動乱群像録 170
「あなたは反逆者なんですよ……今となっては」
洋子の言葉にまるで言葉の意味が理解できないと言う表情をする清原。
「あなたは……」
「君から見ればそうだろうが私がただの反逆者なら誰も付いてこなかったと思わないかね?越州の城君が私の手助けをしてくれた。それだけを見ても私が単なる叛乱分子じゃないことは証明されていると思うんだが……」
そう言って清原は不敵に笑った。
「そうしてあなたは敵を作ったんですね?」
「否定はしないな。私は常に理想を追っている。その理想を理解できない……」
「私は理解したくありません!」
饒舌に話し出した清原の言葉を洋子は両手を振り上げて止めて見せた。
「そう、こういう話にいつもなるんだ。なら武力を用いて国を変えるしかないだろ?」
まるで懲りずにつぶやく清原をにらみつける洋子の目が殺気を帯びる。
「君と私は絶対に相容れない。ならば殺しあうしかないんだ」
「それは悲しくないですか?」
淡々と語る清原の言葉に洋子は涙を浮かべながら返す。
「悲しい?目の前に理想があるかもしれないんだ。人間は進歩するもの。常に上を目指す」
「なら貴族以外の人間の上昇志向をへし折るような体制を何で支持するんですか?」
「私はこの国の文化と伝統を重んじるだけだ。それが成り上がりの下世話な人間の跋扈する世の中からこの国を救う唯一つのやり方だからね」
まるで言葉が通じない。そんな清原に洋子は最後の言葉を口にするしかなかった。