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動乱群像録 83

「さよならだな!」 

 振り向きざまのレールガンの一撃で三式のコックピットが吹き飛ぶ。それに驚いて飛び出した隊長機。

「小娘相手になにやってんだか」 

 自然と要の頬に笑みが浮かんだ。さすがにすぐに冷静さを取り戻した敵は再び森に隠れる。

「でかい図体で森の中……逃げるのか?逃げれるのかよ」 

 笑みが浮かぶ。自分の残酷さに気づいて少しばかり嫌になる要。三歳で生身の体を失って大人の義体をあてがわれて生きてきた彼女。胡州貴族の頂点に立つ四大公家の筆頭、西園寺家の一人娘と言う立場から人の目を気にして生きてきた自分。そんな自分を本来の自分にしてくれたのが軍の訓練だったのは意外なことだった。

 父も、恐ろしい母も彼女の軍の予科学校への進学には反対だった。だが、彼女は反対されればされるほど軍に志願したいと言う気持ちは高まった。屋敷に出入りしている醍醐文隆などの軍の幹部にねだってなんとかあこがれていた叔父嵯峨惟基の入った予科学校に入学して日に日に訓練と言う名の暴力になじんでいくうちに悟ったこと。自分がどれほど攻撃的な人間なのか。それを悟った今、要は目の前のベテランパイロットが旧式の機体の性能に悪態をつきながら自分から逃げ惑っていることを想像して笑いをこらえていた。

「さあて。どこまで逃げれるかな?小娘相手だと油断していたんだ。簡単に殺すようなことはしないからさあ……出てきて遊ぼうじゃねえの」 

 熱センサーはそのまま公園の森の木をなぎ倒しながら進んでいる標的を示している。今撃てば相手を蜂の巣にできると確信しているが要はまだ敵の止めを刺すつもりは無かった。上空に決起部隊の信号を出しているヘリが現れる。

「ずいぶんと用意がいいことで」 

 そう言うと要は機体をジャンプさせた。そのままヘリの操縦席を五式の空いた左手を使って握りつぶす。

 友軍のあっさりと無様に死ぬ様を見てようやく三式のパイロットの頭に血が上った。レールガンの掃射が行なわれようとしているが、その照準はすでに要の首筋に刺さったコードを通じて彼女の意識の中に取り込まれていた。

 ひたすら引き金を引きながら弾が出ないことに焦っているだろう敵パイロットを想像して大笑いする要。

「相手が悪かったな……」 

 そう言うと要はレールガンを放つ。森の中に立つ三式の頭部が吹き飛ぶ。そして右腕、左足、右足、左足。一発ずつ正確に命中する弾丸。すでに脱出装置のシステムにはウィルスが仕込んであり、死に行くのを待つだけのパイロット。

『卑怯者が!』 

 傍受した通信に最後に叫んだベテランパイロットの叫びに悦に入りながら要は三発の弾丸を腹部のコックピットに命中させて決着をつけた。


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