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同棲の薗(その)

作者: ハルカ カズラ


 考えることがある。いつも同じ人の顔をいつも同じ場所、空間で見続けることの意味を。私は望んで彼といる。それは間違いない。けれど、だからといって何かが劇的に変わるわけじゃない。それを望むかと言われれば、即答は出来ないし素直に頷くことは出来ないと思う。

 好きだから一緒にいるんでしょ。なんて友達には言われる。それは正解であり、不正解でもある。私の空間は私だけのもの。彼は彼だけの空間があって、何て言えばいいのか分からないことだけれど、そこには確かなそのが存在している。


「エミ、そこのモバイルバッテリー……」

「ほい、どうぞ」

「さんく」

「いえいえ、手を伸ばしたらあったから」

「まぁね」


 などと、こんな他愛のない会話に愛だとか恋だとか、そんないちいち意識しながら会話なんてしていないわけで。それでも、そうだとしても、私は何かにすがりつきたい。そんな風に思うようになった。飢えている? ううん、そうじゃない。きっと私は思い出が欲しいだけなんだ。同棲生活2年弱。どうしてこんなにも胸のときめきやら何やらがいつの間にか生活の中に溶けて消えて、何にも感じられなくなったのだろう。私はただ、欲しいだけなんだ。


「ねえ、楽しい?」

「あん? スマホゲーム? それとも仕事か?」

「じゃなくて、一緒にいることが楽しい?」

「お前は?」

「それ、そういう返しは好きじゃない。トオルは私と一緒にいて楽しいの?」

「んーてか、同棲は楽しいからするんじゃないだろ。好きだし、一緒にいたいからだろ? 楽しいかって言われてもな。どうした? そんな急に」


 急じゃない。最初からそう思ってる。楽しくなかったら駄目だよ。考えすぎかって言われればそうかもだけど、でも、でもね、これだけは言っておきたい。私の言葉にどう反応するかで、未来は決まるも同然。


「あのね。家にいても、未来の思い出は出来ないんだよ。外に出て出かけて、そこででも思い出作りたいよ。だから、日常を同棲というカタチに閉じ込めないで欲しいの」

「……そのうちな」


 この先、同棲しているこの彼と思い出、それこそ未来に繋がる思い出は作っていけるのだろうか。答えは彼の浮かない表情と声のトーンで答えは出ているのかもしれない。

お読みいただきありがとうございます。


今回は何とも言えない恋の問いかけでした。

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