動乱群像録 157
「『榛名』、『妙高』中破!さらに……」
「わざわざ言わなくても見れば分かる!」
いつの間にか清原は立ち上がっていた。互角の戦いに展開できる、そう考えた矢先に先導艦があらぬ方向から攻撃を仕掛けられた。
「赤松さんは予想がついていたようですね……」
眼鏡の参謀の言葉に首をひねる清原。
「おかしい、そんな……射撃地点は特定できないのか?」
「駄目です!データが少なすぎます!」
オペレータの言葉に歯を噛み締めながら清原は席に着くしかなかった。
「こちらも本腰を据えてかかるべきかと……」
長身の参謀の言葉に頷く清原、だが次の瞬間清原は気がついたように背後に立つ秘書官に声をかけた。
「佐賀君の泉州艦隊があるだろ!連絡をつけろ!できれば直接通信で……」
「足元を見られますよ」
「かまわん!負ければすべてが終わるんだ!」
秘書官を怒鳴りつける清原の姿には冷静さは微塵も無かった。秘書官は慌てて会議室を飛び出す。
「彼の言うことももっともだ。戦後に影響を与えます……」
長身の参謀がそこまで言ったところで言葉を飲み込んだ。悪意に満ちた清原の視線。それこそ自分が戦後に立場を失うだろうと思って口をつぐむ。
「どうしたんだ……赤松はしばらくは撃ってこない。そう言ったのは誰かね……」
周りを見回す清原。彼の目には誰も彼もが自分を裏切ろうとしているように見えた。
「保科公の恩を忘れて暴走する輩がいれば私は決して容赦はしないからな。君達がここにいるからと言ってそれが免罪符になるとは……」
その時船が大きく揺れて叫んでいた清原の体は大きく背もたれに叩きつけられた。