めんどくさいけどまた新たな力を得てみる
「あいかわらず、ギリギリの時にしか出てこねえなお前」
「必要な時にスピーディに出てくると言って欲しいのレス」
相変らず顔が(・v・)のままだなこいつ。不気味だ。
「それではさっそく選択を……」
「その前に、ミルンとメグのステータス一覧を見せてくれないか」
「あ、そうレスね、忘れてたレス。まずはミルンのステータス」
レベル : 5
筋力 : 20
耐久 : 15
魔力 : 10
知性 : 10
カリスマ: 15
やる気 : 15
固有スキル:癒し
追加スキル:武道レベル5 農業レベル5 料理レベル5
「おお、やっぱすげえ!」
「ミルンは優秀レスね。女子力も高いしいい嫁になるレスよ。おすすめレス」
「いや、嫁って……」
「特に女性でこの筋力は驚異的なのレス。女でこれほどの武道家はそうはいないレスね」
ミルンが優しい性格でよかった……。
いや、強いから優しくなれるのかもな。マリーは必死だからいつもてんぱってるのだろう。
「質問なんだが……レベルって、敵を倒せば上がるのか?」
「そうレスよ」
となると……マリーのステータスは確かに低かったが、レベルも1だった。
敵さえ仕留めれば、伸びしろはあるんじゃないだろうか。
……って、俺はなぜマリーサイドに立って考えているのだ。まあ、ダメな子ほどかわいいってやつか!
「お次はメグなのレス」
レベル : 1
筋力 : 5
耐久 : 5
魔力 : 20
知性 : 10
カリスマ: 20
やる気 : 10
固有スキル:破滅
追加スキル:治癒魔法レベル1
「おい破滅ってなんだよ!?」
「わからないのレス。初めて見たレスから」
「んな無責任な……」
何なんだろうか……。ただ、メグの本性が何であろうと、俺はメグを見捨てることはない。幼女を愛でるのが真の紳士というものだからな。
「それにしても……新戦力が強力なので、マリーのダメさ加減がいっそう際立つレスね」
「ひでー言いぐさだな、さすが悪魔」
とは言え俺もそう思う。マリーをいかにカバーするかがマリーンドルフ旅団の最大の課題だな。
「だいぶ話が寄り道したレスね……では、この3つの魔法を選択して、習得するのレス」
① 雷撃魔法レベル100
② 水流魔法レベル100
③ 動物会話魔法レベル100
「また動物会話魔法あるし!どれだけ推してんだよ!つーかゴーレムって動物?」
「そして、この3つの代償を選択するレスよ」
① 笑いが止まらなくなる(1時間)
② 泣くのが止まらなくなる(1時間)
③ くしゃみが止まらなくなる(1時間)
「ふざけんな!この悪魔!」
「今回は楽レスよね。永続効果じゃないレスし」
「この選択肢ってお前が決めてんだよな?」
「もちろんレスよ。特に代償を考えるのがこの仕事の唯一最大の楽しみなのレス」
「ほんと、悪魔だな……」
うーん……。決めた。これでいいや。
「決まったレスか?」
「ああ」
「では、選択をするのレス」
「ゲインツー、チャージスリー!」
「それでいいのレスね」
「まあな。習得は②しかない。代償は③にして試したいことがある」
「色々と考えているみたいレスね。では契約成立なのレス、そして時は動き出す……」
また時間が動き出した。
「へっくしょん!」
早速くしゃみが出た……。
動き出したゴーレムが俺に殴り掛かる!
あらよっと。
余裕でかわした。素早さではガルーダに及ばないな。
あとはどう倒すかだ。
今回新たに習得した水魔法。
これの使い方次第で勝負は決まる。
精神集中!
「へっ、へっくしょん!」
いかん!しかしくしゃみが出ても、集中集中……。
ゴーレムがまた殴りかかって来る。
水魔法レベル100、一点集中モード!
俺は水流を極限まで細くして最大の水圧をかけ、それをゴーレムに照射する。
シュパーーン!
……ズーン。
ゴーレムの腕が切断されて地に落ちた。
「な、何が起きたの!?綺麗に削げてるわ!」
マリーが驚愕する。
工作機械のウォータージェットの原理だな。
水も使い方次第でレーザービームのようになる。
後は作業だ。
シュパッ、シュパッ。
ズドン、ズドン。
俺はゴーレムを文字通り八つ裂きにした。
ゴーレムはバラバラになっても必死にもがいていたが、次第に動かなくなった。
「やったわねサトシ!炎以外の魔法もやるじゃない!私は炎の方が好きだけど……」
マリーがかけつけて来るが……。
「へっ、へっくしょん!へっくしょん」
俺のくしゃみが止まらん……。
せっかくの快勝も、締まらないな……。
「サトシ様、風邪でも引いたのですか?」
「サトシ、どうしたの」
ミルンとメグも駆け寄ってきた。ミルンの怪我はメグが治したようだな、良かった。
「へっくしょん、へくしょん、メ、メグ、治癒魔法をかけてくれないか?」
「わかったの……キュアード!」
シュワワーン。
「…………おお!くしゃみが止まった!」
「サトシ、よかったの」
やはりそうか。
代償のうち、病気に類するものは治癒魔法で治せるんじゃないかと仮定していたが、実際そうだったようだ。
これは今後、代償を選ぶ上で判断材料になるな。
「急に風邪を引くとか、サトシも意外とひ弱なところあるわねー、さ、毛皮をはいで帰りましょ」
「あたしに任せてください!」
マリーが呆れたような口調で言いつつ、ミルンとジャッカルの処理に取り掛かる。
「サトシ」
メグが俺の袖を引っ張る。
「ん?なんだメグ」
「サトシ、悪魔に取り憑かれているの?」
なん……だと……。
「……なぜ、そう思ったんだメグ……」
「キュアードをかけた時、サトシから一瞬、悪魔の気配がしたの」
「悪魔の気配、ってのが分かるのか……」
「ニヒトレイス教典の一節に『汝、悪魔と契約することなかれ。悪魔は汝に三つの願いを選ばせ、その対価に三つの苦難を選ばせて与えん。その取引は等価交換に見えて、決してさにあらず』と書かれているの。サトシは、大丈夫なの?」
ニヒトレイス教……ただの菜食主義の宗教かと思ったが、侮れないな……。
「悪魔なんかいるわけないじゃない!サトシは大丈夫よ」
マリーが割り込む。
「でも、魔人がいるのだから、悪魔が居てもおかしくないのではないでしょうか……」
ミルンがおずおずと、だが的確なツッコミを入れる。
「私は魔人は見たことがあるけど、悪魔は見たこと無いわ!見たことが無い物なんか、私、信じないから!」
「はあ……」
ふーむ。なんとも自己中な言いぐさだが、でもマリーのその考え方、俺は嫌いじゃないな。
悪魔の件はそれできりあげて、俺らは毛皮をゲットしてウルムの街に帰った。