空に光るあの花が落ちる前に
初投稿です。
暖かい目でご覧下さい。
「ねぇ、聞こえてる?」
返事は無い。
鼓動が早くなると同時に、震える手を握る。
周りの音が五月蝿い。
でも今は、どうでもよかった。
僕の精一杯の言葉は、時折光る広い空に吸い込まれていった。
彼女は僕の視線に気付いて振り向く。
何か言いたげに僕を見つめた。
「どうしたの?」
彼女の空気を吸い込む音が聞こえ、手が動く。
「×××××」
ごめん。
なんて言ってんのかわかんないや。
彼女は満足して目線を元に戻す。
「さっきの、聞こえるわけなかったのにな。
言わずにはいられなかったよ。」
誰にも聞こえないくらいの独り言を漏らした。
7年前。
高2の夏。
僕らのゴールインへのカウントダウンが始まった。
そして今日。
大好きな家族、大好きな友達に見守られながら、愛する君のベールをめくった。
あの夏の日、空に光るあの花が開いて落ちる前に言ったあの言葉。
まだ君に届けられていない。
でも今ならこの言葉を伝えられるよ。
『これからも2人で生きていこう。』
結局、口に出すことはしなかった。
君だけに伝わればいいから。
君は目に涙を浮かべ、僕の胸に顔をうずめた。
あの日君に伝えた言葉。
「好きだよ。」
君は聴覚障害をもっていた。
僕はまだ、手話を覚え始めていなかったんだ。