動乱群像録 146
「距離をとれ!」
明石が叫ぶのと同時に目の前でレールガンの弾丸が真空で炸裂する。
『チャ……フ……』
部下との通信が途絶える。強烈な指向性ECMが一瞬明石の操る三式のモニターの乱れを誘う。
「格闘戦に持ち込む気か?」
次の瞬間には今度はミサイルが前面の空間で炸裂。レーダーがすぐに機能停止をする。明石はそれでも突入をやめなかった。
『今回は死ぬ気は無い……やけど死んでいった仲間の面子もあるからのう』
自分の額に汗が浮かんでいるのが実感できる。そのまま明石の機体は一気にばら撒かれたチャフの雲を抜けた。
すぐさま飛び込んできたのが赤いムカデのエンブレムと檜扇のレーザード・フラッグ。そしてサーベルが明石の機体の目前を掠めた。
「やられた!」
明石が叫んだのも無理は無かった。五機のムカデのエンブレムの三式に明石は取り囲まれていた。
「偽者か……でも位置が悪いな」
完全に包囲しているだけに火器が使えない敵に明石はレールガンでまず正面の三式に照準を合わせる。
『隊長!』
「来んでええ!罠や」
チャフの雲を避けて左翼に動いた部下の機体が一刀両断された。
「安東はん!」
部下の死を目の当たりにしてついレールガンの照準が外れて安東貴下のムカデの三式を大きく外れてレールガンの弾丸が通り過ぎるのが見えた。