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21.結末

「こっちに来いスカイ!! 終わりにしよう」

 ワタルの呼びかけにスカイはワタルの前に震える足で躍り出た。ただし、カミゼーロを引き連れながらであった。


「動くな、少しでも動いてみろ、こいつがどうなるかわかるな」

 スカイはカミゼーロの喉元に杖を突きつけていた。


 そのスカイの姿を見てワタルはサウ爺の言葉を思い出す。

『何を倒すべきかはお前が決めろ』

 という言葉を。


 ワタルは見定めた倒すべき相手を。


「スカイ、聞いたぜ、お前元々ただのテイマーなんだろ? 言っちゃ悪いがお前からはちっとも魔力を感じない。そんなお前にその杖から国王代理を一撃で殺せるほどの魔法が出せるのか?」

「ぐっ」

 ワタルは全てを見抜いていた。


「そんなお前が、急に『飴と鞭』なんていう強力な魔法を使えるようになんて、おかしいよな? 来い、カー!」

 ワタルに呼ばれカーがワタルの横に降り立つ。ワタルはカーの肩に手を置いた。その瞬間。ワタルの大剣の刃が黒い光に変化する。ワタルの体も黒い光を帯びる。


「魔法を使えるのはお前じゃない。その杖の方なんだろ?」

 ワタルの狙いに気が付いたスカイは慌ててカミゼーロの喉元から杖を離し、杖を守るように抱きかかえた。


「や、やめろ、これがなきゃ私は……」

 黒い閃光が一直線にスカイに向かう。


 ワタルが放った突きは的確にスカイの持つ杖の紅い球だけを砕いた。

 その瞬間、


「うあ、うあああああ」

 スカイがうめき声をあげた。そして、見る見るうちににスカイの髪が白くなり、顔が、手が、スカイの全身がしわしわとなり年老いていった。


「サウ爺、そういうことかよ」

 サウ爺は言っていた。ワタルに、お前が判断しろと、その上で何も変わらないかもしれぬ、とも。



「な、なにが起きているのですか……?」

「スカイが……どんどん年老いていく」

 あまりの光景にその場にいた誰もが息を呑む。


「聞いたことあります。古の魔法には足りない魔力の代わりに生命エネルギーを吸って発動する魔法があると」

 大魔導士の称号を持つティアが言う。


「じゃあ、あいつは己の命を削りながら魔法を使ってたっていうのか?」

「そうなるが……果たして、本人はそれを知っていたのか?」



「なんだ? 何が起きている?」

 誰よりも当惑していたのはスカイ自身であった。


「はめられたな、スカイ。この杖どこで手に入れた」

 スカイの杖にはワタルの大剣同様火を吐く竜の絵が描かれていた。しかし、その2つには決定的な違いがあった。ワタルの方には人が竜の上に描かれていた。

 一方スカイの杖には、人が竜の下に描かれていた、頭と胴体が離れた状態で。


「そ、それは……」

 スカイは口ごもった。

 ワタルはスカイの老化が止まっていることに気が付く。


「その様子じゃすぐには死なないか。話は後だ……ゲルニカのおっちゃん、魔法も解けた、スカイも動けない、終わりだ。指揮をとってくれ」

 ワタルの声でゲルニカがゆっくりと立ち上がる。


「まずは……国王様大丈夫ですか」

 スカイの傍でへたり込んでいたカミゼーロに駆け寄り安否を確認する。


「私は大丈夫だ。少し力が抜けただけだ、今は私よりも他の者たちのことを」

「はっ。お前らまずは我々が吹っ飛ばした兵たちの治療だ。庭に大規模の病床用テントを用意し、運び込め」


「げっ、マジかよ」「200近くいるのよ」「仕方あるまい、怪我を負わせたのは私たちなのだから」

 キョウヤ、ティア、フレイドは諦めるようにため息を吐く。


「ゲルニカ将軍、スカイの魔法に掛かっていた者は解除直後動けない、人によっては治癒が必要な可能性があります」

「助言ありがとうございます、フブキ姫。では、城内に残っていたものたちのための病床用テントを追加、すぐに状態を確認だ」

「ゲルニカ将軍そちらは私たちに任せてください」

 フブキが申し出た。


「私たちって、俺たちだよな」「ちょっぴり大変かも」

「姫様のご命令とあらば」

 サーザ、チュズス、マンダムはすぐに城へと跳んでいく。


「あいつらは元気だな」

 キョウヤたちには既に空気魔法を使って移動する元気はなかった。


「助けに来てくれたのはありがたいけど、あの3人ほぼ見てだけだしね」

「フブキ姫、感謝いたします」

 ゲルニカは深々と頭を下げた。


「ゲルニカ、いずれにしても人手が足りません。私は城下町へ行き、民衆に協力を求めていきます」

 アイレスがゲルニカに申し出た


「アイレス様、自らですか……」

 姫であるアイレスが行けば他の誰よりも効果があり、民は必ずや協力をしてくれる。しかし、自国の姫を一人で行動させるのには抵抗があった。

ゲルニカは少し迷ったが


「ゲルニカ、今はただ急ぐべきです!」

 というアイレスの言葉に腹を決める。


「わかりました、アイレス様はできるかぎり人を集めてきてください」

「おっちゃん、悪いんだけど俺はここで竜たちの治療にあたっていいか?」

 今度はワタルが申し出た。


「当たり前だ。私がさっき言った兵には竜たちも入っている。責任を持ってお前が治療しろ」

「そうか、そうだよな、わかった」

 ワタルは嬉しそうに笑いながら返事した。


「では皆、作業に取り掛かってくれ」

「ちょっと待ってくれゲルニカの旦那」

 キョウヤがゲルニカの号令に待ったを掛けた。


「あれは放っておいていいのか?」

 キョウヤの言うあれとはスカイの事であった。

 スカイは立ち上がることもできず芋虫のように這いながら竜の庭の外側へと向かっていた。


「あの状態じゃ竜の庭から降りることもできない。放っておいても問題ない」

「ゲス魔法の使い手にふさわしい醜い末路ね。縄で縛るくらいしとく?」

「いいよ、俺はここに残るんだし、ついでに見張っとくよ」

 ワタルたちがそう相談している間にスカイは竜の庭外周の落下防止のため作られた柵に辿り着き、柵にしがみつき立ち上がった。



 スカイはただ逃げるために外へ外へと向かっていたわけではない。スカイは見つけていた己の最大の相棒を。


 竜の庭中央の大木に1羽のバザンが止まっていた。スカイには一目でわかった。そのバザンはスカイが6歳の誕生日からずっと共にしてきたバザンであると。


 スカイは『飴と鞭』の魔法を使える杖を手に入れた時、3羽のバザンに魔法をかけたが、自分とずっと一緒に生きてきたバザンには魔法を掛けなかった。必要ないと感じたからだ。

 故にあのバザンだけは魔法を失った今でも、自分の言うことを聞く、スカイはそう確信していた。


「来い、こっちに来て俺を助けろ」

 スカイがかすれる小さな声で言う。バサンは翼を広げスカイの声に応え飛び立つ準備をした。


「そうだ来るんだ、ハ……ハ…………あれ? お前の名前なんだっけ?」

 スカイは飴と鞭の魔法を手に入れてから4羽のメラコンドル、4匹のホワイトタイガー、4匹のオオバサミガニを支配下に置いた。しかし、名前は付けなかった。


 いつからか、3羽のバザンの名前も呼ばなくなった。飴と鞭で命令を出すときに名前など必要なかったからだ。

 そして、今では唯一の相棒の名前も口に出さなった。結果、20年連れ添った相棒の名が出てこなかった。

 バザンは広げた翼を畳んだ。



 カミゼーロは全ては己の失態が招いたことだと自覚していた。

 ワタルはスカイから話を聞きたがっていた。そのことも知っていた。

 それでも、最愛の妻を目の前で弄ばれたという屈辱を、今、この場で、自らの手で晴らさねばならない。


 カミゼーロの憎悪は抑えられなかった。

 カミゼーロはワタルたちが誰も自身のことを見ていないこと確認すると、よろよろと立ち上がりアイレスを殺すためにと帯同を許されていた剣を抜く。


 そしカミゼーロは一直線に走りだす、スカイに向かって。

「死ね―――――、スカイ!!!」

 カミゼーロの絶叫でワタルたちがカミゼーロの愚行に気づく。しかし、もう遅い。


 年老いたスカイにカミゼーロの剣を躱す術はなかった。

 カミゼーロの剣がスカイを突き刺す、誰もがそう思った瞬間、カミゼーロの足がもつれ、剣はスカイの脇をかすめていった。


 魔法の後遺症でうまく動けなかったのだ。


 カミゼーロは止まることもできず、そのままスカイにぶつかりスカイを巻き込んで……

「うあああああああ」

 竜の庭から落下した。


 ふたりは竜の庭の外周階段に一度落ちるが、勢いが止まらず階段の柵を突き破り、地上へと落下した。


「おじ様!」

「国王!」

 カミゼーロの耳にはアイレスとゲルニカの声は届いていなかった。前のめりに落下したカミゼーロは外周階段に落下した時に頭部を強く打ち、即死していた。


 一方のスカイはカミゼーロにしがみついた結果、二度ともカミゼーロがクッションとなり老体でありながらなんとか死なずにいた。


 助かった。スカイはそう思った、その直後、仰向けに倒れるスカイにひとりの女性が近づいてきた。

 スカイは現れた美しい女性の名を呟く。


「フ……フローゼ」

 現れたのは王妃フローゼであった。


 フローゼは何も言わず倒れるスカイの胸に、スカイに背を向けるよう馬乗りになった。

「フ……フローゼ、な、なにを?」

 フローゼは両手を振り上げた。その手には護身用ナイフが握られていた。そして、フローゼは迷いもなくスカイの股間目掛けて振り下ろした。


「ぐあああ」

 スカイが苦悶の声を上げる。


「こんなものに! こんなものに!」

 フローゼはそう言いながら何度も何度もスカイの股間にナイフを突き刺した。

 何十回も突き刺した後フローゼはようやく動きを止める。スカイはピクリとも動かなくなっていた。


 返り血を浴び、真っ赤になった己の手を見てフローゼは満足げに笑った。そして、自身の持つナイフで自身の喉を掻き切った。


 満月の下、3つの死体が照らされていた。


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