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15/22

15.残ってた竜と新たな竜

 時間は遡り、竜の谷、サウ爺の寝床。


「スカイってあのスカイの事か?」

 ワタルがそうフブキに問いただすも


「やっぱりそっちに行ってたのね」

 とフブキは答えにならないことを呟いた。


「おいおい、どういうことだフブキ、ちゃんと説明してくれ」

「わかってるわよ、いまから話すわよ」

 ふたりとも焦りからか荒く大きな声になっていた。


「落ち着くのだ二人とも」

 サウ爺のそれを上回る低く響き渡る声に二人は口を閉じた。


「どうやら本当に時間がないようだ話は道中でしよう」

 サウ爺は爪の先をワタルとフブキに向けると怪しく光った、その光は魔法を使った時の光のそれであった。


「なんの魔法だ?」

「これでしばらくの間は離れていても我々3人は互いの声が届く。これで道ながらに話をできるはずだ、行け」

「わかった、サウ爺。行くぞフブキ」

 ワタルはフブキの手を握り出口へと走り出した。


「ちょ、ちょっと!」

「なんだよ」

「手! その、走りにくい」

 そう言うフブキの顔は赤くなっていた。


「あー、そうか、悪い」

 ワタルはパッとフブキの手を放した。


「ワタル、フブキ姫聞こえるな?」

 脳内に響くサウ爺の声であった。


「ああ、聞こえるよサウ爺」

「わ、私も大丈夫です」

 全力疾走しながら喋るのはフブキには辛そうであった。


「サウ爺、ミラとヒドゥン連れてくぞ、いいな?」

「勿論じゃ、他の6頭も連れて行ってよいぞ」


「6頭? そんな増えたのか……でも、そうしたいけど、俺そいつらとまだ友達じゃない」

「そこはお前の腕の見せどころじゃ」

 ワタルは眉をしかめる。


「無理だろ。時間がなさすぎる」

「どういうこと?」

 フブキが問いかける。


「俺がここを出て行ったとき、ここに残った竜はミラとヒドゥン、それにサウ爺の3頭だけなんだ。だからその他の6頭は俺も知らないんだ」

「そうなんだ。……それで、それの何が問題なの?」

 最初はワタルにはフブキの言ってる意味が分からなかったがすぐにワタルはフブキが勘違いしていることに気づく。


「フブキ、もしかして俺はどんな竜でも従えることができると思ってる?」

「えっ? 違うの? ドラゴンマスターっていうからそういうものかと……」


「そうじゃない、俺は……なんだっけ? 魔獣を操る魔法?」

「テイム?」


「そう、それ。そういう類のこと一切していないから」

「じゃあ、どうやって……」

 ふたりが話しているうちに、外に出た。すぐにワタルは叫んだ。


「ミラーーー、ヒドゥン、来てくれ」

 ワタルの呼びかけに応え、すぐに大きな竜が二人の目の前に降り立った。

 降り立った竜は鏡幻竜のミラと紫毒竜のヒドゥン、共に大型の飛竜である。


「わっ、竜神様ほどではないけど大きい。これが大型……それに美し」

 そこまで言いかけてワタルがフブキの視界を腕で遮った。


「見るな、それから吸うな」

「み、見るな? それに吸うな? どういうことよ?」


「今一瞬見たならわかるだろ? ミラは神秘的に美しい、でもそれはミラの魔力にも関係してる。魔力の弱い人間が見たら、一瞬で心が奪われる」

「魔力が弱い……」

 フブキはなにか言いたそうな顔をした。


「どうかしたか?」

「いや、あとで話す。それで吸うなっていうのは?」


「ヒドゥンは紫毒竜、あらゆる毒をあらゆる場所から出せる、というか吐く息も毒になる」

「息も!? 危険じゃない!」


「一応弱い毒にするよう努力はしてるみたいだけど。それでも毒は毒だ。そういう事情でこの2頭は竜の谷に残ったんだ、2頭とも人間が好きなのに」

「そ、それはかわいそうね」

 ワタルがミラとヒドゥンに近寄ると、二頭は頭をワタルに向けた。ワタルは二頭の頭を優しく撫でた。ミラとヒドゥンは嬉しそうに鳴き声を上げた。


「ミラ、ヒドゥン頼みがある。俺と一緒にドラゴスール城まで来てくれ。お前たちの力が必要だ」

 ミラとヒドゥンは翼を大きく開くと大きな声で鳴いた。


「きゃっ」

 二頭が翼を開いた結果生まれた風に圧されフブキは尻もちを着いた。


「ありがとう。でも、困ったな。ミラとヒドゥンにはフブキが乗るのは無理だ……いや、目隠しをすればいけるか」

 そんなことを呟いてる後ろから楽しそうな声がした。


「わっ、くすぐったい、もうやめてよ」

 振り返るとフブキが二頭の竜とじゃれ合っていた。


「君はさっき助けてくれた子よね? ありがとう」

 フブキが抱きしめると黒い小さな竜は「カー」と嬉しそうに鳴いた。


「君は初めましてだよね? なんでこんなにわたしに懐いてくれるの? 嬉しいけど」

 フブキが抱きしめると銀色の小さな竜は嬉しそうに「キュルル」と鳴いた。


「……ソニン? じゃないよな」

 ワタルは思わず呟いた。


「似てるじゃろ?」

 サウ爺の声だ。


「うん、めっちゃ似てる」

「ソニンってアイレスの竜? そっか、こんな感じなんだ」


「その二頭はソニンの弟妹じゃよ」

「マジで? こっちの黒い方もか? 名前はなんて言うんだ?」


「黒光竜のカーと銀音竜のサウンじゃ」

「カーとサウンか、よろしくな」


「フブキ姫を助けたのはカーじゃが、フブキの姫の声を聞いて危機を察知したのはサウンなんじゃよ」

「そうなの? ありがとうね、サウン」

 フブキはサウンの頭を撫でた。サウンは嬉しそうに頭をフブキに摺り寄せた。


「本当になんでこの子こんな私によくしてくれるの?」

「きっとフブキの声が安らぐんだよ」


「声?」

「ああ、音を司る竜、とても音に敏感だからな、安らぐ音の持ち主に会えて嬉しいんだろ」

「ふーん、なるほどね」


「その2頭なら問題なさそうじゃな。ワタル、フブキ姫、その二頭に乗って今すぐ城に向かいなさい」

「いいのか? カー」「いいの? サウン」

 カーとサウンは各々大きな声で鳴いた。


「別々の竜に乗るとなるとフブキ大丈夫か? 空気魔法は使える?」

「空気魔法使えるけど、なんで?」

「竜に乗るために必要なんだよ」

 ワタルは簡単に空気魔法を使いどう竜に乗るかレクチャーした。


「なるほど、だからお父様は幼いころから空気魔法を学ばせていたのね……ちょっと待って、ワタル、あんたさっきこの方法を知らない私を乗せながらあんな無茶な飛び方したわけ?」

「……いや、それは……俺じゃなくて、カーが……」

 責任を押し付けられたカーは「クー」と困ったように鳴いた。


「まあ、いいわ。それより大事なことを忘れてたんだけど」

「なんだ?」


「森に私の部下を置いて来てるのよ。どうにか一緒に連れてけないかしら?」

「……必要か?」

 ワタルの本音であった。


「そっちで言う将軍クラスの人間よ」

「戦力にはなるってことか……人数は?」


「3人よ」

「仕方ない、やるだけやってみるか。サウ爺、残りの4頭の名前は?」


「ルーズ、サミダレ、モグルそれにシャウじゃ」

「おしっ、ルーズ、サミダレ、モグル、シャウ、来てくれ」

 ワタルがそう叫ぶとすぐに3頭の竜がワタルの前に降り立った。それぞれオレンジ色の小型竜、水色の小型竜、茶色の小型竜であった。

 3頭はワタルを見ると後ずさりし、ミラとヒドゥンの後ろに隠れた。


「これが本来の対応なのね。あれ、残りの一頭は」

「あそこだ」

 ワタルは上を指さした。その先には枝葉の陰に隠れ、比較的低い枝に止まる黒い小型竜がいた。


「下りてきてもくれないのね」

 フブキは呆れたように言った。


「初対面だからそんなもんだろ。お前もこっち来てくれよ」

 しかし、黒い竜はぷいっとそっぽを向いてしまった。


「あいつは難しそうだな」

「そうじゃな。シャウは諦めろ。他の3頭の方がいい」

 ミラとヒドゥンの後ろに隠れていた3頭は二頭に押し出される形でワタルの前に出された。


「それぞれ右から橙灯竜のルーズ、水雨竜のサミダレ、茶土竜のモグル。3頭ともミラとヒドゥンの子供じゃ」

 ワタルは目を丸くした。


「マジかよ、ミラ、ヒドゥンいつの間に!?」

 ミラとヒドゥンはどこか照れ臭そうであった。


「っと、喜んでる場合じゃない。ルーズ、サミダレ、モグル、会ったばかりで悪いんだけど手伝ってくれないか。俺の大事な人がピンチかもしれないんだ」

 3頭は困ったように両親を見た。それから5頭で何やら話し合うように鳴いていた。


「竜同士って話せるの?」

 その光景を見たフブキが尋ねた。


「ああ、鳴き声は人間で言う表情の一部みたいなもので実際は、魔法でちゃんとコミュニケーション取れてるらしいよ。それでも人間と言語化したコミュニケーションを取れるのはサウ爺だけらしいけど」

「ふーん、でもワタルは竜の言ってることわかるんでしょ」


「何言ってんだ、そんなの無理に決まってるだろ」

 そう返すワタルをフブキは呆れた顔で見た。フブキはしっかりと覚えている。竜の谷来る直前、カーの言ってることがまるでわかるかのように話していたということを。


「なんだよ?」

「別に」

 そうこうしているうちに竜家族の話し合いが終ったらしく、3頭がワタルの間に並んだ。


「いいのか?」

 3頭は頷いた。


「ありがとうな」

 ワタルは3頭に抱き着いた。その姿はあまりよく知らない親戚のおじさんに抱き着かれ困る子供のようであった。


「よし、じゃあ行くぞ」「ええ」

 ワタルはカーに、フブキはサウンに飛び乗った。


「おっと、その前に」

 ワタルは上を見上げた。


「今度はゆっくり話そうぜ、シャウ」

 シャウはまたそっぽを向くだけだった。


「気難しい奴だな……よし、行くぞ、カー」

 ワタルの合図とともにカーが飛び立つ。


「サウン、お願い」

 それを追ってサウンも飛び立つ。次いで、ルーズ、サミダレ、モグルも飛び立つ。そして最後にミラとヒドゥンが我が子を見守りながら飛び立った。


「それでフブキの部下たちはどこにいるんだ?」

「森の入り口で待ってもらってるわ」

「じゃあこっちか」

 ワタルが右に旋回しようとした。


「逆よ。森の入り口って言っても、うちの方の入り口よ」

 ワタルは左に旋回する。そして、少し考える。


「なあ、フブキ」

「なによ、ドラゴノルテで何が起きたのかの話なら3人を拾ってからよ」

「それはいいんだけど……フブキ道に迷ってた?」

 フブキの顔が一瞬で赤くなった。


「な、なんのことかしら?」

「いやだってさ、俺がフブキを助けた場所から考えると、どう考えても行きすぎでしょ」

 フブキを助けた場所とアイレスを助けた場所は同じ場所である。つまりはドラゴノルテ側から竜の谷を目指していた場合、完全に竜の谷を通り過ぎたところであった。


「そ、そうかしら、あははは」

 フブキは笑って誤魔化した。


 ワタルは思う、俺と出会わなければ一生竜の谷に辿り着くことはできなかったのでは? と。そもそも死んでいた可能性もあるのだが。


「あっ、いたいた、あれよ私の部下たち」

 フブキが指さす先に男が二人、女が一人いた。


 男のひとりは金髪のサラサラヘアで真っ白な服を着て鏡を見ながら何度も決め顔をしていた。

 もう一人の男は赤いツンツン髪、上半身裸で、顔と体のあちこちに刺青が彫られていた。

 唯一の女は、長い黒髪で、後の髪は足首まで伸び、前髪は目を完全に隠すほどに伸びていた。服は真っ黒な修道服でワタルには負のオーラが見えるような気がした。


「賢者? あいつらが?」

「単なる役職名よ、気にしないで」

 ワタルたちは3人の前に降り立った。


 3人は最初驚いた様子で、身構えたがフブキの存在に気が付くと安堵の顔を見せた。

「おお麗しきフブキ姫、御無事でしたか」

「しかし、なんですかこの竜たち、それとその坊主?」

「姫、無事、良かった」

 思い思いに口を開いた。


「聞きたいことは色々あるだろうけど、とりあえず私の話を聞いて。私たちの予想通りスカイがドラゴスールに潜入してるわ、そういうことよね? ワタル」

「ああ、スカイって名乗る奴がこっちに現れた」

 まだ詳細を互いに話していないのでそう答えるしかなかった。


「読み通りですね、では消しに行きましょう」

「あのゴミ、うちの次はドラゴスールかよ、ぶっ殺す」

「スカイ、殺す」

 各々物騒な言葉を口走った。


「よって今から、この竜たちとワタルの協力の下でドラゴスールの救援に向かうわ」

「……それはわかりましたがそのワタルという少年はなんですか?」


「彼はドラゴスール王国の竜使いよ。たまたま竜の谷にいたから色々手伝ってもらったのよ」

 手伝ったか? と思いながらも、ワタルは「どうも」と挨拶しといた。


「おー竜使い、そうだよな、あんだけの竜を急に従えてるんだもんな、そりゃいるよな竜使い。じゃあ今ここにいる竜もお前の子分ってことか?」

「いや子分ではないけど、あー説明が面倒だな。とりあえず時間がないんだ来るっていうなら早く竜に乗ってくれ」

「そうなのよ、今は何も言わず、彼らのどれかに乗って」

 フブキはルーズ、サミダレ、モグルを指さした。


 3人は一度顔を見合わせたがすぐに動き出した。

「フブキ姫がそう言うなら仕方ありません、私はこのオレンジの竜に」

「じゃあ俺はこの水色の奴に」

「黒の子が良かった」

 と3人各々選んだ竜に近づいた。


「おい、あんたらちょっと待て。竜に敬意を払えよ、じゃなきゃ振り落とされるぞ。それぞれ名前はルーズ、サミダレ、モグルな」

 3人はピタリ立ち止まりワタルを見た。


「安心したまえ、レディーに敬意を払うのは当然だ。よろしくお願いしますルーズ嬢」

「俺は人間より獣との方が気が合うから気にするな。よろしく頼むぜ相棒、サミダレ」

「私、茶色も割と好きよ、暗めの色だから。よろしくねモグル」

 変な奴らだ。しかし、ワタル評ではあるが竜たちからの印象は悪くなかった。


「フブキ、賢者ってこっちで言う将軍なんだよな」

「そうね、一番近いわね」


「……お前の国大丈夫?」

「放っておいて」

 ワタルたちはフブキの部下3人を加えドラゴスール城に向けて飛び立った。


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