炭水化物・芋 7
「大事なところは、隠れてるけど。子供に、ミルクあげられるの?」
「ブ、ブルースカイちゃんにも、聞いてくださいよ」
苦しい話題の振り替えは、見事に失敗し。
「さっき、確認済みよ。
私より、キレイな肌してて、ちょっと、うらやましいわ。
髪の毛が、水色だけあって__」
「ちょっっおおと!」
「なによ、沙羅様、起きちゃうじゃない」
「その先は、沙羅先生がいるので、口にするの、やめませんか!?」
男というストッパーをなくした、女子トークは。
ジュライ子という防壁によって、保たれるようだ。
ダメ子は、沙羅を見て、うなずき。
「じゃあ、サラシとると、大きくて。
ピンク色がキレイな形で、水色の体毛薄いから、生えてないようだったわ」
「言ってますからね! ソレ、全部、言ってますからね!」
ブルースカイは、顔を赤くし。
そのまま背中を、ダメ子に向け、狸寝入りを始めた。
「あっ、ブルースカイちゃんズルい!
姉さんを、一緒に止めようよ!」
「ウチ、お嫁にイケない」
嫁ぎ先は、どこだろう。
「そういう、恥じらいとか、お嫁に行くとかいう概念は、私達共通で、あるのよねぇ~。
不思議と。で、さ」
「言いませんよ?」
「じゃあ、子供産めるの?」
「産めますよ!」
「子供に、ミルクあげられるの?」
「あげられますよ! 岩沢ちゃんだって、同じですもん!」
「どうやって?」
「見せませんよ?」
「じゃあ、へるもんじゃないし、触って確かめるけど?」
「なんで、そうなるんですか!?
今日は、どうしたんですか?
変なスイッチ、入りすぎですよ!」
「そんな大声出して、沙羅様が起きたら、どうするの~」
「じゃあ、どうしたら、諦めてくれるんですか?」
「聞いたら、諦めるわ」
「……」
ダメ子の意志は固かった。
「…自分の意志で、こういったところの葉っぱを、なくせます」
「ああ、やっぱりそうなんだ。お風呂のときは、なくしてたのね」
「…わざわざ、言った意味が、ないじゃないですか」
「だって、岩沢ちゃんと、ジュライ子ちゃんは、特殊で、真っ裸じゃない?
でも、大事なところは、隠れてて、水浴びとかのとき、見えるから、
どうなってるのかと思って」
「これで、納得してくださいね。
こういう話は、お風呂とか、水浴びのときに、しましょうよ」
「無駄に毛が生えてない、キレイな体だったわ。私のほうが、上だけど」
ジュライ子は、察した。
ダメ子は、スタイル良さで、マウントポジションを、取りたいだけだ、と。
ジュライ子から見た、ダメ子の体は、お世辞抜きで、キレイなモノだった。
皆で、裸になって汚れを落とすのは、今日が初めてだ。
そこで、ダメ子は、自分の新たな価値を、みいだしたのだろう。
抜けるような白い肌。
引き締まった体は、形の良い女性のラインを、しっかりと強調し。
出るとこは、シッカリと出ている。
日本美人に思えるが、体のラインは、西洋に、よっているだろう。
ダメ子という名前と、普段の言動で。
全て台無しにしてしまっている、が。
一人の女性としては、かなり高スペック、モンスターである。
ならば、この話を、終わらせる方法は、簡単だ。
「姉さんの、下着も、カワイイですもんね」
全力で、ヨイショしきるのだ。
ダメ子だけは、ちゃんとした下着を、身に着けている。
ブラとパンツと言う、女性下着と言われて、誰もが想像するソレだ。
無地の白という点さえ見なければ。
下着姿は、誰よりも、映えるものだろう。
そう思っても。
余計なことは、一切、口にしてはならない。
もう既に、ジュライ子と岩沢は。
下着姿で、歩き回っているようなものだ。
なんていう言葉も、ジュライ子は飲み込んだ。
「そうでしょ~」
満足そうな顔をしてみせるダメ子に、ジュライ子は、成功を確信するが。
ジュライ子は、知っている。
安心した所に、とんでもないことを、言い出すのが、ダメ子だと。
「ジュライ子ちゃん、そう考えるとさぁ~」
ソレ見たことかと。
笑顔を貼り付け、覚悟を決めるしかない。
大体、想像をしない方向に、話が転がっていくのだから。
いちいち驚いていると、話に流され。
いらないことまで、口にしてしまう。
「スレイちゃんが、パンツを履いていないのは、沙羅様の趣味ってこと?」
「……」
本当にそうなら。
岩沢・ジュライ子が、布を、身に、まとっていないのも。
ブルースカイのミニスカ和装も。
幼女のノーパンも、沙羅の趣味ということになる。
ソレだけは、絶対にありえない。
ジュライ子は、それだけは確信を持って言える。
本当にそうなら、もっと、待遇は良くなっているハズなのだから。
ココまで、ゾンザイに扱われている要因の大部分は、ジュライ子を含めた全員。
法の力で生まれてきた命。
一人目が、ダメ子だったというのが、一番、大きいかもしれない。
誰が生まれても、沙羅が、ドコか、諦めらめている様子なのは。
そんなもんだ、という概念を、植え付けた人物の責任だろう。
それでも「そんなもんだ」という思いを、変えられない。
彼女たちにも、責任がないとは、言い切れない、が。
「スレイちゃん、気持ち良さそうに寝てるけど。
大事なモノが色々、私からでも見えてるのは、
沙羅様が、狙ってやってるってことで、イイ?」
沙羅は、法の力で、彼女たちを、生み出しているが。
衣服は、どのようにして、決まっているのだろう。
素材と、名前と、願いで、動き出す沙羅の力は。
どのようにして、全体のイメージを、構築しているのだろうか?
ダメ子達が、生まれた姿を見て、驚いているのだから。
すべてを、沙羅自身が考えているとは、思えない。
だが、白竜のとき、自由度を許したと言っていたのだ。
何かしら、うっすらとでも、姿の全体像を決めている、何かが、あるハズである。
一度も沙羅が、そのことを、口にしていないのなら、本当に、余計なことなのだろう。
ロクでもない話題なのは、間違いない。
だが、これだけは言える。
全体像の一部でも。
ぼんやりとした、何かが、沙羅の中にあると、考えて良い。
それでも、細部を、何一つ考えていないからこそ。
今の、ダメ子たちが、あるのなら。
沙羅の、ふんわりとしたイメージを、壊さないように。
法の力が、彼女たちを、形作ったなら。
沙羅のイメージに、一番、ふさわしい衣服を身に着け、生まれてきているのなら。
狙っているというのも、あながち、間違いでは、ないだろう。
「……」
ジュライ子は、無自覚に踏みそうだった地雷の存在を発見した。
「スレイちゃんが、パンツを履いていないって、気づいてない、沙羅様もスゴいわよね。
そういう事態に、なってないから、なんでしょうけど。小さいし。」
だが、こうして実害があるなら、早く、なんとかすべきである。
沙羅のイメージそのモノが、無意識のようなモノだとすれば。
しかたないと割り切り。
沙羅の力で生まれた、彼女達の間で、なんとか、すべきなのだろう。
ジュライ子は、ここまできて。
ダメ子の思惑を、やっと理解した。
「パンツ、作りましょう」
という話が、したいがために。
ココまで話を遠回りするのが、ダメ子だった。
こんなことを、言いたいためだけ、に。
危険な領域の話までされては、ついていく方も大変だと。
ダメ子は、気づいているのだろうか。
「色々と、問題よねぇ~」
「問題です。健康的にも、衛生的にも」
「ジュライ子ちゃん、簡単なモノでも良いから、作れる?」
「葉っぱとツルで、何とかしてみます。ないよりは、マシでしょう」
「そ。じゃあ、任せたわ」
そのまま体を倒し、寝に入るダメ子に、ジュライ子は、ため息を吐き出し。
スレイのパンツづくりを、ゆっくりと、始めたジュライ子は、ダメ子の寝息で気づく。
「火の番、また、私一人でやるの…?」
まんまと押し付けられたと思った頃には、スデに遅い。
岩沢が、いつまでも、帰ってこないところを見ると。
余計なモノを作って、遊ぶのに夢中なのだろう。
ダメ子の二段、三段構えのサボり活動に、ジュライ子の思考は停止し。
無自覚に、そういう事をするから、改名の機会を失うのだと、心底、思いながら。
スレイのパンツ作り、という使命感が、火の番を交代して、寝ることを、ためらわせる。
「……」
よくデキたロジックに、再度、ジュライ子は、ため息を吐き出し。
寝る皆を見渡し。
口元に笑みを浮かべ、作業に没頭するのだった。




