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03 印象と違う令嬢

パウロは北属州にいる旅団から警備の者を用意するとセリーン・コルベリ嬢を守るために屋敷に向かった。


本来なら貴族の屋敷は王都に集まるものだが、属州により中心地になる場所に屋敷を構える家も多くいる。


北属州では交易を営む者が多いため、コルベリ家やガーフィールド家のように北属州に拠点を置くために屋敷を構えている。


「お待ちしておりました、パウロ様」


パウロがコルベリ家の屋敷に到着すると主人であるセリーンが出迎える。


セリーンはこの時代の女性としては身長は高いほうであり、大柄なパウロの胸元ほどまで背の高さがあった。


また、紅い色をした髪は背中の中央まで伸びており、ひと際紅い色合いが美しく見える。



その一方で顔つきは凛々しく目は少し吊り上がっているものの決して鋭い印象を与えない。


パウロから見ればこれまで出会った女性の中では令嬢と言うより騎士団にいる女性騎士の雰囲気に近かった。


「騎士団のパウロだ。本日よりあなたを警護するためにこの屋敷を警備させてもらう」


「宜しくお願いします、パウロ様」


セリーンはパウロに礼を言う。


こうしてセリーンに連れられパウロは屋敷の中へ案内してもらう。


コルベリ家の屋敷は予想に反して地味な印象だった。


貴族ならではの装飾品は少なく、ガラス窓も荘厳で美しいフォルムもなく光が差し込む飾り窓ではない。


・・・主の性格が出ている。


何よりセリーンの来ているドレスは今の流行りのドレスよりも型落ちをしていた。


「失礼だが服には興味ないのか?」


気になるあまりパウロが尋ねる。


「なぜですか?」


セリーンが不思議そうな表情をする。


「いや・・・最近流行りの服ではないので・・・そういうのが苦手なのかと・・・」


「面白いことをおっしゃるのですね、もしかしてパウロ様はドレスなどに詳しいのですか?」


「・・・職業柄と言うか・・・俺も色々と関わることが多いんだが・・・」


騎士団にいるパウロとしては警備対象に貴族関係の令嬢を相手にすることがある。


その中にはドレスの価値を利用して騎士団に他愛もない悪戯を仕掛けてくる者もいる。


彼女たちにとっては冗談かもしれないが騎士団にとっては気を遣うことが多いため、騎士団の男性陣は女性騎士に尋ねたりしながら流行のものを認知していた。


「私はあまり流行のものに興味がないのです。どちらかと言いますと動きやすい服装が好きなのです。今日はパウロ様がいらっしゃるので正装で出迎えました」


セリーンはわざとらしくカーテシーをする。


その時、紅い髪がふわっと浮きながら静かに落ち着いてゆく。


パウロはその姿に見とれてしまう。


「いかがでしょうか?」


セリーンが微笑む。


「普段はシンプルなドレスで動いておりますわ。領地の視察ができませんもの」


「それは乗馬での移動なのか?」


「ええ。我が家では何事もその目で確かめることが幼い頃より教えられておりますので」


その話を聞き、パウロは納得する。


現在のコルベリ家の状況はパウロは聞いている。


コルベリ家の家長であったセリーンの祖父が一昨年に亡くなってから、事業はすべてセリーンが管理していた。


屋敷に勤める者たちも多くはなく質素で無駄のない生活をしていると言う。


その一方で事業に関わる人々の生活が豊かになるよう手配をしており、コルベリ家の領地の人々からは慕われている。


北属州での悪い噂に対してはコルベリ家の領地の人々は苦々しく思っており噂を消し去りたいと思っていた。


だからこそ、パウロは実際にセリーンと関わりその人となりを知りたいと考えていたのだった。


「セリーン殿は真面目なのだな」


「領地を預かる身としては当然ですわ。パウロ様も同じでは?」


「ああ。騎士団としてセリーン殿と同じように俺もこの国の人々を守りたいと思っている」


「お互い気が合いそうですね」


セリーンに屋敷に案内された後、パウロは彼女に警備用に部屋を二つ用意してもらった。


その上でセリーンの部屋の隣にパウロと旅団兵たちは警備控室で交代制で警備を始めた。


パウロは警備を始めた日、さっそく問題が発生する。


何者かが屋敷に向けて投石をしたのだ。


すぐさま警備の者が犯人を確保する。


投石したのは街に住む子供たちだった。


セリーンの噂を聞いて、子供たちは興味本位で屋敷に石を投げたのだった。


パウロは子供たちの親を呼び、今後はこのようなことがないように注意する。


子供たちも反省をしているのでこの問題はここで解決したのだが、その後にセリーンはパウロにこう呟いた。


「私はここでは嫌われ者です。婚約者が四人も亡くなっているのですから仕方ありません。覚悟はしております」


謙虚に答えるセリーンに対してパウロは同情を禁じ得なかった。


その後も悪戯と思われる投石があったが、それ以外は何も起こることはなかった。


翌日からもパウロは警備を続ける中、調査を続けていたビョルンの元にエヴァから一便目の調査報告書が届いた。


ビョルンからその連絡を受けたパウロは法務局分所へ戻った。

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