第-1章-2話 炎の時代 3
場面は木星宙域付近―――後に木星宙域海戦と呼ばれた戦場に移る
ビリューとケラッフが通信しながら、戦闘を行っていた。
「ほんと呆れるぐらい圧倒的だな、敵軍の奴らは」
ビリューがつぶやくには訳がある…此処にいる敵の数、およそ670隻
突入部隊の内訳は
戦闘機 10機
戦闘爆撃機 7機
戦闘偵察機 2機
小型戦機(駆逐艦か軽巡に相当) 9機
中型戦機(重巡か軽空母に相当) 5機
大型戦機(戦艦か空母に相当) 1機
で、ビリューを含んだ残りは後方支援任務…退路確保に向けて行動中である。
『ビリュー、そちらの用意はどうだ?』
「敵は予定通りこちらに向かっている。
あとはお前ら突入隊が切りこみに入るだけだ…と言うか護衛目標を放り投げて囮にするなんてお前だけしかやらないと思うぞ?」
『奴らは遠・中距離の転移が苦手だ、ならそれを逆手に取るのが一番だろ?
…それに、戦場でリスクを犯さなければ勝てる戦いも勝てない、例えそれが多大なリスクであるとしてもだ。』
何もしないリスクは、戦争行動を行うリスクよりも遥かに高い。
「なら、いつ敵と戦ってくれるんだ?」
『今からだ…全機突撃せよ! 一隻でも多く殺せ!』
そう言うと、囮たるビリュー達を負っていた敵の後ろから長距離転移してきたケラッフ率いる突入部隊。
一応背後にも申し訳程度に警戒していた敵艦隊がいたが、同数程度…つまり、一方的展開となるのは目に見えていた
『ビリュー、見ての通りだから退路の確保は任せた』
「解った! 全機反転せよこれより退路上の敵を殲滅する!」
その瞬間、木星付近の宇宙は光に包まれる。 花火が上がっている様な雅な光景であるが、実質は遠距離攻撃が出来る大型艦同士が
打ち合っているのだ。 そして徐々に一方の攻撃は少なくなっていく
「やっぱり敵のバリアーは脆いな…だから数で攻めてくる、実に面倒だ」
しかし数的消失はつらいのか、ルチャルセイス型が何隻か突入部隊を回り込んで取り囲むついでに、ビリュー率いる輸送艦隊を射程に収めようとする。
「残念だが、俺らの後ろを取るという幻想は持たない方がいいぜ?」
サーノから、170cmエネルギー凝縮砲が、48本伸び、同じ射線上にいて死角上にいたルチャルセイス型を大量に破壊する。
光る槍のような光景である。
「死角があると思った? 残念! 俺の主砲は死角無しだ。 又一つ賢くなったな、授業料はいらん、むしろ受け取れ」
場面変わって、ケラッフ率いる突入攻撃部隊
「オラオラ!!」
ハイテンションで突入するケラッフ率いる攻撃隊は既に100を超える敵を破壊していた…が、まだ5百超はいる。
そんな中、フィーアエック型が次から次にパルウム型を発艦させ、数に物を言わせるように突入艦隊に向けて突撃する。
はたから見れば無謀ではあるが、これは遠距離から攻撃する敵に対して、隠れる場所が特にない所ではおそらく、最も被害が少ない方法でもある。
「ファナ! 突撃してくるパルウムのチビ助共の相手は任せたぞ!」
「任せてっ! お兄ちゃんっ! ついでにバカみたいに接近してきてるフィーアエックも破壊してくるね!」
「まて、そいつはファナだけじゃ難しいだろうから昨日話した協力技を使うぞ!」
「解った!」
凄まじい速さで向かうルジオア-43型戦闘爆撃機4機、それらを落とそうと応戦するため銃撃、体当たり攻撃を敢行するパルウムや
その近くにいたパルウムごと広範囲攻撃を行うフィーアエック型航空戦艦、しかし機体性能が違い過ぎた。
ひょいひょいっと避け、当たりそうな物だけをバリアーで防御し、機があれば15cmエネルギー凝縮砲で撃ち抜いて行く。
そして目的のフィーアエック型航空戦艦に肉薄し……
「転移宙雷および固定アンカー発射ぁ!」
元々宇宙空間で停泊する時に使うためのアンカー、常時バリアーを張るエネルギーが勿体無いのでバリアーの代わりに小規模な隕石を盾代わりに使う物であった。
そのアンカーがフィーアエックに向かって突き進んでいく。 脅威度が転移宙雷よりも低いためか迎撃は後回しにされると同時に
他の宙雷が囮になったのか、無事にバリアーに憚られることなく艦隊に命中した。
そして…
「うりゃー!! お兄ちゃんそっち行ったよ!!」
アンカーが突き刺さったフィーアエックを思い切りケラッフの本体の方に向けて投げた
「全砲門発射! 我が筋肉の錆びとなれ!」
大規模なエネルギー流に飲み込まれ、大穴を多数あけて沈黙するフィーアエック
それと同時に付近にいたパルウムが回避行動をせずに直線的な体当たり攻撃を敢行してきた。
だが、回避行動をしない小型機は、ケラッフにとって単純な鴨撃ちとなっていた。
「温い! これなら楽に敵を倒せるかもしれないな!!」
しかし、これでもまだ全体の30%しか倒せていない。
作者の記憶が正しければ、30%の戦力の喪失で全滅判定となっている。
それでも奴らは最後の一隻となろうと抵抗を続け、どちらかが全滅するまで戦いをやめない。 70%もいるのだ。
そしていくら質で勝っていても、数の暴力と言う物もある。 これから起こるのはそれの典型例だろう。
『ケラッフ! こちらにも大量の敵が来てる! 援護を!』
退路確保部隊はビリューがいれば何とかなるが、逆にいえばビリューさえ倒せば退路確保部隊と囮である輸送艦隊を倒せると言う事である。
そのためか、残存部隊の6割を退路確保部隊に向け、残りを突入部隊の支援を妨害するために進路上に立ち憚る。
「了解、ファナ! 一瞬だけ活路を開くからそこから転移しビリューと合流! ビリュー達の援護をするように!」
「…死なないでね? お兄ちゃん」
「あぁ、妹を置いて死ぬお兄ちゃんがどこにいる! 140cmエネルギー凝縮砲、連続発射!!」
転移に必要な空間邪魔していた敵艦隊をを140cm砲で排除し、一瞬だけ空間が広がる。
後少しすれば短距離転移で又敵が押し寄せるだろう。
「いってきます!」
「いってらっしゃい!! 突入部隊で中破以上の損傷機はすぐに報告し、一時後方に撤退! そのあと火星宙域付近で潜伏し退路確保部隊が来たら合流する事!」
『こちらエル! 第5から第7エンジン損傷、撤退許可を!』
「宜しい! 撤退を許可する」
・
・
・
最終的に、突入部隊で無傷な機は
戦闘機 4機
小型戦機 5機
中型戦機 2機
大型戦機 1機(右スラスター破損)
と明らかに少なくなっていた。
しかし敵はまだ170隻が進路妨害のために残っていた、数だけならば約21倍…! だが、上記している様に敵は弱く、脆いため実質戦力差は3倍ほどだが、その3倍の敵を相手にして勝たなければならないのだ。
「全員、死ぬ覚悟はできているな…! 突撃、敵にパ連軍魂を見せつけてやれ!」
所変わって退路確保部隊
「バカ野郎! あいつ…死ぬ覚悟で突撃してやがる!」
『ビリューさん! 援護にきました!』
「ファナ! あのバカ死ぬつもりだ! すぐに戻るんだ!」
『いえ、戻りません! 私と約束しましたし…それに私の最重要任務はあなた達輸送部隊の護衛です!』
「…そうだったな、それでは俺達の護衛をやってもらおうか」
『了解、敵ルチャルセイスおよびパルウムの撃破に向かいます!』
「ちょっと待ちな」
ルチャルセイスを薙ぎ払う様に170cmエネルギー凝縮砲を照射し続け、20隻ほど破壊し敵陣に大穴をあける。
しかしビリューの本体であるサーノが第一目標なのか、敵側もサーノに集中攻撃をしてくる。
「いててて! 行くなら今だ!」
『大穴をあけてくれてありがとうございます!』
「ふぅ、痛かった…今回は主砲を使うのは駄目だな、巻き込んじまう。 それに打ち漏らしが無い様にするのが、今回の目的だからなぁ」
所変わってケラッフ率いる突入部隊
「オラオラ!! 130cmエネルギー凝縮砲を喰らえ!! それと350cm中転移宙雷全弾発射!」
これで又20隻程が爆発、破損し戦闘力を無くす。 しかしこれはまだいい方であり、他の艦艇は…
「小型戦機アクルギ! 爆沈!」
「こちら中型戦機ハジェスティック、推進機以外破損、これより敵に突入、体当たりを敢行す…パ連に栄光あれ」
と、このように数少なくなっていたがまだ、敵の数は100を超えている…!
対してこちらは
小型戦機 2機
大型戦機 1機(右スラスター破損、130cm砲第1第4砲塔破損、)
被撃墜機
戦闘機 2機
小型戦機 2機
中型戦機 1機
と、殆ど壊滅状態である。
それと同時に、護衛でもあった他の艦艇が少なくなった事によりパルウムが突撃してきて体当たりを敢行し、それをうまく防げずにいる
それでも必死に敵を迎撃している
「うおおおおおあおあ”あ”あ”!!!!」
雄叫びとともに砲身から放たれる幾多の光筋…しかしそれを避けてエネルギー攻撃や体当たりで装甲や武装を次々と引っぺがしていく。
そして、パルウムの20回目の体当たりが成功しそれと同時に機関付近から絶望的な報告が上がる
「損傷度75%超、撤退、修復不能…か。
…ビリュー応答せよ、こちらケラッフ。 損傷率75%超、撤退および自己修復不能、並びに長距離転移不可能………ビリュー、これより敵陣に突入し、敵を集中させる。
そこに向けてお前の主砲を撃つんだ…後の事と妹は頼んだぞ」
『ふざけるなケラッフ! 妹とまだ出会って数日しかたってないだろう!? 妹をなんだと思ってる!! これからお前を助けに…』
「駄目だ! これ以上の被害は許容量を過ぎている! ! …俺を踏み越えて先に進むんだビリューッ! お前は死ぬな!!」
『駄目!! お兄ちゃん!! 私との約束忘れたの!? 絶対に帰ってくるって!!』
「…ありゃ嘘だ、第一、お前なんてもん邪魔になったからそっちに送っただけだ、どこへでもいっちまえ
………聞こえなかったか? う せ ろ」
『……っ!!』
『……ケラッフ、言い過ぎじゃないか。
例えファナを傷つけない為の嘘だとしても…あれは…』
「いやいいんだ、俺は振り返らない、ファナは最初から生かす為に戦ってきた…その分、犠牲も増えたがな
……この記録を受け取ってくれ、ファナが立ち直った時にこれを見せるんだ。」
『…遺言って訳か』
「そうだ…奴ら俺の周りにウジャウジャ嫌がる、俺から技術を抜きとるつもりだ
…ビリュー、撃て、そして行け、パ連の明日が為に」
『解った…元気でな』
「あぁ、お前こそ」
「………主砲、反物質直撃砲発射用意、出力40%で発射
目標、味方旗艦ゴエクロブエス…全艦隊防御態勢」
そう言い、黙々と作業するビリュー
発射するまでの間に艦内にルジオア-43を始めとした戦闘機部隊を収納していく
「エネルギー充填完了…さらばだ、友よ」
そして、サーノから放たれる一つの虹色の光球…それはまるで宝石のような輝きで煌めいていた。
その光球が、ゴエクロブエスに吸い込まれるように飛んで行き……二つ目の太陽を作らんばかりの勢いで光り輝いた
だがそれは一瞬、そのあとに残ったのは大量の残骸と破片のみ…
「…任務成功、これより水星に向かう」
後味の悪い、任務であった事は確かであったこの戦いは、初の反物質兵器が使われた戦いと言う事もあり『木星宙域制圧会戦』と名前を付けられた、パ連史に残る大規模な戦いであった。
「どうもー要塞好きです」
「早速今回死んだケラッフだ、要塞この野郎…」
「お前が死ぬことは確定的に明らかだったろ」
「ブロント語使うなアホ」
「えーいいじゃんかー」
「知らん人からすれば『うわっ何言ってんだこいつバカじゃねーの』なんて言われるぞ」
「それならやめとこう」
「そうしろ。
それと…敵が簡単にやられてた描写についての説明、要塞、お前がするんだ」
「あーい・・・一応設定を踏まえて、敵とパ連の技術力の比較をまとめて見た」
まとめ
パ連
転移関連技術:◎
防御関連技術:◎
攻撃関連技術:◎
生産関連技術:×
無人兵器技術:○
敵
転移関連技術:×
防御関連技術:△
攻撃関連技術:◎
生産関連技術:◎
無人兵器技術:○
「っていう風になってる。」
「敵の転移関連の技術は俺達よりずっと下だ
だから俺達が使用した転移による攻撃も、奴らにとっては嫌な攻撃なんだ」
「…それに、生産技術は駄目駄目と言うのが奇襲攻撃を成功させた理由の一つでもあるね」
「態々ビリューの様な大型艦があるのに、態々他の艦艇を投入する余力はパ連には無いと言う一種の誤認だな」
「これらが敵が油断していた理由で、フルボッコにされた理由です。
それと、パ連側がなぜこんなに生産力が無いかと一言とでいえば『平和ボケ』としか言いようがありません」
「言うな悲しくなる」
「それと、ここで一旦完結させて、休載します」
「は? なんでだ?
と言うか、削除から救済に変えやがったなこの野郎」
「気にしなーい気にしなーい。
そりゃ、初期の話の書きなおしだろ、設定の練り直しだろ、あらすじの検討だろ
……まぁ色々あるんだよ、それに同時進行で書いている『レシピ』があるだろう?
このまま両方書いていたら共倒れとなる可能性は非常に高い。 ならば、林業でもあるように間引く必要もある訳だ。」
「間引くって…」
「間引きといっても、再投稿がある間引きだからな。
だから安心して休みなさい」
「つまり長い休暇ってわけか」
「そうそう・・・あぁ! 話が通じて助かる!! ここにいるのがビリューとファナだったら今頃ぼこぼこにされてたよ!」
「そうか………そんなにしてもらいたいのか……」
「うん…要塞さん、あなたに今日も明日も生きる権利はありません」
「この変態のバカ野郎が、生かしてはおけん!」
「え? ちょ」
「奴の為に祈りをささげる必要はない」
「死んだと思った・・・た、たたた、タワラバッ!?!?」
「あなたの様なバカ、生かしておくと思った?」
と言う訳で、一旦完結させてから休載させていただきます