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動乱群像録 80

 そんなやり取りの中、戦艦『播磨』に待機しているパイロットや技術兵達がハンガーに集まる。誰もが覚悟を決めたような表情を浮かべる中で明石達の妙に慣れた感じの言動は奇異に見られているようで、敬礼をしながらも不審そうな表情が明石の目に付いた。

「なんや……みな葬式みたいやで」 

 声をかけてみるが緊張した雰囲気は変わらない。そっと視線を落としてみれば楓も少し緊張したような表情で明石を見上げている。

「明石隊長は気にならないんですか?」 

 楓の言葉が震えていた。明石はそこでようやく自分が緊張していないことに気が付いた。

「今回は生還できるかもしれんやろ?死にに行く訳や無い。勝ちに行くんじゃ」 

 そう言って楓の長い黒髪をなでる。いつもなら猛然と講義してくるはずの楓の表情がまだ硬かった。明石は周りを見回し、安全第一と書かれた壁面の隣につるされた白い額を指差した。白い額にはあまり上手とは言えない筆文字で『至誠』とだけ書かれていた。

「ええか、ワシ等軍人はあそこにあるように誠に至る道を探すだけや。他の事は政治家さんにおまかせ。ワシ等のできることはただ誠で敵に当たること。それだけ考えておいたらええねん」 

 明石のその言葉に楓も赤松直筆の額に目をやる。その様子を別所達はニヤニヤしながら眺めていた。

「こうしてみると親子じゃねえか」 

 そんな魚住の軽口も軽く笑って無視する二人。別所はそれを微笑みながら見ながら集まり始めた兵卒達をまとめようとハンガーの中央に向かう。

「全員整列!これから赤松司令からの訓示がある!」 

 別所の張り上げた言葉にあちこちで固まっていた兵士達がそれぞれの部隊ごとに並び始めた。明石や魚住、黒田達もその部下達の顔を見つけては呼び寄せる。次第に兵士の群れは列となり、先頭に明石、魚住、黒田らのアサルト・モジュール部隊の隊長や整備班長、技術部長などの士官が部下達をまとめて並ばせる。

「それではしばし待て!」 

 別所のその言葉にハンガーは沈黙した。そしてそれを図っていたように彼の背中に大きく広がったモニターには赤松の姿が浮かび上がった。


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