


「……ということで、神託によって王国へ向かうことになりました」


「王国……そうですか。よかったですねヨハンナ。初の長旅ですよ」


 大神官のいた部屋を出た後、私はまず、お世話になったシスターの元へ足を運んだ。


「シスターサクラあなたまで……どうせなら初めての出国は外遊などが良かったです」


「フフ、あなたは変わらずまじめですね。でも、気にする必要はありません。神託だからと言ってそればかりに傾倒しろということではないのですよ? もちろん仕事は大事です。でも、それと同時に色々なことを経験し含蓄を増やす。世間を見て回るだけでも素晴らしい経験になるでしょう」


 シスターサクラは私たちの親代わりのような存在だ。

 私たちというのはもちろん連れてこられた聖魔法使いの子供たち。

 だからなのか彼女の言葉はスッと私の心に届く。


「そうでしょうか?」


「そうですとも。いいですかヨハンナ。あなたはまだ十四歳。私の母国では事情がない限り、まだ仕事をすることができない年齢なのですよ。あなたくらいの子供はまだ多くを学べる。偏見なく吸収できる人間なのです。広い視野を持ちなさい。多角的に物事を考えなさい。それがきっと、神のために、信者のためになりますよ」


 そんな親代わりな彼女は昔からこうして時々、哀愁の漂う顔を覗かせることがあった。

 決して手の届かない何かを思うような、複雑な表情だ。

 でも、だからこそ、心からの言葉だということが分かるのだ。


「分かりました。王国でさらに成長して見せます!」


 だから、彼女が良いことと言うなら私はまっすぐそれを信じる。


「フフ、頑張ってねヨハンナ。楽しむことも忘れてはダメですよ?」


「はい!」


 こうして、聖女ヨハンナとその一行は聖教国ジュピテを立ち、王国に向かって進み始めた。

 道中、聖女は馬車の中から外の景色を目に焼き付けんばかりに眺めており、そんな聖女を見た護衛の騎士たちはその年齢で大任を任されながらも、年相応に知らない世界へ興味深々なのだと微笑ましく思ったそうな。


 なお、彼女の行動はそんな可愛らしいものではなく、物理的に広い視野を得ようと訓練をしているだけだとは誰も気が付かなかった。


新キャラヨハンナちゃんです。

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