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腹減った2


 ここが、言葉通り「異世界」という、全く知らない場所なら。


 沙羅は、この世界の子供でも知っているハズの

 危険生物すら、知らず自然の中にいる、と言うことだ。


 足を踏み入れるのは、簡単だが、予想できないケガや病。


 それこそ、どんな生物がいても、不思議ではない。


 森にいる、虫や動物、草木が。

 生活の絶対常識を作り上げるのだから。



 このなかで、知識も経験もない人間は、無力だ。



 卓越したサバイバル知識を持ってしても。

 リスクを、冒し続けなければ、ならないだろう。

 予想以上の想定外は、必ず起こるという、この環境では。



 足をケガしてしまっただけで、下山できなくなる、山登りと同様に。


 バックパックすらない今、何かあれば、対応しようがない。


 出会いこそ、していないが、ファンタジー世界、定番のモンスター。

 なんて生き物がいた場合、目も当てられない。


 沙羅には、樹海の入り口が、火山の噴火口に見えた。


 かといって、腹を膨らませるためには。

 樹海の中に、入る以外の手段がない。


 いよいよ、食べ物がなく。

 生きるために、森から都市部に姿を現す、熊やイノシシのように。


 何もしなくても、死んでしまう。

 何かすると、死んでしまうかもしれないが、生きられる可能性がある。


 このラインに立たない限り、どんな生き物も、望んで危険は犯さない。


 何も食べず水だけで、しのげる時間なんて、タカが知れている。


 いよいよとなれば、ゲームのキャラのように、コロリと死亡するだけだ。


 手詰まりの現状を打破する方法は、もう一つだけだった。


「よし、もう一体、お助けキャラを召喚しよう」

 他力本願だった。


「いったい、なにを助けてもらうんですか?」

樹海に入りたくないダメ子も、話に乗っかっていく。


「森を進むのに、必要な力を持つヤツか?」

「えっと、それは、難しいんじゃ、ないですか?」


「なんで?」

「……。もう、良いです。私と岩沢が、答えだと思いますよ?」


「お前が、ダメなのは、知ってるけど?」

「いちいち、私をバカにしないと、気が済まないんですか?」


「いや、今、使えない子、お前だけだし。

 何かと使えないし。食料を、お前の分も、用意しなくちゃいけないし」


「そんなの、こういう状況でさえ、なければ、私は輝けるんですよ!」


「もっと、きらめけ?」

「もっと、輝きます!」


 二人の間にできた、少しの沈黙の後ろで。

 いつの間にか、起きていた岩沢は。

 つまらなそうに、近くの壁をほじっては、石を、口の中に放り込んでいた。


「…で、私が言いたいのは、素材と沙羅様の願いの結果が、

 全部、そのまま、私達のスキルに関わる、っていうことです」


「オマエ。よく、この会話の流れで、ソコに持っていったな?」


「私も、お腹がへってるんですよ!

 痩せたら、自慢のボディラインも、台無しです」


「今、美観的なモノを守ろうとする、オマエが、たくましく思えた」



 沙羅の横やりを無視して、ダメ子は、話をドンドン進める。


 話を、外堀から、埋めていこうとするあたり。

 沙羅の性格を、つかんできたのだろう。


「私は、沙羅様が、上空から落下して「死にたくないから、助けてくれ」っていう、願いから生まれました」

 これが、どんな作文用紙でも、二行あれば語れる、ダメ子の誕生秘話である。


「初耳だ!」

「だから私は、とりあえず、ココまで、沙羅様を運んで来たわけです」


「……え? この状況、お前のせい?」

「……え? なんで、私、責められてるの?」


「なんで、村とかに連れて行かないんだよ!

 なんで、スタートが、よくわからない自然の、ど真ん中なんだよ!」


「あれぇ? おかしいなぁ~。

 私は、沙羅様を助けるために、頑張っただけなのに」


「頑張り方が、間違ってるんだよ、お前は!」


「だって、海面近くで、私を生み出されたんでしょうけど、意識がハッキリしたの、森の中ですもん」

 事実である。


「よく分からないまま、危険じゃないところ探して、運ぶのが、やっとだったんです。

 しょうがないじゃ、ないですか!」

 その通りである。


「私が、いなかったら、沙羅様は、死んでるんですよ!

 死ぬより、マシじゃないですか!?」

 ダメ子には珍しく、これ以上ない正論である。


「うん。まだ、望んで死にたくない」

「まっすぐ森を突き抜けて。横穴がある、ココに、ついたところで、体力なくなって。

 倒れちゃったんだから、しょうがないじゃ、ないですか!」


 命を救われたことには、素直に感謝する沙羅も。

 これだけ「仕方ない・しょうがない」を連呼されると、ありがたみが、薄れていく。


「じゃあ、お前も、俺の近くで、倒れてたってこと?」

「そうですよ!

 それ以外に、なにかをする余裕なんて、なかったんですから!」


「それは……」


 ようやく見えてきたモノは、実に、単純明快な答えだ。


 この世界でのスタートは、大自然の中などではなく、上空に放り出された、あの瞬間であり。


 ロープなしバンジージャンプも、夢などでは、なかった。


 そして、この世界に送り込んだ、張本人は。

 本気で、殺す気だった。

 と、言うことである。



 運良く、よく分からない力を使って。

 当時、スマ子(仮)を生み出していなければ。

 海面に叩きつけられ、死んでいたのだ。


 まな板で、シメられる魚のように、一瞬で力を失い。

 そのまま、いろんなモノに、食べられる運命だったのである。


 だが、ダメ子が誕生し、沙羅は命をとりとめ、横穴に、たどり着いた。


 そして、よく分からない力を試すため、岩沢を生み出し、今に至るのだ。


 意識を失っていても、寝ていても。

 時間は経過していて、何かが、起こっているのである。



 ダメ子が、突発的事故のような、生まれ方をしたから。

 その後の説明が、フワッとするのも、仕方ないと言えば、仕方ないのかもしれない。


 ダメ子をふまえて、岩沢誕生を考えるなら。

 沙羅の願い道理、最悪を回避するために、生まれたのだろう。


 状況を改善するために、と、言う、願いの内訳を考えてみれば。


 水を、どうにか、しなければならない、と、言う思いが、一番、強かったのだ。


 一番、強い思いが、岩沢に強く表れたなら。


 火や光など、中途半端で。

 そのままでは、役に立たない力になったのは。

 沙羅が、水問題より、火や光を。

 水ほど重要だとは、思っていなかったから、だろう。


 横穴を、バリアフリーにした力。

 バカみたいな腕力は、自然への怖さが、先立った結果なのだとしたら。

 見事に、願い通りである。


 自在に岩を変形させる力は、アイディア次第で、使い方は無限大だ。

 実際に、横穴を整備し、みず道を作り出すことに成功している。


 バカみたいな腕力、身体能力は、いるであろう外敵に対する力としてだ。


 再度、よく考えてみれば。


 岩沢・ダメ子の二人は、実に、良くやっているのだろう。


 所持品、全てを素材にして、生まれたというダメ子。


 一番、金額的に、高いモノから生まれているダメ子。


 金額にすると、軽く数十万円。


 キャッシュカードが、金額を、つり上げている。


 個人情報すら肉体に宿し。

 素材として、消えていなかったら、使い道があったであろう。

 物品の数々から生まれた、ダメ子。


 上空から落下するという状況でさえ、あれば。


 ダメ子のスキルは、コレ以上なく、役立つ。


 予算をかけたかいが、あったのか。

 彼女には、機械翼があるのだから。



 死にたくないから、助けて欲しい。


 一番、強かった思いは、当然「落下して死にたくない」であり。


 こんな目に遭わせたヤツを。

 いつか殴ってやるという思いが、その、後ろ側にあった。



 岩沢同様、ダメ子も、沙羅の願いを、見事に叶えているのだ。


 その証拠に、ペンソードは。

 殺傷力が高い剣ではなく、すごく強力な、電子警棒という形なのだから。

 剣なんかより、強力な武器だ。


 相手に触れるだけで。

 高圧電流を、たたき込むことが、デキるのだから。


 殺傷力に特化せず、攻撃力そのものに、全てが向いている。


 その他、無駄なオプションは。

 願いから、遠く外れているから。

 使えるのか、使えないのか。

 よく分からない、無駄機能に、なってしまっているのだろう。


 石ころから生まれた岩沢は、横穴の石や岩を食べて、水源を引き当てた。


 沙羅の願いの強さによって、手に入れた能力として、水源を見つけ出したわけではない。


 だから、水が欲しいという、沙羅の強い願いは、叶えらたのではなく、偶然だ。


 だから、間違いではないのか。



 まっとうに思える否定文が、沙羅の頭に浮かぶが。



 そもそも、である。


 やみくもに地面を掘って、水源を見つけることが、デキるハズがない。


 それが、飲んでも問題ないほど、キレイな湧き水であり。


 手が洗えるほどの水量が、流れ続けているとなると、なおさらだ。


 これは、偶然、引き当てたと考えているのが、間違っているのだろう。


 水源を見つけることが、できる力があった、と、考えるべきである。


 なんとなく、どうにか、なってしまっている。

 これは、ヒドい、勘違いなのだろう。


 今が、あるのは。

 各自が、各自の仕事を、しているからだ。


「なぁ、岩沢?」

「なぁ~にぃ~」

 本人達に、そんな意識があったかは、全く別だとして。


「水、でてるよなぁ?」

「えへぇ~。ほめてくれるのぉ~」

 と、頭を突き出す仕草は。

 幼稚園に入りたての子供が、親に褒められたくてやる、仕草と全く同じだ。


「この水、枯れたりしないのか?」

「そんなことないよぉ~。ちゃんと、みずがいっぱい、ながれてるところに、あな、あけたもん」

コレで、確定だろう。


「…岩沢。この下に、どれだけ水が流れているか、わかるか?」

「いっぱい、だよぉ~」


「よし、岩沢」

「なにぃ~」


「イイ子だ!」

 良い子すぎである。


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