第1話 星詠
銀翼からの帰り道、大勢のコントラクターたちを連れたヒナさんに迎えられた俺たちは国王ディバンの命によって、王城へ緊急招集されたようだった。
王城に着くとすぐに談話室に通され、現在はなぜか俺一人がディバン陛下の部屋に通されていた。
「陛下が来られるまで今しばらくお待ちください」
なんだか大変気品のあるメイドさんがものすごく俺を見てくる。
文字通り穴があきそうなほどだ。
「あ、はい………………あの、俺の顔に何かついてます?」
さすがに気になって直接聞いてみることにした。
こんなベタなセリフを自分で言う日が来るとは……。
「いえ、クラリス様のおっしゃる救世主さんがどんな方なのかと思いまして」
そんな俺の様子など気にする素振りもなく淡々と話すメイドさん。
さすが王城の、それも国王のメイドができる程の人だ。
このスルースキルは相当な研鑽を積んだメイドに違いない。
「そうでしたか……」
頭の中では色々な妄想が膨らんだが、まさかそんなことを口に出す訳にはいかず……気まずい時間が流れる。
「……あの、今日は何の用事で呼ばれたのでしょうか?」
何故か凝視され続ける現状の空気に耐えられず、俺から会話を切り出した。
「……色々です」
「色々ですか……」
なんだか様子がおかしいような気がするのだが……。
色々ってなんだよ色々って。
しかもまだこっち見てるし……。
「あの……お名前を伺っても?」
「な、名前ですか!?……いえ、そうですよね。名乗らないのは失礼でした。王城でメイドをしているフィネレーと申します」
フィネレー……フィネレ?どこかで聞き覚えがあるような気が……。
確かクラリスが初めてうちに来た日……。
そこまで考えた時、部屋の扉が開いた。
「おお、ロティス! どうやら銀翼を攻略したらしいな! さすがの実力だ!」
「陛下っ! もったいないお言葉に存じます」
突然現れた国王ディバン・モナーク・サンシャイン陛下に慌てて椅子を立ち、膝をつく。
「そう畏まらなくともよい。顔を上げよ。……リゼナよ、紅茶と茶菓子を頼む」
「あっ!はいっ!」
言われた通りに顔を上げるとディバン陛下がフィネレーさんに指示を……ん? リゼナ?
チラりとフィネレーと名乗ったメイドに目を向ける。
ディバン陛下も俺の視線に気がついたようで扉の横に控えていたメイドを見た。
「……フィネレっ!?お主、ここで何をしているっ!?」
「え、あっ、その……ごめんなさいお父様」
……え?
フィネレ?
それって……。
「第一王女のお前がなんて恰好をしているんだ! それでは民に示しがつかんであろう!」
「い、いや、でも……クラリスが誑かされてないか……」
「そんなものは余計な心配だっ!!」
……姉だよな、クラリスの。
名前に聞き覚えがあったからもしかしたらとは思っていたが……。
で、この状況は一体?
「ンンッ! ロティスよ、すまないな。我が娘たちは時折こういうことがあるのだ……」
「は、はぁ……」
つまりフィネレさんの方もクラリス同様お転婆お嬢様というやつなのだろう。
まあ、きっと国王の血なんだと思うけど。
「あ、あの……お父様?」
「フィネレっ! お主はいつまでそうしておるのだ! さっさと着替えて来んか!」
「は、はいっ!」
◇◇◇
それからフィネレさんが着替えてくるまで陛下に銀翼での出来事を話していた。
「ほう、それでお主の左腕がそんなことに……」
「はい。しかも、明らかに異常な力なんです。刀の一振りでクラス6相当の魔物の首を一刀両断したり……」
「……いや、もはや驚かぬ。さすがは救世主、魔物は相手にならないということか」
「そんなことは……この左腕については完全に不幸中の幸いというか、本来手にするべき力ではなかったような気がしていますし……」
「ふむ。確かに、強大すぎる力は時には身を滅ぼすとも言うからな。あい分かった。その力については余の方でも調べておくことにしよう」
「……! 助かります」
と、そうこうしていると部屋の前からドタバタと足音が聞えて来た。
「ロティスっ!婚約の件進めてくれる気になりましたかっ!?」
「こ、婚約ですって!? だ、ダメよクラリス! そんな軽薄な行動はこのお姉さまが許さないわ!」
「はぁ……」
ディバン陛下の口からとてつもないほどの苦労が込められたため息がこぼれた。
「やあクラリス、この間ぶり。そして改めてフィネレさん、ロティスと申します。よろしくお願いします」
一瞬で混沌と化した空間。
それを何とか引き戻そうと空気を換えるように挨拶をした。
「ンンッ、これは失礼したわね。私はこの国サンシャイン王国第一王女フィネレ・サンシャインよ。マイア村ではクラリスの危機を救ってもらったと聞いているわ。それにあのいけ好かないクラリスの婚約者もあなたのおかげで心を改めて自ら身を引いたし、そのことについても感謝しているわ」
ああ、貴族っぽい。
貴族なんて歴史上でしか知らないけど、日本出身の俺からすればこういう尊大な感じのユーリとかがやっぱ貴族っぽいなぁって思うんだよな~。
「で・す・が! クラリスとの婚約は――」
「ロティスっ!? その腕は……」
そんなことをのんきに考えていると、フィネレさんが話し終わる前にクラリスが俺の左腕に急接近してくる。
「ちょ、ちょっとクラリス!? まだ、私が話している――」
「お姉様はちょっと静かにして! ロティス……これはどうしたのですか? 痛みは? 何か不自由が? 私が付きっきりで生活をお手伝いした方が? だとすると一緒に暮らした方が? ああ、もうこれは結婚、結婚するしかないですね!」
様変わりした俺の左腕を前に怒涛の勢いで捲し立てるクラリス。
なんか、数日合わないうちにどこかのエモニちゃんに負けないレベルのヤンデレになろうとしてない?
「だ、ダメですからねっ!いくらあなたが優秀でもクラリスと結婚なんて!」
「お姉様には関係ないでしょっ!」
ああ、せっかく持ち直したと思ったのにまたカオスだよ……。
思わず明後日の方向を向いてやり過ごそうと思ったその時、
「二人とも、少しは落ち着きを見せんかっっっ!!!」
国王一喝。
「「は、はいっ!」」
これが王たるものの威厳か。
そう思わせる迫力がそこにはあった。
……ただ、できることなら姉妹喧嘩の仲裁ではなく、もっと他のところで見たいところではあったが。
「時間を取らせてすまないなロティスよ。フィネレも来たことだ。改めて本題に入るとしよう」
そうして、為政者としての顔でディバン陛下がテーブルに着いた。
お待たせしました。
第三章投稿始めます!(先行しているカクヨムでもまだ完結していないので8月いっぱい分になります)
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