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救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して最推し勇者を救おうと思います~  作者: 嵐山田
三章

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第23話 【Side:エモニ】最強

「なんだかんだでミリアさんと二人になることって珍しいね」


 ルシール領へ向かう馬車の中、いつもより広々としたそこで向かい合って座るミリアさんに話しかけた。


「そうね。私が居てロティスがいないなんてことこれまでなかったものね」


「ね~。それで、ルシール領はどうなってるんだろうね」


 何だか不思議な感じだ。

 勇者の力……ってロティスが言っていたこの力に目覚めてから、いつも感じていた不安を感じない。

 ロティスに頼ろうとする弱い私の顔が引っ込んでしまったかのようだ。


「あの、ユーリさんの様子を見るになかなか大変なことになっていそうだけれど……でも、エモニちゃんがいれば大丈夫ね」


 ふふっ、と柔らかい笑顔を見せるミリアさん。


「そ、そうかな? でも、任せられた分はきっちりやってみせるよ!」


「ええ。期待してるわ。私も手助けするから、さっさと片付けてロティスとユメちゃんのところに行きましょう!」


「うん!」


 ◇◇◇


 馬車を走らせること数時間。

 公爵家であるルシール家は王都から比較的に近い位置にあり、完全に日が落ちてしまう前に辿りつくことができた。


「……静かね」


「……うん、静かすぎてちょっと怖いくらい」


 初めて訪れたルシール領は街灯以外のすべての明かりが落ちており、不気味なほど静かな場所だった。


「とりあえず、辺りの調査から始めましょうか。ルシール家の屋敷にはその後で行くべきだと思うわ」


「そうだね! まずは情報収集から。懐かしいなぁ、昔ミリアさんに教わったね」


「ふふっ、そうね。あれからエモニちゃんもロティスも信じられないくらい強くなったわね」


「……ロティスは昔から強かったけどね」


「まあ、それはロティスだから、ね?」


 二人は軽口を叩きながら、不気味な街を駆けだした。


 ◇◇◇


「……侵入者ですか」


 ルシール家の屋敷、その主であるフレミネー・ルシールの執務室でルシール家長男ムルソー・ルシールは呟いた。


「へぇ……この距離で分かるのか。お前、中々見込みがあるな」


 その呟きを拾ったのは、黒いモヤから突然現れた魔族。


「言葉遣いに気をつけろゼクス」


「へいへい、それよりどうすんだ? 殺しに行くか?」


 ゼクスと呼ばれたその魔族は気味の悪い笑みを浮かべながら魔族特有の長く鋭い爪をちらつかせる。


「ダメだ。戦闘は奴らがこの屋敷に来てからで良い。むやみに街へ被害を出したくはない」


「へぇー、ほんとにまじめだよなお前。魔族の俺が言うのもあれだけどよ、なんで俺たちと手を組んでるんだ?」


「言葉遣い……まあ、いい。私が貴様らと手を組む理由か。そんなものは一つしかない。王位を確実に得るため、それだけだ」


「王位ねぇ……俺たちにも一応仕える王サマがいるけどよ、そんなにいいもんじゃねぇと思うけどな」


「ふっ、立場のない貴様のような一魔族とは違い私は由緒正しいルシール公爵家の人間だぞ? 上に立つ者は見て居る景色が違うのだ。だと言うのにあの愚父は、現状に甘え、この領の発展さえ望まなくなった。だから、これを機に改革を起こすのだ」


 拳を握り、力強くそう語るムルソー。

 その瞳には魔族や魔法由来ではない、純粋な野望が宿っていた。


 ◇◇◇


「よかった。街の人たちは寝てるだけだね」


「ええ。でも、普段なら飲み屋とかがまだ騒がしい時間帯よ。やっぱりおかしいわ」


「うん。ってことは……」


「ええ、行くしかなさそうね。ルシール公爵の屋敷に」


 二人で一緒に街を見回っていたエモニとミリアはある程度の民家を覗いて回った結果、その結論を固めていた。


「敵は多分魔族だよね?」


「ええ、おそらくそうね。嫌な魔力だわ」


「でも、きっとこの間のルギアって魔族より強いってことはないだろうし、サクッと倒そうかミリアさん!」


「そうね。私はその魔族のことはあまり知らないけど、魔将ヒルウァには痛い目に遭わされたし、そのリベンジと行こうかしら」


「よしっ! じゃあ、行こう!」


「ええ、好きなだけ暴れて良いわよエモニちゃん。私が合わせるから。勇者の力見せて頂戴!」


「うんっ!」


 およそ緊張感も感じられない雰囲気の二人。

 実際に二人にとってはこの後ロティスたちの下へ向かうことこそが本命であり、こちらはほんの準備運動感覚なのだ。


「勇者魔法〈アウェイクン〉」


 エモニが魔法を発動する。

 馴染みのない魔法だと言うのに、まるで最初から使えたかのようにさらりと口を吐いた。


「へぇ……ほんとにすごいわね。これが勇者としてのエモニちゃんの力なのね」


 驚くミリアの目前には、鮮烈な赤い魔力を迸らせるエモニの姿。

 一切の濁りのない透き通った鮮やかなその魔力は、王城で見たエモニの魔力よりビシビシとした力強さを感じさせる。


「うん、そうみたい。へへ、自分でもびっくりだよ。今ならほんとにロティスにも勝てちゃうかも?」


「ふふっ、そうかもね」


 エモニはその言葉を聞き終わるとほぼ同時にルシール公爵家の屋敷の方向へ、文字通り突っ込んだ。


「エモニちゃん!? ……これは、ほんとにロティスより強いかも?」


 外壁を派手に壊してもなお停止していなさそうなエモニを見て、ミリアは素っ頓狂な声を上げ、急いで後を追った。


 ◇◇◇


「「っ!? なんだこの魔力!」」


 その反応はムルソーとゼクスに同時に感じられた。


「おいおい、コイツはちょっとまずくねぇか」


「どういうことだ! あの者の、ドライの言ではこちらに来るのはせいぜいクラス5-6程度のコントラクターではなかったのか!」


 ムルソーは掴みかからんばかりの勢いでゼクスを問い詰める。


「知らねぇよ……。俺だってそう言われてたし……っつか、この力、下手したら要警戒の救世主とやらより強くねぇか?」


「チッ! ゼクス、お前は足止めをしろっ! 私はこんなところで死ぬわけにはいかんのだ!」


「はぁ? こんなの相手に足止めなんて俺たち数字付きの魔族が束になったって……」


 ゼクスが話している途中でルシール公爵家の屋敷に轟音が響き、激しい衝撃が二人の身体を揺さぶった。


「あーあ、こりゃ死んだな。アインにつくべきだったかぁ~」


 ゼクスの後悔も時すでに遅し。

 彼らの下へ、終わりがやって来た。


「あ、見つけた。私、分かるよ。キミたちが敵だよね? じゃあ、死んで?」


 エモニの手元へ赤い雷が集まっていく。


「勇者魔法〈ケラノウス〉」


 その魔法を唱えた瞬間、ルシール公爵家の約半分が跡形もなく消滅した。


連載100話です!!!

いやぁ……ついに三桁の大台に乗ってしまいました!

それもこれも読んでくれる皆様のおかげです! 本当にいつもありがとうございます!


本編では100話という節目にふさわしくエモニちゃんが大暴走してくれていますね(笑)

今話ではユーリの兄の名前を考えるのに一番時間がかかりました(笑)

次話もおそらくエモニかミリアの視点になると思います。


それでは、ここまで読んでいただきありがとうございます!

是非、これからもロティスたちの物語をよろしくお願いいたします!

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