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11/22

11.進軍道中

 時刻は午後4時、少しばかり陽が傾き赤くなり始めていた。


 ゲルニカたちの各軍がドラゴスール城を出立し6時間が経過した。


 いずれの軍も隊を三つに分けた。飛竜が先導する先遣隊、最速で目的地に着くために速さが重視された少数精鋭の部隊である。


 それに続くのが陸竜と騎馬隊で構成される本体。ゲルニカたち将軍はここで指揮を執る。


 最後に続くのがそのほとんどが歩兵で構成されたその名の通りの歩兵部隊である。数だけで言えば最も多く主力と呼べる存在だが、移動距離が長くなると必然的に最後尾となる部隊である。


 キョウヤは軍の本体を率いてくれている陸竜である褐筋竜マヤカナの背中の上で寝転がっていた。


 キョウヤの傍に置かれていた鳥籠の中のテレドリがピーピー鳴いた。


 テレドリは鳥型の小さな魔獣だ。テレドリ同士は魔法でどんなに距離が離れていても互いに交信している。ただし交信の内容は不明だ。そのテレドリに通信用魔具を取り付けることで、通話が可能となる。通話したい相手が持つテレドリの羽をまぐにかざすことで交信が開始する。この時に必ずテレドリが鳴くのは人間の手によるものではないかと言われている。

 キョウヤは魔具に触れ通話を開始した。


「あー、こちらキョウヤ。誰だ?」

「こちら先遣隊のロシー」

 ロシー。キョウヤの軍に3人いる副長のひとりである。副長はキョウヤの軍で二番目の階級の者に与えられる称号である。今回は先遣隊の隊長を任されていた。


「おう、どうしたロシー、なんかあったか?」

「いえ何も。単なる定時連絡です。このまま行けば夕方6時くらいにはセチ城に着きます」

 セチ城はトット王国との国境にあり、トットからの防衛のために建てられた城である。


「そうか」

 キョウヤはそっけなく返事した。


「なんかテンション低いですね頭」

 キョウヤの軍の中でもキョウヤが山賊をしていた頃からの部下はキョウヤのことを今でも頭と呼ぶ。頭という呼び方は国軍内ではふさわしい物とは思えなかったが、そのことを前国王クローセは咎めずキョウヤたちらしいと笑って許していたため今でもこの呼び方に変わりはない。


「そりゃそうだろ、急に国境の田舎町まで行け言われて誰が喜ぶ?」


「そりゃそうっすけど、田舎と言ってもセチは大きな街ですから十分楽しめますよ」

「そうなんだけどよ……」

 それっきりキョウヤは黙ってしまった。


「そうなんだけど、なんすか?」

「いや、なんでもねえよ」

 キョウヤは魔具を操作し通話を終了させた。そして、キョウヤと一緒にマヤカナに乗っている副将サリーを呼んだ。



 一方その頃、ティアの軍はスネーカとの国境にあるウーネ城に向かっていた。

 ティアは陸竜の一頭、緑草竜リーフィの背中で体育座りしていた。


「ティア、なに黄昏てるの?」

「黄昏てなんかいません! というかなんで黄昏てるって思ったんですか?」

「体育座りしながら空見てたらそれしかないでしょ! どうした失恋でもしたか? お姉さんに話してごらん」


 ティアをおちょくるのは魔法師範代のひとり、トニカであった。トニカはティアよりも十以上年上(実年齢は非公表)で王国軍の入隊もティアより早かったため、先輩後輩の関係であった。そのため、ティアが将軍の地位についてもトニカは上司であるティアに対しため口、ティアは部下であるトニカに対し敬語という関係が確立されていた。


「そんなんじゃないですよ。だいたい失恋しようにも恋する相手がいませんよ」

「何言ってるの、男なんてそこら中にいるじゃない」


「……確かに男はたくさんいますけど、私が将軍だからかそういう雰囲気にならないんですよ。……というか完全にビビってる」

 ティアは空を見上げて黄昏た。


「あはは、それもそうか。だったら同じ将軍なら問題ないじゃん」

「はあ?」

 ティアは汚物でも見るような目をした。


「あれ? そんなに嫌?」

「嫌に決まってるじゃないですか!!」


「えー、そうかな? 私から見たら皆良い男だけど」

「はあ? どこがですか?」


「どこがって……そうね、あんたに身の回りの男がどれだけ魅力的か教えてあげるわ」

「いえ、結構です」

 拒絶するティアを無視してトニカは語り始める。


「まずゲルニカ将軍、なんといってもダンディ! あの髭は大人の男以外には似合わない代物よ。それなのに熱い、熱血! そう熱血ダンディ、大人の男の魅力で溢れてるのよ」

「ダンディだなんて思ったことないですけど、とりあえずゲルニカさんは妻子持ちですよ」


「そうなのよね。本当に残念、年齢的にも一番気になってたのに」

「年齢的にも?」

 ティアの問いかけを無視してトニカは話を続ける。


「次にフレイド将軍。物静かでクールよね、その上王国きっての智将。見た目も色白のイケメン。あんたは知らないかもしれないけどファンも多いのよ」

「はあ? 本当ですか? 全く理解できないです。あの人はただただ細かい陰険な根暗ですよ」


「細かいって言うのはよく気が回るってことじゃない。陰険で根暗って言うのはティアの偏見よ」

「いや、皆さんの方が誤解してるんだと思いますよ」

 ティアの抗議の声など気にせずトニカは続ける。


「最後にキョウヤ将軍。元山賊だけあって、やっぱちょっと悪。口も悪けりゃ態度も悪い。でもなぜか悪い男に魅力を感じる女が多いのも事実。そして時折見せる優しさがたまらない。ああ見えて仲間思いなのもプラスね」

「いやー、ないっすよ。あいつだけは絶対にないっすよ。あいつはただの性格の悪い元賊ですよ」


「はー、わかってないわ。こんなに魅力的な男性に囲まれておきながら恋する相手も糞もいないとか、本当贅沢ね」

「いえ、糞とは言ってません。それよりもトニカさんの恋愛事情はどうなんですか? あの二人がそんなに魅力的だって言うならトニカさんがアプローチすればいいじゃないですか」

 するとトニカはウフフと顔を引き攣らせながら笑った。その表情でティアは察した。


「も、もしかしてもう既に……」

「それ以上は言わないで……それよりも、将軍と言えばもうひとりいたわね。新将軍のスカイ将軍。見た目は知的メガネで優しそうなオーラ出てるしで私的には合格なんだけど、性格の方はまだちょっとしか話せてないからよくわからないのよね。ティアなら私よりも話す機会あったでしょ? ティアから見てスカイ将軍はどうなの?」


「どうって…………あれは論外ですよ」

 ティアはそう答えると空を見上げ三度黄昏た。



「フレイド将軍、フレイド将軍」

 自信を呼ぶ声に気が付きフレイドは読んでいた本を閉じた。

 フレイドを呼んだのは副官のひとりレイヤである。レイヤの顔から察するに呼んでいたのはもっと前からのようであった。


「どうした?」

「先遣隊からの報告でこの先雨が降っているため道がぬかるむので気をつけろとのことです」


「そうか。ではドロロに伝えてくれ。この先、ぬかるんだ道は後続の馬たちが進みやすいよう整備しながら進んでくれ」

 銅泥竜ドロロ、フレイドの隊の本体を率いている陸竜である。会話するフレイドたちは今ドロロの背中の上にいる。そのためフレイドが少し大きな声で話せばドロロに指示は届くはずだが、フレイドはそうはしなかった。そのことに疑問を持ちながらもレイヤは指示を受諾した。


「わ、わかりました」

 レイヤはドロロの耳に近づき指示する。ドロロは「ドー」と返事をした。

 その様子をフレイドは神妙な子で見ていたが、やがて本を開き続きを読み始めた。



 ゲルニカはゴーロの上でいびきをかいて寝ていた。



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