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動乱群像録 135

 泉州艦隊の指揮官達を迎えた佐賀の表情は優れなかった。旗艦軽戦艦『摂津』の会議室。憂鬱な沈黙が続く。

「文隆が間に合わないと言うことだが……」 

 佐賀高家の言葉に誰もが冷や汗をかいていた。嵯峨家三老の醍醐文隆と池幸重。二人の猛将がぶつかり合った結果、醍醐は勝利を手にしたもののすでに南極基地の艦船がどう考えてもアステロイドベルトでの第三艦隊の援護には間に合わないことは明白だった。

「数では確かに清原候に分があります」 

「分がある?ならば俺が遅れて参加したことは……」 

 その時点で佐賀の価値は指揮官や参謀の間で落ちているのは間違いなかった。しかし、佐賀はそれには気づかなかった。遼南皇帝として四大公の責務を果たすことのできない嵯峨惟基を追い落とす。そんな野心を持つ男の器がこれほど小さいと言うことですでに誰もが佐賀高家が何を言い出してもおかしくない状況だと思いを固めていた。

「遅れて参加した以上、清原准将が我々を厚遇するとは思えませんね」 

「そうですね。恐らく池さんの待遇が上がることでしょう」 

「嵯峨の家裁は池さんで決まりでしょうね」 

 諦めたようにつぶやく参謀達。佐賀はそれが自分への非難の言葉であることを忘れて彼等をにらみつけた。誰もが優柔不断な指揮官に愛想を付かそうとしている時、下手で手を上げる男がいた。

「よろしいでしょうか?」 

 小見大佐。嵯峨の部下として遼南戦線から付き従っていたので嵯峨の監察と言われていて待遇の良くない男だが、それゆえに珍しく意見を言いたがっている彼に佐賀は最後の望みを託した。

「言いたまえ」 

 佐賀の言葉には疲労と諦めがこもっていた。そんな佐賀に配慮するように静かに小見は立ち上がって周りの諦めきった参謀達を見回した。


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