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07 二人だけの時間

短めの内容となっております。

パウロがセリーンの屋敷に戻った頃は夕方過ぎだった。


その頃にはセリーンの今日の仕事も大半が終わっていたようで彼女は客室でロー・ティーの準備をしていた。


「お待ちしておりましたわ、パウロ様」


セリーンはハムとキュウリのサンドイッチとミルクティーをパウロに配膳する。


「いっしょにいかがでしょうか?」


「では、お言葉に甘えさせてもらうか」


そう言うとパウロはソファーに座る。


「お水も頂いてよいか?」


「はい」


パウロはセリーンから受け取った水を一気に飲み干した。


その姿に笑顔だったセリーンの表情がより破顔する。


「何か緊張されていますね。もしかして終身法務官様からお話があったのですね?」


セリーンが水を注ぎ足す。


「あ、ああ」


再び、パウロが水を飲み干す。


「終身法務官ビョルン・トゥーリより伝達があった、セリーン嬢、三日後に審問を行うと」


「わかりました」


セリーンが軽くミルクティーを含む。


「他にもありますわね?」


「・・・いや・・・」


さすがにパウロも躊躇ってしまう。


この場で彼女に自首を薦めることに対して彼女を怒らせてしまうのかもしれない。


女性に対してこのような心情になったのはパウロはあまりなかった。


特にセリーンに特別な想いを抱いている彼にとっては彼女に嫌われてしまうのではと考えると一歩踏み出す勇気が薄れてゆく。


「終身法務官様から私に対して自首をするよう説得に来られたのでしょう?」


「・・・セリーン嬢」


パウロが思わず顔を上げる。


「わかりますもの。この一ヵ月、あなたとほぼ毎日一緒にいましたもの。あなたの人となりも知りましたから」


セリーンは頷く。


「法務官様も意地の悪いことをしますね。あなたにプレッシャーをかけさせるなんて」


「あいつはあいつなりに気遣ってくれたと思う。君に対しても同じだと思うんだ」


「わかっていますわ。あの方がパウロ様を心から信頼されていると思います」


セリーンは乾いた口の中をミルクティーで潤う。


「パウロ様」


「なんだ?」


「そろそろ、私のことはセリーンと呼んで頂きたいのですが?」


「なっ!!」


「パウロ様は本当に顔に出る方ですね」


「だが・・・」


「恥ずかしいですか?」


セリーンがパウロを見据える。


その視線にパウロは耐えきれない。


「・・・わかった。セリーンと言おう」


「はい」


セリーンは微笑む。


「審問が始まるまではちゃんと私の名前を呼んで下さいね」


「わかったよ」


パウロは音を上げる。


その様子に満足なセリーンだった。


「・・・セリーン、俺はあなたが犯人でないことを願っている。だから三日後の審問は大変かと思うが信じている」


「ありがとうございます。でも、パウロ様は本当に表情に出やすい人ですね、今度は顔色が悪すぎますよ」


セリーンが水を勧める。


「私のことを疑っているのでしょう。でも私の事も信じたい。無骨な方だと思いましたが意外と繊細なのですね」


「そう言わんでほしい。俺は・・・」


「それ以上はいけません。私は審問を受ける身です。私情は挟むようはいけません」


「セリーン・・・」


「ほら、私が作ったサンドイッチを食べて下さい。騎士はどんな時でも空腹になっては力がでませんよ」


「そうだな」


パウロはサンドイッチを食す。


セリーンの薦めたサンドイッチは程よい味付けで美味しかった。


「おいしい」


「ありがとうございます。私が侍女たちと一緒に作りましたの」


「セリーンはいつも食事を作るのか?」


「ええ。これでも腕に自信はあります」


「この味を俺は楽しむことができるのだな」


「はい」


「では、遠慮なく頂いていくよ」


パウロは用意されたサンドイッチを食べてゆく。


その姿にセリーンは微笑みながら、自らも食事を楽しむ。


その後、審問が始まる前日まで二人は一緒に食事の時間を楽しみながら身を委ねた。


まるで恋人同士のように。

ロー・ティーはアフタヌーン・ティーと同じです。

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