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動乱群像録 107

「まだ応答は無いのか?」 

 そう叫んだ醍醐に参謀達はただ頷くほかは無かった。

 醍醐の激に賛同する母星防衛任務の陸軍部隊は次々と集まっていた。すでに過半数の部隊は醍醐の近衛師団に同調する姿勢を見せ、帝都奪還作戦と同時に宇宙に上がるための南極基地制圧へと動き出していた。そんな醍醐が同じ嵯峨家の三家老として南極基地司令の池幸重少将と連絡を取ろうとしても完全に音信を途絶した防衛部隊は沈黙を守っていた。

「なんと言っても基地の施設を人質に取られているようなものですから……」 

 参謀の一人がそう言って頭を掻く。醍醐もそれは十分想定していた事態だった。清原和人という男が西園寺と大河内の恩顧の部隊の数が自分達の軍を数では勝っていることを計算に入れずに戦争を始めるほどおろかだとは思っていなかった。

 先手を打って帝都周辺の基地を制圧。そして部隊を宇宙に上げたあとに基地を破壊。残った大規模軍港はすでに味方の勢力下。その状況で宇宙の戦いに勝って再び胡州に降下して数に勝る敵を圧倒する。そんなシナリオは定番過ぎるがそれゆえに有効だと醍醐も認めざるを得なかった。

「出方を見たいところだが……どうしたものかね」 

 そんな醍醐の言葉に天幕の下の参謀達は黙り込んでいた。薄い大気を圧縮するテントの中。蒸しあげようとでも言うような暖房の熱気で誰もが汗をかく。そんな状況下で誰もが黙り込んだままで醍醐を見つめている。

「失礼します!」 

 連絡将校が扉を開いて駆け込んできた。

 その様子はまるでおぼれている人間に藁束を投げたような状態だった。全身の視線を浴びて手に書状を持った連絡将校は思わず引いていた。

「なんだ?会議中だぞ」 

 参謀の一人がそう言ったのを手で制して醍醐は連絡将校に目を向ける。

「書状か。池からか?」 

「はい、そうですが……」 

「こちらに持ってきてくれ」 

 醍醐の言葉にもただためらいながら連絡将校は上座の醍醐の所まで書状を運んできた。


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