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見えない自分 1

 薬師寺さんのスタジオに通ってボイストレーニングを受けるようになってから、

 俺は自主トレでランニングとストレッチを出来るだけ毎日する事にした。

 無理なく声を出すには、体の柔軟性が必要だそうだ。

 唄う機会が増えることや、長時間唄うことも考えて体力もつける必要がある。

 喉にいいことや悪いことも考えるようになった。

 乾燥に気をつけたり喉の保温も大切だとわかったし、酒やタバコはやらないほうがいい。

 札幌にいた頃、その場のノリで酒を呑んだりタバコを吸っていたことがあった。

 環境が変わって、別に欲しいと思うこともないし実際年齢的にはアウトだ。

 冬場は加湿器を使ったほうがいいだろう。買わなきゃだな、とか考えながら会社の廊下を歩いていた。

 今日はまたミーティングで俺はジャージを着て約5キロ走ってここまで来た。

 結構日差しがあって蒸し暑くて軽く汗をかいた。札幌だともう少し先だけど東京はもう桜もとっくに散っている。

 後ろからコツコツと靴音が響くと人の気配がして、急に肩に手をかけられて一瞬体が硬くなる。

「秋本君」と後ろから来た内藤さんに名前を呼ばれた。出た、黒い虎。

「こんにちは。お疲れ様です」触る前に先に声をかけてくれないかな、と思いながらさりげなく返す。

「走って来たの。薬師寺さんが頑張れる子だって褒めてたよ」

「ありがとうございます。天気いいから走ってきましたけど、結構外暑いですね」

 俺たちは今、他のプロのバンドとの対バンをしたり曲作りを進めていて6月にはレコーディングに入る。

 雑誌の取材やラジオ出演、そして「8月にあるフェスにエントリーするよ」と内藤さんが言って

「うおー」っとみんな一斉に反応した。

 フェスではこれからレコーディングする新曲を演奏することが前提で、フェス直後に新譜CDを発売し都内数カ所のレコード店でミニライブをして対バンも入れる。

「そこから単独ライブが可能かってことだね」と内藤さん。そう、本当の勝負はそこだ。

 世の中は今景気が上がっているそうで、派手な格好の女性やビシッとしたブランド物のスーツで決めてる男性も多い。街中では雑誌で見るようなスーパーカーも目にした。

 ライブイベントも高級な感じのディスコでダンス系のが盛り上がってるみたいだ。

 ロックは盛り上がっていけるのか。いや俺たちが盛り上げていく。

 ミーティングの後ケンとユッケは自転車で、俺はセイと歩いて会社近くのスタジオに向かった。

「フェスに出るとなったらライブ向けに洸とギターの絡みも考えたいな」

「俺も思ってた。いきなりフェスとかすごいよな。ここで何かやりたいね」

「やってやろうよ。あの、ちょっと話変わるけどさ洸」

「なに」

「最近は、内藤さんに絡まれてない」とセイが心配してくれた。

 セイは最初から「あの内藤さんて人、実は洸のこと狙ってんじゃないの」と言っていた。

 現にExciterでの絡み方はちょっと厄介で、俺はメンバーに要注意警報を出した。

「呑んだ状態で一緒になることないから、大丈夫」

「ならいいけど。内藤さんて偉いけど34なんだって」セイは言った。

「そうなんだ」34歳の女性っていうのは、これまで俺のすぐ近くにはいなかった。

 オカマの人と同じくらいかそれ以上に予備知識がない。

 仕事の話はともかく、そのほかの場面で何をどう考えてるかも。

 まあ実際、俺に興味なんかあるのかってことも。

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