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動乱群像録 178

「大公!」 

「俺、一応皇帝なんだけど……」 

 醍醐の言葉に苦笑いを浮かべるとそのまま嵯峨は椅子に腰掛けた。赤松が覗き見た親友の顔。そこには悪魔でもにらみつけるような厳しい表情が浮かんでいた。

「忠さん。そこの椅子に座ってくれ、醍醐さんも頭を下げるのはいいから」 

 赤松も醍醐もただ下座で立ち尽くしている佐賀高家をちらりと見た後テーブルに付く。まるで当然なことのように佐賀を無視している嵯峨に佐賀の弟である醍醐文隆は我慢できずに立ち上がった。

「兄のことでしたら私の責任です」 

 嵯峨が手にしている短刀をすばやく見つけて醍醐が叫んだ。だが表情一つ変えずに嵯峨は醍醐に目をやった。

「佐賀のことか?そんなものは処分は決まってるよ」 

 そう言ってニヤリと笑うと立ち上がる。おどおどと主君を見つめる佐賀。その姿に満足したように短刀を佐賀の足元に投げた。

「裏切り、寝返り。俺の顔に泥を塗ったんだ。それなりの責任の取り方は分かるだろ?」 

 嵯峨のにんまりと笑う様に佐賀はその言葉が冗談か何かのように感じられているような硬い笑みを浮かべていた。

「忠さん、兼光」 

 仕方が無いというように赤松は手にしていた太刀を嵯峨に渡した。静かに鞘を抜いてじっくりとその刃を吟味するように見つめる。

「大公!早まらないでください!」 

「早まる?遅すぎたの間違いじゃないのか?決起の時点で俺の顔の利く連中を使って謀殺ってのも味があってよかったんだがね」 

 テーブルから飛び出して嵯峨が投げた短刀を手に取ると醍醐は地べたに頭を擦り付けてわびる。そんな弟の姿がよく理解できないというように佐賀はただ立ち尽くしている。

「弟にこれだけさせて……さあ、腹なり首なりそいつで切ってくれ。俺が止めを刺してやる」 

 相変わらず放心状態の佐賀を哀れな生き物を見つめるような目で嵯峨は眺めていた。


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