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復讐完遂者の人生二周目異世界譚【Web版】  作者: 御鷹穂積
【第三部《上》・英雄定義篇】英雄連合、集いて和衷協同を誓う
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90◇英雄連合、始動ス

 



 会議室にはルキウスとパルフェを除いた十六名が勢揃いしていた。

 長机を四つ“口”型に並べてある。

 幸助ら三人にエルフィを加えた四人で一つ。

 その正面に情報国家ラルークヨルドの三人と技術国家メレクトの二人。

 右斜めに宗教国家ゲドゥンドラの四人。彼らは皆一様に白の修道服めいた衣服を着用している。

 左斜めに商業国家ファルドの二人と魔術国家エルソドシャラルの一人だ。

 全十六人。

 ゲドゥンドラとエルソドシャラルの英雄とはこれが初対面だ。

 端に座っているエルフィを見て、クウィンがその隣に座った。

 彼女とは険悪と言わないまでも良好な関係とも言えない間柄だった筈だが、すぐに理由を察する。

 幸助を見て、その隣の席をぽすぽすと叩いた。

 エルフィではなく自分の隣に座れ、ということだろう。

 トワが反発するかとも思ったが、緊張からか何も言わなかった。

 クウィンの隣に腰を下ろし、その隣にトワが着席する。

 壮観、というのは違うだろうか。

 ダルトラ所属。

 『黒の英雄』クロス・クロノス=ナノランスロット。

 『白の英雄』クウィンティ・セレスティス=クリアベディヴィア。

 『紅の英雄』トワイライツ・クロイシス=シンセンテンスドアーサー。

 『神癒の英雄』エリフィナーフェ・フォルヴァンテッド=ローゼングライス

 ラルークヨルド所属。

 『魔弾の英雄』ストックフォルム=スパシーサ。

 『編纂の英雄』プラタナスカイ=ルージュリア。

 『識別の英雄』チドリソウラ=テンプシィ。

 メレクト所属。

 『神速の英雄』フィオレンツァーリ=ランナーズ。

 『干戈の英雄』キース=フルブラッド。

 ゲドゥンドラ所属。

 『剣戟の修道騎士』アリエル。

 『天恵の修道騎士』イヴ。

 『祓魔の修道騎士』サラ。

 『神罰の修道騎士』アルヴァート。

 ファルド所属。

 『統御の英雄』オーレリア。

 『血盟の英雄』シオン。

 エルソドシャラル所属。

 『導き手(ロード)』マギウス。

 ここに居ない二人を含めれば、

 『蒼の英雄』ルキウセウス・ルキウスリファイカ=グラムリュネート。

 『斫断の英雄』パルフェンディ・フィラティカプラティカ=メラガウェイン。

 計十八名。

 英雄規格のステータス持ちを、全ての国が英雄と呼ぶわけではないようだ。

 こうして改めて確認すると、ダルトラ名は長いことが分かる。

 幸助が着席してからしばらくしても会議が始まらなかったのは理由がある。

 『神速の英雄』こと天然少女フィオが花束から一本ずつ花を抜き「はいどーぞ」とか言いながら渡して回っているからだ。

 受け取りを拒否する者もいるが、その度にフィオは悲しそうな顔をした。

 だからというわけではないだろうが、幸助を含めたダルトラの英雄は全員花を一本受け取る。

 トワが受け取るのを見た瞬間、『魔弾の英雄』眼鏡男子ストックが小さくガッツポーズをとっているのが少し面白かった。

「フィオ、済んだなら悪いけど席についてくれるか」

「うん。でもフィオ、クロたすの隣がいいなぁ~」

 クウィンが凍てつく眼差しで「……だめ」と拒否している。

「……一応国ごとに固まってもらってるから、ごめんな」

 謝ってはみたものの、フィオはしゅんと項垂れてしまう。

「そっかー……フィオは残念なのです」

 彼女は巨乳を揺らしながらとぼとぼと自分の席へ戻っていく。

 それを確認してから、幸助は立ち上がった。

「今日初めて顔を合わせる者もいるから、改めて名乗ろう。クロス・クロノス=ナノランスロットだ。致命的な失態を犯した我が国を、それでもアークスバオナ打倒という大願が為に盟主と認めてくださったこと、深く感謝申し上げる」

 まずは挨拶からが基本だと思ったのだが、その時間すらも惜しいと思ったのか挙手する者がいた。

「……マギウス殿。いかがされた」

 老人と表現するべき年齢の男性だ。

 顔も手も枯れ木のようにしわがれているが、背筋は伸びている。

 数百年に渡り世界に根を張る大樹を思わせる生命力が漲っているように感じられた。

 高級そうなローブに身を包んでいる。

 魔法使いが持っていそうな帽子と杖も、しっかりと持っていた。

「本日の論に加えて頂きたい儀がありまする」

 ずっしりと重量感のある声が室内に染み渡った。

 幸助は少し考えてから席につき、先を促す。

「知っての通り、現在エルソドシャラルはアークスバオナめの魔手に侵されつつあり、既に国土の五割強は失われもうした」

「その件は把握している。ダルトラ正規軍による派兵を行っている筈だが……」

 マギウスはゆっくりと頷く。

「然り。貴国からの援軍により、エルソドシャラルはいまだ陥落せずにいると言っても過言ではなく、それに関しては幾度感謝しても足らぬと考えております。……だが、正直に申し上げれば――足りぬのだ」

 戦力が、ということだろう。

 自分の国のことなのだから自分でなんとかしろ、と突き放すのは簡単だ。

 いつだって、見捨てるのは一瞬で出来る。

 反して助けるのには、労力が掛かる。

 人間は損得や善悪を秤に掛けて行動を起こす。

 同盟を結んでいる以上、エルソドシャラルは仲間だ。

 だが、国と国との同盟は仲良しごっこではない。

 友達とは違うのだ。

 困っていると言われたからといって、全力で助けるよと返すことは出来ない。

 ダルトラの活動資金は臣民の血税で賄われているのだから。

 今軍部が行っている支援活動が限界一杯なのだ。

 それでもと、マギウスは頼もうとしている。

 頭を下げ、声を震わせながら、懇願する。

「英雄を派遣して頂くわけには、いかないだろうか……」




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◇書籍版特設サイト◇
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◇ライドコミックスより1~4巻◇
◇コミックライド作品ページ◇
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たとえ夜を明かすのに幾億の剣戟が必要だとしても
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