動乱群像録 152
「なんだ、赤松は押されてるじゃないか」
会議室で参謀達に囲まれながら佐賀はつぶやいた。周りでも今からでも清原派に加担する為に泉州艦隊を迂回する為に大回りをしている越州などの艦隊に道を明けるべきだと主張したい士官達がざわめいていた。
「しかし今行ってどうします?」
そう言ったのは小見だった。本家嵯峨家の被官であり、猛将嵯峨惟基の教えを受けた実力者の言葉にあたりは静まり返った。
「今なら間に合うんじゃないかな。それに圧倒的に清原君の部隊の方が優勢じゃないか」
長身で痩せ型。どう見ても実戦の経験の無い佐官の言葉にきっと見据える小見。その殺気だった目ににらまれて哀れな指揮官は黙り込むしかなかった。
「優勢なのは確かです。そいて我が艦隊が参戦すれば万が一にも赤松さんには勝ち目は無い」
「認めるんだな?我々が参加すれば勝負がつくことを」
佐賀の言葉に小見は大きく頷いた。
「だが一つ忘れてはならないことをお忘れのようなので」
「何が言いたい」
あっさりと自分の言うことを認める小見に佐賀は怪訝そうな視線を投げる。
「勝ち馬に乗る。それが自力なら問題は無いでしょう。ですが私を含めて殿上家の被官を勝手に動かしたことは事実ですよね」
そんな小見の言葉に佐賀の顔は引きつった。
本来は泉州コロニーの管理を殿上嵯峨家から命じられているだけの佐賀が自分の手持ちの陸軍師団と一緒に今回は出撃させていた。そのことは明らかに越権行為であり、嵯峨惟基から見れば暴挙と言うことになるのは目に見えていた。
「泉州は勝ちの決まった清原候を支持して勝ち馬に乗った。しかもその戦いは本家の意図とはかけ離れている。世間に対して恥ということを知っている人間のすることではない。そう言われて戦いが終わって捨てられた武人がどれほどいることか……」
小見の独り言のようなつぶやきに会議室のモニターを見つめている幹部達は肝を冷やしていた。