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少女漫画に異質混入  作者: 岩切 真裕
【第1章】少女漫画か? 乙女ゲームか?
8/60

無知で無害を装って

 心の願いを聞き入れ、ずっとこちらを見てくれなかった導きの女神「ディアグツォープ」様はオレにその優しいその眼差しを向けてくれたのだった。


 ……この冒頭の文章だけ見ると、何の小説やゲームの終わり方だ? と思う。


 違う。

 そうじゃない。

 今、それは最もどうでもよい話だ。


『「導き」は素直過ぎる……』

 後ろの赤イケメン(笑)が小さな呟きを漏らした。


 確かに、導きの女神「ディアグツォープ」様は素直で可愛らしい方なのだろう。

 流石、あの少女漫画の中で、登場回数ナンバーワンの神様だけある。


 だが、オレの考えを補強してくれたのは今の呟きだった。


 それを聞かなければ、あの方と目が合ったことも、単なるタイミングがあっただけの「偶然」という言葉で流せなくもなかった。


 間違いなく、こいつらはオレたちの心の声を読んでいる。


 確定、確信できた情報は大事だ。

 これが、オレの数少ない武器になる。


『それでは、それぞれのパートナーと連絡を取り合う道具を受け取ってください』


 何事もなかったかのように、最後の質問を答えた後、導きの女神「ディアグツォープ」様はそう言った。


『これを……』

 赤イケメン(笑)はオレに手鏡を渡す。


 なんだ?

 前髪でも直せってか?


 そう思いつつ、受け取って確認する。


 それは、何の変哲もない赤い柄のついた手鏡に見えるが、その鏡面が仄かに赤く光っている気がした。


 ……魔道具?

 いや、神が持っている道具だから、神具だ。


 少し、ときめく。


 かっこよくねえ? 「神具」って響き。

 神の道具だぜ、神の道具!!


『それが其方との連絡手段だ。願うだけで、我と繋がるようになっている』

 少女漫画の方に出てきた専用の「通信珠」みたいなものか。


 例の少女漫画の世界では、電気、家電が使えない。

 そのために通信手段として魔法の珠が存在するのだ。


 それは、備え付けてあったり、持ち歩きができたり、電話のような役目を持っていた。


 残念ながら、相手の顔は分からないし、調べ物をすることもできないし、メールも送れないし、便利なアシスト機能もない。


 あくまでも電話機能であり、スマホ機能ではないのだ。


 それでも、憧れていたオレの気持ちを分かって欲しい。

 なんとなく、光る珠で連絡を取り合うって、ファンタジーって感じがするのだ。


 しかも携帯できる通信珠はお守りのように小袋に入れて持ち歩いたり、ポケットに収容できる。

 まさに「ポケットにFantasy」。


「ありがとうございます、ジエルブ様」

 表面上は崩さない。


 この場にいる神たちに心を読まれているようだが、恐らく同じ人間であるあの女どもは多分、違う。

 初手から不審を抱かれるのはマイナスだろう。


 それなら、動きは合わせた方が良い。

 オレがそう思うと、赤イケメン(笑)は、皮肉気な笑いをしやがった。


 ああ、クソ!!

 確かに心を読まれると、やりにくいな。


 だが、オレはこの神たちと戦うわけではない。


 それならば、逆に隠さず、取り繕わず、誤魔化さず、偽らずにいろいろぶちまけた方が気分も楽だ。


 何より、それで神がドン引けば、最良だろう。


「大切にしますね」

 あの通信珠も何度も壊れた。


 鏡と言う割れ物注意なものも、落とすだけで割れてしまうかもしれない。

 いや、そうなれば通信手段がなくなって、縁が切れる?


 そう思うと、フッと鼻で笑われた。


 今、オレの考えを読んだ上で、馬鹿にしたな?

 見た目通り、性格悪いな、この赤イケメン(笑)。


 しっかし、通信。通信ねえ……。


 メッセンジャーアプリやメールみたいに、24時間いつでも連絡可ってわけにもいかないだろう。

 夜の通話はいろいろ迷惑だ。

 いや、深夜に届くメッセンジャーアプリの通知音も迷惑だが。


 まあ、常識の許す範囲内で連絡すれば良いか。


 あの少女漫画の舞台には、時計と似たようなものはあった。

 確か、「時刻み」? って名前の絡繰機械。


 電気はないが、それ以外の動力がないわけではない。

 何より、剣と魔法、法力の世界だ。電気に変わる動力として魔力が存在する。


 だが、あれより前の時代と思われるこの世界にその「時刻み」はあるのか?


 ある意味、神話の時代だ。

 日時計とかはあるかもしれん。


 時計がなければ、日が昇る頃に起きて、夕日の前に寝てしまう生活に……、なんか違う。

 今、何か余計な知識が交ざった。


 流石に、ランプのような夜の闇を灯す明かりぐらいはあるだろう。


 日本だって、夜の方が長い時期があるのだ。

 半日以上、寝て過ごすのは腰が痛い。


 だから、平民ならともかく、上流階級っぽい「みこ」たちにそういった贅沢品がないとは思わなかった。


 そして、そろそろ解散の流れになりそうな時、「みこ」の一人である背が高く紅い髪、茶色の瞳を持つ女……確か、「シル()クル? 」から、こんな提案があった。


「ここからは、『みこ』だけで、話をさせていただけませんか?」


 何、言ってんだ? この女。

 こんな状況で「みこ」同士の交流を深めようとか能天気なこと言う気か?


 だが、導きの女神「ディアグツォープ」様はにっこりと笑って……。

『承知しました。それでは、これにて一度、この場を終わりとしましょう』

 そう言った上で……。


「『運命の女神』の導きが、貴女方にありますように」


 と、言葉を続け、一礼をした。


 その言葉を聞いた瞬間、目を見開いた女は4人。

 黒髪と、銀髪の女以外だ。


 なるほど……。

 あの少女漫画の方を読んでいる人間だな。


 あの少女漫画には、導きの女神「ディアグツォープ」様と違って、「運命の女神」の姿は一度も出てこない。


 多分、いるのだろうけど、その名前すらでてこなかったはずだ。

 だが、何度も念を押すかのように出てくるほど重要な言葉だった。


 それを知っているからこそ、この女たちは反応したのだと思う。

 うっかり、オレも反応しちまったからな。


 見事な不意打ちです、導きの女神「ディアグツォープ」様。

 そして、それは、先ほどのオレへのちょっとした意趣返しのようにも思えた。


 そんなオレの心境を知っているのに、導きの女神「ディアグツォープ」様は笑顔のまま、退出していった。


『それでは、アルズヴェール。我も失礼する』

 そんな言葉を残して、赤イケメン(笑)も後に続く。


 他の神々も同じように次々と退出していくがその中の一人、紫イケメン(笑)だけが、オレに目線を向けた。


 なんだ……、今の。

 紫……、闇の神か?


 あの少女漫画の設定では、闇の魔法は事情があって、あまりはっきりと分かりやすくは出てこない。


 闇を属性とする魔法は、人間の感情に作用する魔法とかで……、本来は無属性と想われていたらしい。


 ……というのも、地図上に闇の神が加護する大陸というものが存在しないのだから。


 だから、闇の神についてもあまり触れていない。

 名前が「エスクリダン」ということぐらいか?


 だが、この世界では違う可能性もある。

 あの目線に何の意味があったか分からないが、まずは注意が必要だな。


 さて、紅い髪の女からの発言によって、この場には7人の「みこ」たちだけが残されたわけだが……、何故か、その提案者は何も言わず、黙っていた。


 だが、まるで、探るような視線。


 浮気を疑う女の瞳のようで、居心地が悪い。

 猜疑心と警戒心バリバリの()(ぢから)を感じていた。


 多分、この女もいろいろと疑っている段階なのだろう。


 この場にいるオレたちが何者か……というよりも、自分にとって、信用に値するかどうか?

 敵か味方か。


 その辺りを見極めたいのだろう。多分。


 それ自体に不満はない。

 その感覚、反応は人間として当然の感覚だから。


 どんなに知識があったとして、いきなり、放り込まれた異世界に、即、順応できる人間ばかりではないのだ。


 だが、このままでは話が進まない。


 この紅い髪の女がいろいろと疑っているのは分かった。

 オレたちを信用できないことも。


 だから、あえて切り込もう。


「えっと……、何故、ワタシたちは残されたのでしょうか?」


 ()()()()()()()()()()()

ここまでお読みいただきありがとうございました

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別視点
乙女ゲームに異物混入
別作品
運命の女神は勇者に味方する』も
よろしくお願いいたします。

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