おかえりサバイバル また、ゼロから始まる異世界遭難 2
ブルースカイの加入と、成長は。
予定外の移動をしなければ、ならないとき、非常に役立つ。
コレ以上ない、自己アピールポイントに気づき。
沙羅内の株価を上げようと思ったが。
「ブルースカイちゃん、余計なことしない方が良いよ」
どんよりと、くすんだ空気の中心である、沙羅を見て。
ジュライ子は、やんわりと止めた。
ブルースカイの有用性に。
皆の絶望感を吹き飛ばせるほど、キャラが立っていれば。
救世主にだっただろう。
あと、この世界の言葉を話せれば。
皆を抱えて飛べれば、最高だったのだが。
元、出オチキャラに、これ以上を求めるのは酷だろう。
期待するだけ無駄だと。
考える間もなく諦めるのが吉である。
少なからず、沙羅は、そう考えた。
周りの地理を空から見させ。
スグに、川の近くで野宿をしようとするあたり。
沙羅達も、サバイバルに、なじんできたのだろう。
有無も言わず、無言で歩き。
一時間ほどで、川の近くに、たどり着き。
ただ、ただ。
野宿に必要なことを黙って行う、沙羅とリーライフ・ネリナル達。
この数日で、サバイバルに適応した彼女達の動きに迷いはない。
本日最大の受難が、心身ともに響いてしまい。
最近のセリフが「お腹へった」。
しか、なくなってきたスレイを、満足させるため。
もう、見慣れて、食べ慣れて、飽き始めた、紫じゃがを焼き始める。
網の上に並んだ、紫ジャガを見て。
全てを理解したスレイは。
網の上で焼かれる芋の前で、体育座りをし。
無表情で、見つめている。
わがままを言っても無駄だと、悟ったのである。
子供のわがまま。
言えば叶うと言う幻想は、親がいるから成り立ち。
親が、何も与えてくれないなら。
自分で、どうこうできないなら。
だまって、受け入れるしかない。
スレイが不憫で、しょうがないブルースカイは、川の中をのぞき。
頭を切り下ろした魚を、二匹とってきて。
薪の上に置かれた、網の上に置いて見せた。
「スゴい! ごちそうだ!」
満面の笑みを浮かべ、網の上を、のぞき込む少女の姿。
皆の良心に、鋭く突き刺さり。
あの魚には、手をつけてはならないと、すり込む。
「まだかな!」
魚を網の上に置いて、そんなに時間が、たっていないのに。
ブルースカイに、度々、聞いている仕草に。
「心が潰れる」
岩沢に作らせた、石の椅子の上に。
ちょこんと、座らせたスレイは、希望だった。
「スレイちゃんを頼みました、沙羅様」
心が痛いのは、沙羅だけではなかった。
ダメ子も珍しく、簡易な寝床を、せっせと作っている。
ジュライ子は、クッション代わりの柔らかい葉を作り。
ダメ子の作業に続き、葉っぱを敷き詰めていく。
そして、強い風が吹き。
スレイの髪が、なびく姿を彩るように。
ジュライ子製の葉っぱが、宙に舞った。
作業をしている皆の手が止まった後に残った。
ぐちゃぐちゃになった、寝床。
「マズい… 目頭が熱くなってきた…」
「そんな、さ…」
ダメ子は、一滴流れた沙羅の涙に、言葉を失い。
自分の手に、涙を拭くハンカチ一つないことに、奥歯を噛みしめる。
もう、コレなら、横穴のほうがマシだったと言うのは、禁句だ。
言ったら、沙羅が崩れ去るだろう。
集団崩壊の危機は、意外なところにあったようだ。
それでも、なんとか各自の仕事を終え。
葉が風に飛ばされないように、その上に座り込み、焼けた芋を食べ。
魚は、スレイに全て渡す。
スレイが、あまりに嬉しそうに受け取るモノだから。
毒味を、することを忘れ。
見えない危機は。
専用の椅子から、沙羅の膝の上に座り込み。
おいしそうに魚を食べ、笑うことで過ぎていく。
「沙羅様、これからどうします?」
核心だった。
今までは、村にたどり着けば、生活が楽になると思い。
紆余曲折あったが、なんとか頑張り、たどりついた。
だが、一番の希望は、まだまだ、遠い所にあると、思い知らされ。
また、こうして、野宿をしている。
この議題を片付けずに、眠ることなんてデキないと。
スレイ・岩沢以外の目が、沙羅に集まる。
言語問題が、突きつけられたのだ。
スグに、なんとかなりは、しないだろう。
なら、まずは、落ち着ける場所を、確保すべきだ。
また横穴に戻るには、半日以上の時間と労力が必要だ。
生活環境が、ある程度、保証されるのは大きいが。
いちいち往復するには、遠すぎる。
「まずは、近くに、もっと野営をしやすい場所を探そう」
「たとえば?」
「食料が取れやすい環境が良いだろうから、そうだな…。
街から遠くなくて、海が近くて、川が近い。
雨風が、しのげるだけの場所が候補だな」
かなりハードルの高い設定条件だった。
今でこそ、横穴は、住みやすい環境になったが。
最大の弱点は、立地の悪さだ。
前に森、後ろに岩盤しかないのだから。
「そんな都合の良い場所、ありますかねぇ?」
「それは、ブルースカイに探してもらうしか、ないだろう?」
解決策、それは、久々の丸投げ他力本願だった。
「ありますよ?」
間髪入れず、言葉を返すブルーススカイ。
「…え?」
めんどくさい、やりとりないんだ。
いちいち口に出さない、沙羅は大人である。
「ココは、そもそも、海岸線の近くだし。
後は、川のそばで、危なくないところで良いんでしょ?
なら、ココからそう遠くないよ。歩いてみないと、わからんけど」
「ココから、ドレぐらいだ?」
「昼間なら、三時間かからないと思うよ?」
「沙羅様、スゴいですね。話が凄く、スムーズに進んでますよ!」
「空を飛べるヤツって、本当に有能だな」
「それは、飛べないヤツは、無能だってことですか?」
そう言う、飛べない、なんちゃらは、ただの残念な子である。
「…めんどくせぇなぁ、オマエ。
明日は移動して、そこに仮拠点を作ろう。
言語問題を考えるのは、その後ってことで」
ジュライ子も、ブルースカイも、深く頷き。
「もうひとり、妹を増やすしか、なさそうですもんねぇ…」
ダメ子は、最速の解決方法を、沙羅に示した。
「ソレにしたって、行きあたり、バッタリじゃなくてだな」
自覚が、あったようである。
「ちゃんと、考えきゃいけないだろう?」
命をポンポン作っておいて、言える言葉ではない。
「今のスグってワケには、いかないから」
正しくは「また、ネタキャラを作るわけには、いかないから」である。
「まずは、野営拠点を作るんだ」
また、いろいろな意味で、文明が恋しくなる前に。
「また、ゼロから始まる異世界遭難ですか…」
「人数いるから、最初より、だいぶマシだっての」
マシなのであって、大丈夫なわけではない。
「沙羅先生、拠点って言っても、どうするんです?」
「今回は、野営地じゃなくて、活動拠点を作る。」
野営拠点と言っておきながら、活動拠点と、言い直す。
意味するところは、ほぼ変わらない。
ついに、日本語が散らかり始めた。
「長期滞在が、決まっているように聞こえるのですが?」
「そうなるかも、しれないな」
そうなる可能性が高いのは、事実である。
言語問題を解決し、文明生活に参加するまで。
活動拠点で暮らさなければ、いけないのだから。
「嫌なんですけど?」
「俺だって嫌だっての! しかたないだろ、話が通じないんだから」
「すごく、嫌なんですけど?」
「今回は、最初より楽に拠点が作れるハズだから。
そんなに、嫌がらず働け」
「そうなんですか?」
「まぁ、今、なんとなく考えただけでも。
なんとか、デキる気がしてるから、大丈夫だろ」
みんなの目線が泳ぎ。
ダメ子が、沙羅の言葉を、すくい上げる。
「デキる気が、するぅ?」
「また、その話をするのか? オマエは。もう、今日は寝ろ」
「本日の、言葉が通じないインパクトが、かなりのモノでして。
テンションが、おかしくなってて、眠気が来ません」
「良いから寝ろ。明日は、かなり、キツい一日になるからな」
「うん? 楽に、拠点を作れるんじゃないんですか?」
「寝ろ! 何なら岩沢に、後頭部を殴ってもらうか?」
「結構です」
沙羅は、スレイと、川に手を洗いに向かい。
そのまま、スレイを、抱きかかえるように眠る。
サラリと置いて行かれたダメ子は。
スグに、寝息を立て始めた、二人を見て。
そのまま、黙って寝ようとした、頭上でジュライ子が笑っていた。
「姉さん? そうは、させませんよ?」
「な、なんのことかなぁ~?」
「沙羅は、スレイちゃんの面倒が、あるから良いけど。
姉さんは、寝かせられない」
「もっと早く、寝てしまばよかった…」
もうすでに、寝ている岩沢抜きで。
火の番じゃんけんが。
ブルースカイを含めた、三人で行われた。




