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19/22

19.竜VS竜

 満月の下、竜の庭では、一方的な戦闘が続いていた。


「……こいつら化け物か」

 スカイは四騎将をそう評した。それは決して四騎将が化け物じみた強さということではない。


 四騎将は最初の一撃でボロボロだった。それでも4人は立ち上がっては攻撃を防ごうとし、反撃を試み、そしてまた吹き飛ばされる。スカイがもう立ち上がれまい、そう思っても4人は立ち上がり再び戦いを始める。それを何度も繰返していた。


 そして、今もふらふらになりながらも武器を手に持ち立ち上がった。


「どうした、ゴーロ。もう終わりか?」

 瀕死状態のゲルニカの気迫にゴーロは僅かに後ずさった。ゴーロだけではない言葉すら発せなくなっているティア、キョウヤ、フレイドに竜たちは委縮していた。


「糞っ、お前らいつまでも遊んでるんじゃない!! 咆哮でそいつらを殺せ!!」

 咆哮とは本来の意味は吠えたけることだが、竜にとっては意味が違う。竜にとっての咆哮は喉元に魔力をため己の属性を込めた最大出力の魔法を放つことである。

 4頭が一斉に魔力をため込み始めた。


「うむ、これはまずい」

 ゲルニカが呟いた。ティアたちも同じことを思ったが口に出す気力もなかった。


「皆避けて!!」

 アイレスがそう叫ぶもゲルニカは剣で受け止めようとし、他の3人は動けなかった。

 咆哮が放たれたその瞬間、上空から巨大な2つの咆哮飛んできて、4つの咆哮を打ち消した。


「なんだ!?」

 スカイが驚愕する。


「ミラ! ヒドゥン!」

 上空を見た、アイレスが嬉しそうに叫ぶ。

 何が起きたか理解できないキョウヤの間に一頭の竜と竜に乗った男が飛んできた。


「おいおい、なんでお前がここにいる?」

「いいから乗れ! 兄弟」

 サーザがキョウヤの腕を引っ張り上げ、サミダレに乗せた。


「さあ、ティアさん、こちらに」

「うっ」

 ティアの嫌そうな顔を無視してマンダムがティアを抱きかかえてルーズに乗せた。


「お兄様、お兄様―――」

「…………」

 フレイドが複雑そうな表情でチュズスの伸ばした手を取り、モグルに飛び乗った。


 ゲルニカの前にはゴーロに立ちはだかるようヒドゥンが降り立った。

「……そうか俺は自力で逃げろということか」

 ゲルニカは自身の救援には誰も来ないということを理解すると、せっせと走り始めた。


 アイレスの目の前にはアイレスに背を向け、ミラが降り立った。ミラはすぐにキラキラと輝くバリアを張った。

「ミラ……来てくれたのね、ありがとう」

 アイレスはミラの大きな足に寄り添いながら言った。


「アイレス!!」

 上から懐かしい声がした。そこにはソニンそっくりの竜に乗った薄紫色の髪をした可憐な少女がいた。


「フ、フブキ?」

「そうよ、フブキよ! なんで疑問形なのよ?」


「だって……すっかり大人っぽくなってるから」

 アイレスとフブキの4年ぶりの再会であった。


「あ、当たり前でしょ」

 そうまごまごしている間に、ミラの張ったバリアの一部が解かれ、その隙間から、フレイドとチュズスモグルが、ティアとマンダムとルーズが、そしてキョウヤとサーザ、サミダレがミラの後ろに降り立った。


「皆さん、大丈夫ですか!?」

「フ、フブキ姫? ……こんな危ない場所この糞男だけで十分なのに……」

「く、糞男……?」

 マンダムは青ざめながら呟いた。


「北の姫様までお出ましとは驚いた。おれはてっきり海馬鹿の独断かと」

「誰が海馬鹿だ、この山馬鹿が」


「フブキ姫……いつも妹がお世話になっています」

「お兄様、今言うことじゃないよ」

 チュズスはそう言いながら少し嬉しそうであった。


 そこから6人は好き勝手喋り出した。アイレスとフブキは感じる、カオスだと。

「おいお前ら、久しぶりの再会ではしゃぐ気持ちはわかるが状況を考えろ」

「「「は、はしゃいでなんて……」」」

 ティアたち3人は弱弱しい声で反論した。


「アイレス様、フブキ様、姫であるお二人に頼むのは忍びないがあの3人に回復魔法を」

「「はい」」

 アイレスとフブキはすぐに3人に回復魔法をかけ始めた。


「ゲルニカ、あなたも」

「私には必要ありません、そいつら若輩者とは頑丈さが違いますから」

 ゲルニカの物言いに「チッ」とキョウヤが舌打ちした。ティアとフレイドもキョウヤと同じ気持ちらしく不満そうな顔であった。


「私はヒドゥンの援護に行きます。マンダム、サーザ、チュズス私についてこい」

「やれやれ他国の兵にその言い方、でも僕はそういうとろ好きですよ」

「いいね、行きましょうか、ゲルニカの旦那」

「ゲルニカさん、兄がいつもお世話になっています」

 ゲルニカとマンダム達が前線に行こうとした、しかし、ミラは光の壁を解除しようとしなかった。


「ミラ、ここを開けてくれ」

 ミラは首を横に振った


「なぜだ!? ミラ! ヒドゥンひとりに戦わせる気か?」

 今、ヒドゥンはたった一人でゴーロたちと戦っている。4対1、ヒドゥンが不利なのは明らかであった。事実、今もヒドゥンが一方的に攻撃を受けていた。

 ミラは短く「ミーララ」と鳴いた。


「我々は必要ない……そう言いたいのか?」

 ミラは首を縦に振った。


「そう言うけどよ、どう見てもボコボコだぜ」

「多勢に無勢なの」

「美しくない光景だね」

 ゲルニカは少し考えてから口を開く。


「ヒドゥンは毒の竜だ。あいつの毒は強力と聞いている。敵も味方も関係なく蝕む強力な毒だ。恐らくは今その毒を放つ機を伺っているのだ。今、我々が出ればその機を逃す可能性がある、ミラはそう考えたのだろう」

 ゲルニカの解説を聞き、戦闘経験豊富な賢者たちは4頭の竜がヒドゥンを圧倒しながらもなにかを警戒し、すぐに距離を取れるよう戦っていることに気が付いた。


「ゲルニカ、それは違うわ」

「ア、アイレス様、それはどういうことですか?」


「……きっとヒドゥンは毒を使う気がないの」

「なっ、それはなぜ?」


「毒を使えば確かにヒドゥンが勝つ可能性が高いです。でもその場合ゴーロ、マール、ヴォルカオ、ヴィーネが死ぬことになる、だから、ヒドゥンは毒を使わずに戦うつもりなのだと思います。そうよね? ミラ」

 ミラはコクリと頷いた。


「では、尚更、我々が加勢すべきでは?」

「ううん、ヒドゥンとミラは待ってるいるのよ。フブキ、一緒に来てたんでしょ? ワタルも」

 フブキは少し驚いてから、首を縦に振る。


「うん、でも途中でスカイのバザンの群れがいて、それでワタルはバザンと戦い始めちゃって……」

「ここは任せて先に行けをやっちゃったのね、さすがワタル君」

 ティアはクスクス笑った。


「ヒドゥンはさっきまでのあなたたちと同じように、ワタルが来るまで耐える覚悟のようです」

 アイレスの言葉に同意するようにミラが鳴いた。


「ぐぬぬ、ずるいぞヒドゥン! 私にも戦わせろ!」

 戦いの最中でありながらヒドゥンは首を横にぶるぶると振るった。

 ゲルニカは自身の怒りを抑えるように大きく一度深呼吸してから、その場にドカッと座り込んだ。


「もう好きにしろ!! だが、お前が倒れたら次は私だ。安心してぶっ倒れろ!」

 ゲルニカの叫びを聞いた瞬間、ヒドゥンは天を向き「ドゥーーーー」と大声で鳴いた。


 その声を聞いてマンダム達もその場に座り込んだ。

「その覚悟に付き合うよ、僕は」

「あの小僧に姫たちを守れお願いされたのは同じなんだがな、仕方ない譲ってやるよ」

「わかった我慢する」

 結果、皆でヒドゥンを見守ることとなった。



 スカイは何度も杖を振り杖の先の山を赤く光らせていた。

「糞ッ! なぜだ? なぜ効かない?」

 ミラたちが現れてからスカイは何度も現れた竜たちも自分の手下にしようと何度も魔法を使っていた。しかし、、一向に竜たちに魔法の効力は現れなかった。それもそのはずである、竜たちは魔法を反射するミラの羽を持っている。ミラの羽一枚では反射する効果はさすがにないが、洗脳や幻惑など対象者の脳に関するような魔法は持っているだけで打ち消すことができる。しかし、そんなことスカイは知る由もなかった。


 スカイは焦っていた。飴と鞭を手に入れて以来スカイは自分が無敵だと思っていた。魔法に掛からない人間がいても、それより遥かに強い魔獣たちを手駒にできてきたからだ。


 しかし、ここに来て魔法に抗う竜、そして魔法に掛からない竜たちが現れその自信が揺らいでいた。

「糞っ!! おい!なんであの竜どもには飴と鞭が効かない!?」

「し、知りません」

 なぜか問われたカミゼーロが当然のことを答えた。苛立ちを抑えられないスカイはカミゼーロを蹴り飛ばした。



 ヒドゥンは4頭の竜を相手に戦い続けた、自身の最大の力、毒を使わず。数分後には明らかに疲弊し反撃ができなくなり、殴られ、嬲られ続けた。それでも立ち向かい続けた。



 激闘の末、ヒドゥンがとうとう、その場に倒れた。

「「ヒドゥン!」」


 心配そうに叫ぶアイレスとフブキをよそにティアたちが呟く。

「もう、遅いのよ」

「遅すぎんだよ」

「全くだ」


 ゲルニカは立ち上がり叫ぶ。

「大遅刻だぞ!! ワタル!」


 次の瞬間、ヒドゥンとヴォルカオたちの間に黒い光が落ちてきた。

「悪い、遅れた!!」

 落ちてきたワタルは叫んだ。


「「ワタル!!」」

 アイレスとフブキの歓喜の声をあげた。四騎将は笑っていた。


 ワタルの登場にマールたちが委縮しているのは誰の目からも明かであった。

 ワタルはそんなヴィーネ達を無視してヒドゥン近寄った。


「ヒドゥン、ありがとうな、休んでろ」

 ワタルはそういうと大型竜であるヒドゥンの腹に潜り込みその巨体を軽々と持ち上げた。


「は?」

 ドラゴノルテ側の人間たちが思わず声を出して驚く。ティアとキョウヤ、フレイドも声には出さないが驚いていた。

 ワタルはヒドゥンを担いでミラのバリアの中に入り優しくヒドゥンを地面に寝かせた。


「ここから先は俺に任せろ」

 ワタルのヒドゥンの鼻を撫でた。


「ミラもありがとな」

 ワタルはミラの翼をポンっと叩いた。

 それから倒れているソニンとアイレスを見た。


「アイレス、ソニン……遅くなってごめん」

「ううん、いいの。ありがとう、来てくれて」


「ゲルニカたちも無事でよかった。フブキたちもありがとう……俺、ちょっとあいつらと喧嘩してくる」

 ワタルはそれだけ言い残して、スカイに支配された4頭の竜の所へ向かう。


 マンダム、サーザ、チュズスが加勢しようとワタルの後に続こうとしたがゲルニカが手で制した。

 フブキたちは戸惑った。


「アイレス、ワタルひとりに行かせる気?」

 フブキがアイレスに問う。フブキはたった今竜の強さを目の当たりにした。その力は想像を超えていた。その竜4頭にひとりで立ち向かうのは無謀にしか見えなかった。


「大丈夫、ワタルなら」

 アイレスは迷いもなく答えた。


「なあなあ、六、じゃなかった四騎将の皆さんよ、あの小僧はそんなにも強いのか」

 サーザが問う。


「どうだかな……だが、うちにいる竜は全員ワタルに従ってきた、あのスカイの糞みたいな魔法もなく。なんでかわかるか?」

 サーザは答えがわからず、返答に窮した。


「あはは、懐かしいわね。ワタル君と、マールたちが来た時、マールたちが私たちの言うことなんかなんにも聞いてくれなかった。ワタル君にどうすればいいのか聞いたら、認められればいいって。答えたわ。じゃあ、どうやったら認めてもらえるか来たらいい笑顔で言ってたわね」


「喧嘩で勝てか……結局、我々は喧嘩じゃ誰も一度も勝てなかったな。別の形で認めてもらったが」


「なに? わたしは一度勝ったぞ、ゴーロが風邪をひいていた時であったが」

 ゲルニカはがははと笑う。


 ドラゴノルテの面々は呆気にとられていた。


「そういうことよ、フブキ。ワタルは竜よりも強い」

「で、でも4対1よ」


「それでもきっと大丈夫。だってワタルは竜殺しの一族の末裔だから」

 アイレスははっきりそう言い切った。


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