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動乱群像録 121

「君達にも聞いてもらいたい!我々は強い!」 

 烏丸の言葉にそれまでささやきあっていた司令達の視線は彼に集中した。

「確かに第三艦隊司令の赤松君は実績を上げたことになっている。だがそれは数隻の護衛艦隊の指揮官としての話だ。大艦隊を指揮しての戦いでは逆に難しい惑星降下作戦を指揮してきた我々に分があるのを忘れてもらっては困る」 

 そこまで言うと目を合わせていた指揮官達の顔に余裕の笑みが浮かんできた。

「アステロイドベルトに寄って目くらましに走ると言うのもその自信の無さの表れだ。もし彼が絶対に負けないと言う信念を持っているなら正面からかかってくるはずだ」 

 そこまで来て数人の指揮官がまばらな拍手をした。それに酔うように烏丸の言葉は続く。

「そして何より我々の保有するアサルト・モジュールの数が違う。二式を中心に390機。そして支援攻撃機も赤松君の部隊の二倍は超える」 

 数字を出されるとさすがに自信がなさそうな表情を浮かべていた指揮官達もお互いに励ましあうように歓喜の呟きをもらし始めた。

「つまり我々は勝てる戦いにでるんだ。たとえ佐賀君の部隊が動かなくても十分勝算はある。がたがた騒いだところで赤松君には勝ち目が無いんだ」 

 そう言ってから一口水を口に含むと烏丸は椅子に腰掛けた。まばらだった拍手が大きくなっていく。その有様に上座の清原まで熱心に拍手を始めた。そして感動の涙を流しながら立ち上がると全員の視線を浴びながら満足げに頷く。

「諸君!我々は勝利に向けて進んでいる」

 そこで再び拍手が巻き起こった。だが一人秋田だけは拍手をすることは無く冷徹な目で熱狂する同僚達を眺めていた。そのまま静かにコップに口をつけ、それぞれの指揮官達の表情の変化を観察し続けていた。

『佐賀さんが来ないとなればうなだれて、烏丸さんがその存在を無視して数を上げれば喜んで尻尾を振るか……』 

 秋田の表情を歓喜の渦に飲み込まれた同僚達は見向きもしなかった。

「これは決まったな」 

 ふとつぶやいて周りを見回したが清原が始めた演説に夢中の同僚達は秋田の言葉に耳を貸してはいないようだった。


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