社畜女は死にました?
行き当たりばったり。誤字は見逃してクレメンス。
高校を卒業してから、住んでる安アパートの階段は古臭く飾り気のない鉄製で造られており、手摺りや踏みしめる床は所々錆び付いて嫌な音を立てながらも女性が履くヒールを受け止めて、カンカンと音を立てる。
「ハァ。」
業務で疲れ切った体は重く、踏みしめる度にギジリと関節や衰えた筋力が悲鳴を上げている。 生きる為に働いてはいるが、毎日がチグハグで違和感だらけだった。呼吸をしているだけの木偶の坊が日々を眺めている。
「明日、雨なんか。嫌だなァ。」
その日の女は何でこんなにも辛いのかと分かりきったことを考えていた。それはもう分かりきっていた。
ただでさえ忙しいというのに、己の十数年も絶縁状態だった母親はこの度、不幸にも五度目の離婚をするようで。彼女は重苦しい心中と共に鉛のような息を吐き出した。
また苗字を変えなければならないらしく、またしても母親は侵略者の如く彼女の生活圏を侵してきた。
娘である彼女はドロリとした汚泥の怒りに溺れかけながらキレた。恋愛するのも結婚するのも構わないが、先に野郎を見る目を養えよ、と。
その手続きだって、彼女自身が直接に出向かなければならない。何よりも顔も名前も声も覚えていない父親の話を聞くべきか、母親の一方的な話を鵜呑みにしても良いのか。
「頭が痛いな。」
泣きもしない女はポロリと出たのは本音だった。最近では度重なる幼少のトラウマと真っ黒けっけの社畜勤めにより、彼女は精神科医にお世話になるほどに追い詰められてしまった。
苗字が変わるだけなのに、こんなにも考えなければならないのか。カシュリと軽快な音を立てて、ビールのプルタブを開けて一気に煽れば、空き缶と空き瓶が積み重なる。
「明日も仕事だし、眠いけど風呂入んなきゃな。」
花の二十代だと言うのに、女の目の下には真っ黒な隈ができてしまった。相も変わらず目つきが悪くて、人を殺めてそうな顔立ちだった。
母も初代父も顔とプロポーションだけは良いというのに。彼女に受け継がれている取り柄が高い身長と並よりは良い顔面なのに、その人相が冷たいと話題なのは良くなかった。徹夜後の笑顔など、唯一の友人二人には「一仕事終えた時に見せる殺人鬼の様相」とまで言われた。彼女は友人たちに泣いていいか?と返しておいたが。
酒浸しの女はツラツラと不平不満をアルコール漬けになった頭の脳内で羅列しながら、風呂に入る合間に化粧を落としながら、湯船に湯を張る。顔を洗って、ぼうと何もない虚空を見る。面倒くさいな、生きるのも死ぬのも。
彼女は過去の経験ゆえに他人に迷惑をかける生き方をあまりしたく無いのだ。自殺なんて多くの人間に迷惑をかけてしまうだろう。
死ぬ勇気のないだけだ。自我を失った死の先に何があるのか、つらつらと思考するも彼女には何もわからなかった。
知らない事は怖いこと。
それは小さい頃から思い知った事だ。暗闇が怖いのもそう。今の状況では彼女にとっては何もかもが怖い。彼女には変化など脅威でしかない。そんなものクソ喰らえだった。
「甘いもの食べたいな。いやでも、買いに行くのは面倒だな……。」
そうボヤいて、風呂に入った時だった。
天井に亀裂が入ったのと同時に落ちてきたのだ。
一瞬の強烈な痛みを感じる間もなく熱を感じた後、女の意識はブツリと途絶えた。思えば、彼女の人生は散々だった。
思えば生きてる間の女が歩んだ人生は親と大人に振り回されて、踏み躙られてきた人生だった。
母は女を捨てきれず、男を見る目もなく。父と呼んできた男たちは軒並み暴力的だったし、私を煩わしそうにするか、性的に見るかのどちらかだ。まぁ、血の繋がらない前の男を主張する子供なんて、あっちからすれば良い迷惑だったのだろう。好いた女はコブ付きってね。ハハ。と酔いの回り切った頭で独りごちた。
女が意外と死に間際でも思考は巡るものなんだなと考えてたら、ふんわりと優しい花の匂いがしてきた。
「ごめんなさい。」
か細い声と共に柔らかな花の香りと頭の下にふわふわとした温かな感触を感じる。薄れた意識の隙間から一気に覚醒した頭は様々な情報で全身から冷や汗を吹き出した。
彼女の脳裏には様々な考えが浮かんで消えた。そうして全身の力を抜いた。様々考えて出た結論は"死んだ後でも考えるのは億劫"だった。次に目が覚めて、そしたら考えたらいいかなと呑気にふわふわと考えた。
『アレ!?寝ちゃうんですか!?嘘ですよねっ?ま、待ってーー!』
そんな悲鳴が聞こえた気がしたが、申し訳ないと思いつつも女は二週間の残業代の出ないサビ残確定の連勤と実家のゴタゴタに巻き込まれて悩み通しで睡眠時間の確保もできず、磨耗しきっていた為に柔らかくも程よい硬さのある枕は心地良すぎた。あっという間に夢の世界へとダイブした。
『あ、貴女が大変だったのはわかりますが、今寝られては困りますー!!』
あまりにも悲痛な声で懇願されたものだから、彼女は重さが尋常ではない瞼を開けた。
二つの山がどどんと現れた。
「は?え、何事?」
驚きと動揺で既に思考は止まっていたが、目の前が真っ暗になったと同時にずっしりとした重みとなんとも言えない柔らかさが顔を覆った。女は再び意識を飛ばした。
百合も薔薇も書きてぇ、普通のカップルも書きてぇ欲張りセットなので地雷は大量に転がってるので※この回からはBLあるぞ!気をつけろ!と書きますね。
メインは百合です。女の子をいっぱい出したいのと、ただただTS書きたかっただけなので。